妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田

文字の大きさ
3 / 43

第3話

しおりを挟む
「初めまして、ヴェルファイア家の皆様。俺・・いえ私は主の命で参りましたルークと申します。」

相手の殿方の代理としてやってきたのはルークと名乗る何処か軽薄そうな雰囲気の若い執事だった。

応接室で両親と一緒にルークさんと向かい合う。

「最初に聞いておきたいのだが君の主はどこの家のご子息なのかな?事前にもらった手紙には『アレン』という名前だけしか書かれていなかったのだが?」

最初に口火を切ったのはお父様だった。

「アレン様の身分は平民なので名前のみで間違いございません。」

「ま、まさか、どこの生まれとも分からない下民に娘を嫁にやれということなの!?」

お母さまが驚きの声をあげる。

「下民とは心外ですね。身分こそ低いですがアレン様は飛ぶ鳥落とす勢いのの豪商。そこいらの貴族よりもよほど条件の良い相手かと思われますが?」

「ええい!失礼な奴め!帰れ!お前の主なんぞに娘はやれん!」

いきり立ったお父様が立ち上がってルークさんを怒鳴りつける。

今にも殴りかかりそうな勢いだった。

しかしルークさんは動じず冷ややかな視線を向けるだけだった。

「もちろん帰れというなら帰りますが、その前にこちらの書類はご覧になった方がよいかと・・・」

そう言うとルークさんは一枚の書類を差し出す。

「そちらのエミリーお嬢様がアレン様と婚姻することになった場合に行われる当方からヴェルファイア家への経済的支援の一覧です」

そこに書かれていたのは大貴族でも中々に目にできないであろう金額だった。

「シエルの病気の治療費に・・領地の開拓支援・・・それに当家の借金の全額肩代わりだと・・・!?」

「フローラ商会ってきいたことあります?指輪とか首飾りみたいな宝飾品を売ってるんですけど」

フローラ商会・・・聞いたことのある名前だった。

上質な宝石を、見事なセンスで加工した装飾品を作ると評判の会社。

私自身は品物を見たことはないけど、ファッションが生きがいの友人たちが口をそろえて絶賛していたのを覚えている。

「アレンさまはフローラ商会の社長です。フローラ商会は販路拡大のために自らに箔をつけたいと思っていましてね。それで金に困っていて、それなりに由緒のある貴族とつながりを持ちたいっていうのがアレンさまの意向です」

「家柄を金で買おうというのかね・・・?」

「フローラ商会はヴェルファイアの家名を手に入れ、ヴェルファイア家は経済的な問題が全て解決する。悪くない取引でしょう?」

ルークさんの言葉に両親は黙り込んでしまった。

確かにヴェルファイア家の懐事情は厳しい。『アレン』という方はそれを見越して縁談を持ち掛けてきたらしい。

「確かに金銭的には魅力的だが・・・我が家の血筋だけが目当ての男にエミリーを嫁がせるわけにはいかない。帰ってくれ」

「そうですか、構いませんよ。他にも経済的に困窮している貴族はありますからね。一応、1週間以内なら受け付けますので心変わりされた場合は遠慮なくご連絡ください」

お父様が絞り出すように言うと、ルークさんはあっさりと引き下がり去っていった。



これで、この話はお終い・・・そう思ったのは間違いだった。




運命は私たちをあざ笑う。

その晩のこと、シエルの容体が急激に悪化してしまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。 公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。 周囲にそう期待されて育って来た。 だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。 そんなある日、 殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。 決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう── 婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。 しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、 リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に…… ※先日、完結した、 『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』 に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。

