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第15話
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ここ1か月ほど、アレン様は屋敷にいる日が多くなった。
以前は毎日早朝出発の深夜帰りだったのが、今では週に2回ほどしか外に行くことはない。
もっとも、遊んでいるわけではなく、大半の時間は執務室に籠っている。
どうも2か月ほど先に宝飾品の品評会的なイベントがあるらしく、それに向けての制作にかかりきりらしい。
「失礼します、アレン様」
「ああエミリー、ありがとう」
料理をのせたお盆をもって執務室に入るとアレン様は優しい笑顔で出迎えてくれた。
大きな机の中央にはにはカッティングの最中の台に固定された宝石にノミやツチが置かれ、隅には宝飾品の設計図が何枚も置かれていた。
最近知ったことだけど、アレン様は宝飾品の商人であると同時に製作者でもあった。
ルークさんによると、単に売るだけでなく顧客とじかに顔を合わせてニーズを把握できるために要望以上の品が作れるのがアレン様率いるフローラ商会の強みらしい。
「いつ見ても綺麗な宝石ですわね」
「ん? もしかして欲しいのかい、エミリー?」
「いえ、そういうわけでは・・・」
遠回しなおねだりなんかじゃない。
心からの賞賛だった。
まだ途中だけど、すでに宝石は輝きを放っている。
きっと素晴らしい品になるだろう。
「それよりも料理が冷めてしまいますわ、お早いうちにどうぞ。今日は鶏肉の香草焼きです」
「うん、今日もとても美味しそうだ」
「美味しそう」なんて言われると少し浮かれそうになってしまう――なにせ私はアレン様に好意を抱き始めてしまっているから。
ここしばらく、食事を差し入れるために度々執務室に入る中で私はアレン様が本気で事業に臨んでいると知った。
真面目に仕事に取り組んでいる人をみて嫌な気持ちになる人はいないだろう。
それにシエルの命を助けてもらったし、さらに言えば普通にイケメンで好みのルックスだ。
もっとも色恋沙汰に発展させようなどとは思ってない、私の得意な料理でアレン様を多少なりとも支えられれば十分。
「丁度いい、食事がてら少し休憩するとしようか」
そう言ってアレン様は上着を脱いで椅子の背もたれにかけると、シャツの首元をくつろげる。
その時――見てしまった。
「エミリー、どうかしたかい?」
アレン様の声で我にかえる。
「いえ、なんでもありませんわ・・・失礼します・・・」
喉奥につっかえた思いを飲み込んで執務室を後にする。
足早に階段をのぼり、自室へ駆け込む。
(馬鹿ね、私・・・わかりきっていたことじゃないの)
自嘲まじりのため息が漏れ出た。
契約結婚だというのは最初に言われたこと。
だから、これはいつか必ず起こることだとわかっていた。
それでも直に体験すると、心が震えるのを止められない。
私は見てしまった。
アレン様のシャツの襟に、赤いキスマークがついているのを。
以前は毎日早朝出発の深夜帰りだったのが、今では週に2回ほどしか外に行くことはない。
もっとも、遊んでいるわけではなく、大半の時間は執務室に籠っている。
どうも2か月ほど先に宝飾品の品評会的なイベントがあるらしく、それに向けての制作にかかりきりらしい。
「失礼します、アレン様」
「ああエミリー、ありがとう」
料理をのせたお盆をもって執務室に入るとアレン様は優しい笑顔で出迎えてくれた。
大きな机の中央にはにはカッティングの最中の台に固定された宝石にノミやツチが置かれ、隅には宝飾品の設計図が何枚も置かれていた。
最近知ったことだけど、アレン様は宝飾品の商人であると同時に製作者でもあった。
ルークさんによると、単に売るだけでなく顧客とじかに顔を合わせてニーズを把握できるために要望以上の品が作れるのがアレン様率いるフローラ商会の強みらしい。
「いつ見ても綺麗な宝石ですわね」
「ん? もしかして欲しいのかい、エミリー?」
「いえ、そういうわけでは・・・」
遠回しなおねだりなんかじゃない。
心からの賞賛だった。
まだ途中だけど、すでに宝石は輝きを放っている。
きっと素晴らしい品になるだろう。
「それよりも料理が冷めてしまいますわ、お早いうちにどうぞ。今日は鶏肉の香草焼きです」
「うん、今日もとても美味しそうだ」
「美味しそう」なんて言われると少し浮かれそうになってしまう――なにせ私はアレン様に好意を抱き始めてしまっているから。
ここしばらく、食事を差し入れるために度々執務室に入る中で私はアレン様が本気で事業に臨んでいると知った。
真面目に仕事に取り組んでいる人をみて嫌な気持ちになる人はいないだろう。
それにシエルの命を助けてもらったし、さらに言えば普通にイケメンで好みのルックスだ。
もっとも色恋沙汰に発展させようなどとは思ってない、私の得意な料理でアレン様を多少なりとも支えられれば十分。
「丁度いい、食事がてら少し休憩するとしようか」
そう言ってアレン様は上着を脱いで椅子の背もたれにかけると、シャツの首元をくつろげる。
その時――見てしまった。
「エミリー、どうかしたかい?」
アレン様の声で我にかえる。
「いえ、なんでもありませんわ・・・失礼します・・・」
喉奥につっかえた思いを飲み込んで執務室を後にする。
足早に階段をのぼり、自室へ駆け込む。
(馬鹿ね、私・・・わかりきっていたことじゃないの)
自嘲まじりのため息が漏れ出た。
契約結婚だというのは最初に言われたこと。
だから、これはいつか必ず起こることだとわかっていた。
それでも直に体験すると、心が震えるのを止められない。
私は見てしまった。
アレン様のシャツの襟に、赤いキスマークがついているのを。
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