【完結】モブなのに最強?

らんか

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 「ミーシャ、領地の東側の結界に穴が開いてるようだ。そこから数匹の魔物が入り込み畑や家畜を荒らしているらしい。領民は今のところ避難して被害はないが、時間の問題だ。今から討伐に行くぞ」
 
 領主である父に言われ、ミーシャは意気揚々と立ち上がり、すぐさま戦闘の準備をするために自室に戻った。        
 侍女のリンダがすでに用意してくれていた動きやすい白シャツに黒のハイウェストパンツ、黒のロングブーツに着替え、装備を整える。
 婚約破棄後、ちょうど学園の夏期休暇に入ったこともあり、私は両親と共に領地に帰っていた。
 「お嬢様、お気をつけていってらっしゃいませ。怪我をなさいませんよう無事にお戻り下さいませ」
 「ありがとう。行ってくるわね」
 心配そうな表情のリンダに笑顔で返答し、厩舎に向かった。
 厩舎は馬専用と、飛行用の飛竜専用があり、飛竜の厩舎に入る。相棒である飛竜に「フォース、今日もお願いね」と声をかけて、素早く飛び乗ると早々に現場に向かった。

 

 遡ること300年前。魔物が蔓延る森に国が隣接していたため、多くの犠牲者を強いられながら人間と魔物の戦いが続いていた。
 そんな中、聖なる力を持った一人の少女によって魔物除けの結界がかけられ国全体を覆った。
 それにより魔物からの脅威は収まったが、その後結界を張れる力を持った人間が生まれてくることはなく、300年経った現在では今にも結界が消滅しそうなアトラン王国。
 魔物の森と隣接する辺境地の領主である辺境伯家にミーシャは生まれ、小さい時から屈強な父と兄、父率いるラバンティ辺境伯騎士団と共に魔物討伐に明け暮れる毎日を送っていた。
 この世界は魔法があり、四元素である火・水・土・風属性魔法をベースに氷、木、雷などの分枝魔法があり、聖属性魔法や闇属性魔法は特殊魔法として、まれであるが過去に持っていた者もいた。
 聖属性魔法は主に治癒やシールド魔法などがあるが、国全体を覆うような結界を張る事は出来ない。大きな結界を張ることが出来る力は、聖なる力として聖女だけが使えるものと考えられていた。
 庶民は生活魔法である弱い魔法しか使えないが、貴族は魔力量が多く、攻撃魔法や防御魔法に特化しており、ここ辺境地では、比較的魔力が高く、魔物の討伐に適した者ばかりだ。
 その中でもミーシャの魔力量、魔法技術は群を抜いて高かった。

 「ミーシャ! 来たか! さっそくだが、第二騎士団のフォローに回ってくれ! 結界の穴を塞ぐように防壁を作ってるが、魔物が入って来ようとするから攻撃するのに力が分散して時間がかかってるんだ!」

 現場に到着すると、指揮を執っていた兄の指示がすぐに入った。兄率いる第一辺境伯騎士団は、村に入ってきていた魔物を駆逐していたが、運悪く他の小型の魔物につられて、大型の魔物が入り込んできたらしい。そこにほとんどの人員が集まり、総大将である父も兄と共に大型の魔物に挑んでいるため、防壁担当の第二辺境伯騎士団の防衛まで手が回らないようだった。

 私はすぐに結界壁のある場所に赴き、結界穴から入って来ようとする魔物に苦戦していた第二騎士団と合流した。
 「魔物駆除は任せて!」
 そう叫ぶとすぐに無詠唱で火魔法を放ち、小型の魔物数匹を一気に焼き消滅させる。結界の外に出て、結界穴に近づいてきていた魔物達の意識を自分に向けさせ、その隙に防壁を作ってもらうのだ。
 結界の外でミーシャと数人の第二騎士団員とで魔物駆逐をしていると、魔物の森の入り口近く、結界穴よりやや西方寄りでまた別の戦闘の音が聞こえた。
 「他の団員があそこまで戦闘に行ってるの⁈」
 ミーシャが近くの団員に尋ねると、「いえ、ミーシャ様が来られるまでは結界外には出て戦っておりません!」との返答がきた。
 
 「ちょっと見てくるから、ここを任せたわ! 危なくなったら結界内に入ってて!」
 防壁が半分以上出来上がってきていた為、結界穴からはほぼ入って来れないだろうと推察したミーシャは、すばやく西方の森の入り口に向かった。

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