ひめさまはおうちにかえりたい

あかね

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おうちにかえりたい編

閑話 女神の物語

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 小さい生き物はすぐに壊れてしまう。
 指先で撫でるようにしなくてはね。小さな小さな声で、言ってあげる。

「たすけてあげる。いいのよ。楽しむから」

 返答なんて必要ないのよ。感謝しかないでしょう?

 小さな生き物が一人を囲んでなにをするのかしら。
 首を落とすの?
 生ぬるい?
 だから、傷だらけにしたの?

 そっと撫でれば傷は綺麗になるわ。元に戻したのだからなにもおかしくないでしょう?
 時は、我々の管轄なのだし。

「私の愛し子に無礼を働いたのは誰?」

 今、決めたから問題ないでしょう?
 慌てるように散らばるのが面白いわ。強き者であったはずでしょうに。
 残されたこの生き物よりは。

 人の世の形と流儀にあわせて、宣言して上げるわ。
 わたしってとっても優しいの。

「いらないなら、もらっていくわ。知らなかったなんて、言い訳しても無駄よ」

 国中の者に聞こえたでしょう。
 小さい生き物をすくい上げる。壊さないようにしないとね。本当にわたしは優しいわ。
 闇よりも横暴でもないし、光よりも無関心ではない。

 どうして、わたしがいつも怒られなきゃいけないの?

 みんな、すぐにいなくなっちゃうじゃない。すぐにやり直せばいいじゃない。

「勝手に自滅するわ。ありもしない加護を失ったと信じ込んでね。どうかしら、たのしい?」

 世界を滅ぼしたいほどの願いを秘めていた小さい生き物に話しかける。楽しいわよね。
 望んだのだもの。

「まだ、足りないわよね。では、とびっきりの夢をみせてあげる」

 もっともっと、世界は楽しくなっても良いと思うのよ。

「貴方の望みを叶えるものを恋に堕としなさい」

 魔なるものの王なんて素敵じゃない?
 世界をまっさらに戻してくれるわ。そうしたら、またやり直せばいいでしょう?

「わたしは、あんなの従うなんてまっぴらごめんなの」

 だから、頑張ってね。
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