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シオンはミーシャの貴族牢を訪ね、魔物の収集家がいる事、魔物の裏取引が密かに行われている事をミーシャに伝えた。
「ミーシャ嬢の父上や母上殿も、情報を集め真相究明に力を入れてくれている。
私も共に力をつくすつもりだ。
本当にすまない。王族は公正な判断をしなければならないのに、陛下は……」
シオンは辛そうな表情で頭を下げた。
「また。だめですよ。前にもお伝えしましたよね? 王族は簡単に頭を下げちゃ駄目なんですよ」
ミーシャは微笑みながらシオンに頭を上げてもらう。
シオンから聞いた話は、闇の使い魔からも情報を得ていた。そして、誰が密かにマンティコアを手に入れようとしたのかも……。
(シオン様に、どう伝えるべきか。まずはマンティコアの入手先のヒントを伝えましょう。そこから購入しようとしていたのは誰かを探してもらうのが1番早いかな。ここからだと動きが制限されてるから、現状では購入者に接触し、あの魔物を購入するよう誘導した者までは、辿り着けない……)
ミーシャはゲームの内容と使い魔の情報により、あの森に誰があの魔物を放ったのか見当がついていた。そして、その目的は多分……。
「シオン様。あれはアトラン王国の西の国境沿いにある、隣国の森に生息している魔物だったと記憶しています。もし、魔物の裏取引が行われているのなら、冒険者が関与している可能性があります。西方の冒険者ギルドに要請し、あの魔物を生捕りに出来そうな冒険者の洗い出しと、魔物に使われる魔素封じの道具類を扱っている業者の洗い出しを行なっていただけますか? かなり強力な道具でないと凶悪な魔物は抑え込めませんので、製作者は限られるかと。そうすれば、色々な可能性がしぼられてくるのではないでしょうか。
わたくしの家族にも、同じ事をお伝えしていただければ、すぐに協力してくれるはずですわ」
そうミーシャは告げると、
「あ、でも……。」と、躊躇した。
シオン以外の王侯貴族は、色々な思惑からミーシャに疑いをかけたままあやふやにしたいようであるため、表立ってシオンに動いてもらうのは立場上、良くないのではないか。
「シオン様。先程の話は、シオン様は聞かなかった事に。わたくしに肩入れすれば、シオン様のお立場が悪くなる事に考えが至りませんでした。申し訳ございません」
ミーシャが頭を下げながらそういうと、シオンは傷ついた表情をした。
「そんな事は気にしないでくれ。君は私の命の恩人なんだ。君が魔の森から助け出してくれて、モーニュ草を分けてくれなかったら、今頃私はここにいない。
陛下はその事を知っているはずなのに、今回の件は恩を仇で返す行ないだと思う。宰相の入れ知恵もあるのだろうが……。
だから、せめて私だけでも何か力になりたいのだ。だから、そんな事を言わないでほしい。」
真摯にそう答え、ジッとミーシャの眼を見る。
「……分かりました。でも無理はなさらないで下さいね。よろしくお願いします。」
改めてミーシャが頭を下げてお願いする。
「分かった! すぐに取り掛かろう」
と、意気揚々とシオンは立ち上がった。
シオンが去ってから、貴族牢の中で時々ミーシャはあの時のシオンの傷ついた顔や真摯に見つめてきた時の表情を思い出して、ドキドキしていた。
(なに思い出して意識してるのよ私は。シオン様が協力してくれるのは、私を命の恩人だと思ってるからよ。変な勘違いをして、シオン様に失礼よ!)
そんな事を考えながら、過ごしていたミーシャであったが突然数人の騎士が現れた。
「ミーシャ嬢、出なさい。陛下がお待ちだ」
騎士に伴われ、謁見の間に通されると、すでに陛下はじめ、宰相や数人の官僚たち、そしてシオンや、ミーシャの両親も揃っていた。
「王国の偉大なる太陽、国王陛下にご挨拶申し上げます」
ミーシャは見事なカーテシーを行ない、礼を尽くした。
「面を上げよ、ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。此度のことで令嬢に言われの無い咎が掛けられていたが、間違いであったことが証明された。そして、王族である第二王子が魔物と遭遇したのも、単なる偶然であったことが判明した。」
陛下は周りの人達にも聞こえるように、しっかりとした声で告げた。
「よって、本日をもって釈放とする。詳しくは、この後別の部屋にて宰相より説明することとする。」
と陛下の命が下った。
「ミーシャ嬢、疲れたであろう。ラバンティ辺境伯の元に戻るがよい。」
「英断かつ多大なご配慮を賜り、恐悦至極にごさいます」
ミーシャは両親の元に下がろうとした時、突然部屋の扉が乱暴に開いた。
「父上! どういう事ですか! その女が冤罪だなんて! 飛竜で魔物を運んでいたという証言はどうされるのですか!」
ダミアンが扉から入って叫んだ。
「ダミアン! 謁見の間であるぞ! 控えろ」
陛下が窘めるも一向にダミアンは控えず
「説明して下さい!」と叫んだ。
溜息を吐きながら、陛下は宰相を見る。
「ダミアン第二王子殿下。今回の魔物については出所がすでに把握されております。
嘆かわしいことに、王国内には製造中止となった魔素封じの道具を製作している者がおり、それを使って魔物を生捕りにし、密かに売買をする者たちがいます。
今回はそこから逃げ出した魔物があの森で現れたということが分かりました」