『めでたしめでたし』の、その後で

ゆきな
恋愛
シャロン・ブーケ伯爵令嬢は社交界デビューの際、ブレント王子に見初められた。 手にキスをされ、一晩中彼とダンスを楽しんだシャロンは、すっかり有頂天だった。 まるで、おとぎ話のお姫様になったような気分だったのである。 しかし、踊り疲れた彼女がブレント王子に導かれるままにやって来たのは、彼の寝室だった。 ブレント王子はお気に入りの娘を見つけるとベッドに誘い込み、飽きたら多額の持参金をもたせて、適当な男の元へと嫁がせることを繰り返していたのだ。 そんなこととは知らなかったシャロンは恐怖のあまり固まってしまったものの、なんとか彼の手を振り切って逃げ帰ってくる。 しかし彼女を迎えた継母と異母妹の態度は冷たかった。 継母はブレント王子の悪癖を知りつつ、持参金目当てにシャロンを王子の元へと送り出していたのである。 それなのに何故逃げ帰ってきたのかと、継母はシャロンを責めた上、役立たずと罵って、その日から彼女を使用人同然にこき使うようになった。 シャロンはそんな苦境の中でも挫けることなく、耐えていた。 そんなある日、ようやくシャロンを愛してくれる青年、スタンリー・クーパー伯爵と出会う。 彼女はスタンリーを心の支えに、辛い毎日を懸命に生きたが、異母妹はシャロンの幸せを許さなかった。 彼女は、どうにかして2人の仲を引き裂こうと企んでいた。 2人の間の障害はそればかりではなかった。 なんとブレント王子は、いまだにシャロンを諦めていなかったのだ。 彼女の身も心も手に入れたい欲求にかられたブレント王子は、彼女を力づくで自分のものにしようと企んでいたのである。

【完結】恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

婚約破棄は夜会でお願いします

編端みどり
恋愛
婚約者に尽くしていたら、他の女とキスしていたわ。この国は、ファーストキスも結婚式っていうお固い国なのに。だから、わたくしはお願いしましたの。 夜会でお相手とキスするなら、婚約を破棄してあげると。 お馬鹿な婚約者は、喜んでいました。けれど、夜会でキスするってどんな意味かご存知ないのですか? お馬鹿な婚約者を捨てて、憧れの女騎士を目指すシルヴィアに、騎士団長が迫ってくる。 待って! 結婚するまでキスは出来ませんわ!

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

『やりたくないからやらないだけ 〜自分のために働かない選択をした元貴族令嬢の静かな失踪〜』

鷹 綾
恋愛
「やりたくないから、やらないだけですわ」 婚約破棄をきっかけに、 貴族としての役割も、評価も、期待も、すべてが“面倒”になった令嬢ファーファ・ノクティス。 彼女が選んだのは、復讐でも、成り上がりでもなく―― 働かないという選択。 爵位と領地、屋敷を手放し、 領民の未来だけは守る形で名領主と契約を結んだのち、 彼女はひっそりと姿を消す。 山の奥で始まるのは、 誰にも評価されず、誰にも感謝せず、 それでも不自由のない、静かな日々。 陰謀も、追手も、劇的な再会もない。 あるのは、契約に基づいて淡々と届く物資と、 「何者にもならなくていい」という確かな安心だけ。 働かない。 争わない。 名を残さない。 それでも―― 自分の人生を、自分のために選び切る。 これは、 頑張らないことを肯定する物語。 静かに失踪した元貴族令嬢が、 誰にも縛られず生きるまでを描いた、 “何もしない”ことを貫いた、静かな完結譚。

【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚
恋愛
全てが完璧なアイリーン。だが、転落して頭を強く打ってしまったことが原因で意識を失ってしまう。その間に婚約者は妹に奪われてしまっていたが彼の様子は少し変で……? 基本的には、0.6.12.18時の何れかに更新します。どうぞ宜しくお願いいたします。

姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした

柚木ゆず
恋愛
 僕の婚約者であるロゼの家族は、困った人ばかりだった。  異母妹のアメリはロゼの物を欲しがって平然と奪い取り、継母ベルは実子だけを甘やかす。父親であるトムはベルに夢中で、そのためアメリの味方ばかりする。  ――そんな人達でも、家族ですので――。  それでもロゼは我慢していたのだけれど、その日、アメリ達は一線を越えてしまった。 「マエル様を欲しくなったの。お姉様の婚約者を頂戴」 「邪魔をすれば、ここにあるユリのアクセサリーを壊すわよ?」  アメリとベルは自分達の都合でこの婚約を解消させようとして、ロゼが拒否をしたら亡き母の形見を使って脅迫を始めたらしいのだ。  僕に迷惑をかけようとしたことと、形見を取り上げられたこと。それによってロゼはついに怒り、僕が我慢している理由もなくなった。  だからこれから、君達にこれまでのお礼をすることにしたんだ。アメリ、ベル、そしてトム。どうぞお楽しみに。

処理中です...