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第14話
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なんやかんやでアレン様にスープを振る舞うことになった。
「どうぞご賞味くださいアレン様」
お皿によそったスープをアレン様に差し出す。
(気に入ってくださればいいけれど・・・)
アレン様はスープを凝視し、スプーンを手に取った。
スープと具材をすくいとり、上品な動作で口に運ぶ。
(やっぱり、アレン様はちゃんとした教育を受けられた方だわ・・・)
『食べる』という動作1つでも作法を教わっている人とそうでない人では全く違う。
アレン様のそれは間違いなく上流階級で育った人間のものだ。
優雅な仕草だけ見れば王侯貴族といっても信じてしまうだろう。
先ほどまで机に食べ物を直置きしていた人とは思えない。
ふとアレン様の動きが止まっていることに気づいた。
食べ終わったというわけではない。
まだスープは半分以上お皿に残っている。
(やっぱり、お口に合わなかったのかしら?)
不安になってアレン様の表情を確認しようと、さりげなく顔を覗き込む。
「えっ」
つい声が漏れてしまった。
アレン様の頬を一筋の涙が伝い落ちていた。
目つきはどこか虚ろで喜んでいるようにも悲しんでいるようにも見える。
そばにいるルークさんもどう反応したらいいのかわからないらしく固まってしまっている。
形容しがたい沈黙が数秒続いた。
「い、いやあ保存食ばかりの食事をしてきたから手作りの美味しいスープはしみるねえ。エミリー、ありがとう」
沈黙を破ったのはアレン様だった。
いつもの穏やかな顔に戻っているけど、なんだかぎこちない雰囲気のままだ。
「そ・・それならよかったです。よければまたお作りしましょうか?」
「・・・ふうん、じゃあまた作ってもらってもいいかな?実はしばらく宝飾品の制作で屋敷にいるから、食事の用意があると助かるんだよね」
「えっと・・・はい、私でよければ」
「じゃ、決まりね。頼んだよ」
案外アレン様は私の作ったスープを気に入ってくれたらしい。
単に社交辞令のつもりだったけど、またアレン様に料理をふるまうことになってしまった。
それにしても涙を流されるなんて、いったい何があったのかしら?
何はともあれこの日から少しずつ私とアレン様とが顔を合わせる回数は増えていった。
アレン様はもっぱら1階の執務室にこもり書類や作業と向き合い続けていた。
私は朝と晩の2回に食事を用意した。
メニューは元々私が作れるものだったり、フローラさんの備忘録に記されていたレシピだったりした。
アレン様は毎回「美味しいよ、ありがとう」と言ってくださるけど、料理を口に入れたときに神妙な表情を見せることがあって、それだけが気がかりだった。
「どうぞご賞味くださいアレン様」
お皿によそったスープをアレン様に差し出す。
(気に入ってくださればいいけれど・・・)
アレン様はスープを凝視し、スプーンを手に取った。
スープと具材をすくいとり、上品な動作で口に運ぶ。
(やっぱり、アレン様はちゃんとした教育を受けられた方だわ・・・)
『食べる』という動作1つでも作法を教わっている人とそうでない人では全く違う。
アレン様のそれは間違いなく上流階級で育った人間のものだ。
優雅な仕草だけ見れば王侯貴族といっても信じてしまうだろう。
先ほどまで机に食べ物を直置きしていた人とは思えない。
ふとアレン様の動きが止まっていることに気づいた。
食べ終わったというわけではない。
まだスープは半分以上お皿に残っている。
(やっぱり、お口に合わなかったのかしら?)
不安になってアレン様の表情を確認しようと、さりげなく顔を覗き込む。
「えっ」
つい声が漏れてしまった。
アレン様の頬を一筋の涙が伝い落ちていた。
目つきはどこか虚ろで喜んでいるようにも悲しんでいるようにも見える。
そばにいるルークさんもどう反応したらいいのかわからないらしく固まってしまっている。
形容しがたい沈黙が数秒続いた。
「い、いやあ保存食ばかりの食事をしてきたから手作りの美味しいスープはしみるねえ。エミリー、ありがとう」
沈黙を破ったのはアレン様だった。
いつもの穏やかな顔に戻っているけど、なんだかぎこちない雰囲気のままだ。
「そ・・それならよかったです。よければまたお作りしましょうか?」
「・・・ふうん、じゃあまた作ってもらってもいいかな?実はしばらく宝飾品の制作で屋敷にいるから、食事の用意があると助かるんだよね」
「えっと・・・はい、私でよければ」
「じゃ、決まりね。頼んだよ」
案外アレン様は私の作ったスープを気に入ってくれたらしい。
単に社交辞令のつもりだったけど、またアレン様に料理をふるまうことになってしまった。
それにしても涙を流されるなんて、いったい何があったのかしら?
何はともあれこの日から少しずつ私とアレン様とが顔を合わせる回数は増えていった。
アレン様はもっぱら1階の執務室にこもり書類や作業と向き合い続けていた。
私は朝と晩の2回に食事を用意した。
メニューは元々私が作れるものだったり、フローラさんの備忘録に記されていたレシピだったりした。
アレン様は毎回「美味しいよ、ありがとう」と言ってくださるけど、料理を口に入れたときに神妙な表情を見せることがあって、それだけが気がかりだった。
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