と、宰相が説明した。
「ミーシャ嬢の父上や母上殿も、情報を集め真相究明に力を入れてくれている。
私も共に力をつくすつもりだ。
本当にすまない。王族は公正な判断をしなければならないのに、陛下は……」
シオンは辛そうな表情で頭を下げた。
「また。だめですよ。前にもお伝えしましたよね? 王族は簡単に頭を下げちゃ駄目なんですよ」
ミーシャは微笑みながらシオンに頭を上げてもらう。
シオンから聞いた話は、闇の使い魔からも情報を得ていた。そして、誰が密かにマンティコアを手に入れようとしたのかも……。
(シオン様に、どう伝えるべきか。まずはマンティコアの入手先のヒントを伝えましょう。そこから購入しようとしていたのは誰かを探してもらうのが1番早いかな。ここからだと動きが制限されてるから、現状では購入者に接触し、あの魔物を購入するよう誘導した者までは、辿り着けない……)
ミーシャはゲームの内容と使い魔の情報により、あの森に誰があの魔物を放ったのか見当がついていた。そして、その目的は多分……。
「シオン様。あれはアトラン王国の西の国境沿いにある、隣国の森に生息している魔物だったと記憶しています。もし、魔物の裏取引が行われているのなら、冒険者が関与している可能性があります。西方の冒険者ギルドに要請し、あの魔物を生捕りに出来そうな冒険者の洗い出しと、魔物に使われる魔素封じの道具類を扱っている業者の洗い出しを行なっていただけますか? かなり強力な道具でないと凶悪な魔物は抑え込めませんので、製作者は限られるかと。そうすれば、色々な可能性がしぼられてくるのではないでしょうか。
わたくしの家族にも、同じ事をお伝えしていただければ、すぐに協力してくれるはずですわ」
そうミーシャは告げると、
「あ、でも……。」と、躊躇した。
シオン以外の王侯貴族は、色々な思惑からミーシャに疑いをかけたままあやふやにしたいようであるため、表立ってシオンに動いてもらうのは立場上、良くないのではないか。
「シオン様。先程の話は、シオン様は聞かなかった事に。わたくしに肩入れすれば、シオン様のお立場が悪くなる事に考えが至りませんでした。申し訳ございません」
ミーシャが頭を下げながらそういうと、シオンは傷ついた表情をした。
「そんな事は気にしないでくれ。君は私の命の恩人なんだ。君が魔の森から助け出してくれて、モーニュ草を分けてくれなかったら、今頃私はここにいない。
陛下はその事を知っているはずなのに、今回の件は恩を仇で返す行ないだと思う。宰相の入れ知恵もあるのだろうが……。
だから、せめて私だけでも何か力になりたいのだ。だから、そんな事を言わないでほしい。」
真摯にそう答え、ジッとミーシャの眼を見る。
「……分かりました。でも無理はなさらないで下さいね。よろしくお願いします。」
改めてミーシャが頭を下げてお願いする。
「分かった! すぐに取り掛かろう」
と、意気揚々とシオンは立ち上がった。
シオンが去ってから、貴族牢の中で時々ミーシャはあの時のシオンの傷ついた顔や真摯に見つめてきた時の表情を思い出して、ドキドキしていた。
(なに思い出して意識してるのよ私は。シオン様が協力してくれるのは、私を命の恩人だと思ってるからよ。変な勘違いをして、シオン様に失礼よ!)
そんな事を考えながら、過ごしていたミーシャであったが突然数人の騎士が現れた。
「ミーシャ嬢、出なさい。陛下がお待ちだ」
騎士に伴われ、謁見の間に通されると、すでに陛下はじめ、宰相や数人の官僚たち、そしてシオンや、ミーシャの両親も揃っていた。
「王国の偉大なる太陽、国王陛下にご挨拶申し上げます」
ミーシャは見事なカーテシーを行ない、礼を尽くした。
「面を上げよ、ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。此度のことで令嬢に言われの無い咎が掛けられていたが、間違いであったことが証明された。そして、王族である第二王子が魔物と遭遇したのも、単なる偶然であったことが判明した。」
陛下は周りの人達にも聞こえるように、しっかりとした声で告げた。
「よって、本日をもって釈放とする。詳しくは、この後別の部屋にて宰相より説明することとする。」
と陛下の命が下った。
「ミーシャ嬢、疲れたであろう。ラバンティ辺境伯の元に戻るがよい。」
「英断かつ多大なご配慮を賜り、恐悦至極にごさいます」
ミーシャは両親の元に下がろうとした時、突然部屋の扉が乱暴に開いた。
「父上! どういう事ですか! その女が冤罪だなんて! 飛竜で魔物を運んでいたという証言はどうされるのですか!」
ダミアンが扉から入って叫んだ。
「ダミアン! 謁見の間であるぞ! 控えろ」
陛下が窘めるも一向にダミアンは控えず
「説明して下さい!」と叫んだ。
溜息を吐きながら、陛下は宰相を見る。
「ダミアン第二王子殿下。今回の魔物については出所がすでに把握されております。
嘆かわしいことに、王国内には製造中止となった魔素封じの道具を製作している者がおり、それを使って魔物を生捕りにし、密かに売買をする者たちがいます。
今回はそこから逃げ出した魔物があの森で現れたということが分かりました」
と、宰相が説明した。
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