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現代の常識学
獣耳、魔王と戦う
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「シャタルアさん!」
『わかっておる!スプラッシュ!』
ボクの背中から水の弾丸が発射され、飛びかかってきたCランクモンスターのフォレストウルフの頭を貫く。
フォレストウルフはそのまま地に落ちて絶命した。
ここはエリア4。
凶暴な肉食のモンスターが数多く生息しており、草食性のモンスターでもかなり凶暴な性質のものが多い場所だ。
『気をつけろ!膨大な魔力がこっちに来てる!』
「次から次へと…」
ボクは周囲のモンスターを倒しながら移動を試みる。
「せやぁ!」
「ギャウウン!」
飛びかかったフォレストウルフの顔面に一撃を叩き込んで絶命させる。
そして、何体も倒しているうちにウルフの中に魔族が現れるようになる。
『進化した人狼、真人狼じゃと?!奴らは一体一体がAクラスに指定されておる!囲まれればひとたまりもないぞ!』
(わかってるけど…)
数が多過ぎた。
ボクはこのまま死ぬのかもしれないと思うほどに身動きが取れないでいた。
そのうえ、真人狼はまるでおもちゃで遊ぶかのようにボクの体に傷をつけていた。
「グッ…」
『カリヤッ!』
真人狼の牙を受け止めたボクの左腕がミシミシと嫌な音を立てる。
牙がどんどん肉を割くのがわかる。
『ええい!いい加減にしろー!スプラッシュレイン・インフィニット!』
ボクの噛まれた腕から真人狼の口の中に水の弾丸の雨が降り注ぐ。
真人狼の体には弾丸は効いているような感覚はなかったが、その水は真人狼の胃に溜まり、真人狼の体を内部から圧迫して破壊する。
苦しそうな表情をしているが、最後まで食いちぎろうと口に力を入れていた。
その判断が命取りとなるなんて微塵も思わなかったのだろう…
仲間の真人狼の強固な胃袋が自身を蝕む凶器と化したことには周りの真人狼も嫌そうに顔を顰めていた。
そして、膨大な量の水に耐えきれなくなった真人狼の膨らんだ体が破裂すると同時に凄まじい勢いで中の水が飛び出し、周囲の真人狼たちを吹き飛ばす。
ボクも吹き飛ぶかと思ったが、そこはシャタルアが防いでくれたようだ。
近くにいた真人狼たちは巻き込まれて瀕死か死亡した。
遠くで生き残った真人狼たちは逃げるように散って行ったが、肉食性の植物型モンスターに捕食されたり、一瞬で大きなモンスターに横から呑み込まれたりして、ほぼ壊滅となったのが見えた。
『カリヤ、来るぞ!』
ボクは目の前から邪魔なモンスターを黒焦げにしながら飛んできた雷を避ける。
雷が当たった先では魔族が拳を木に当てているのが見える。
雷を思わせるような黄色の髪の五方向に尖らせた特徴的な髪型でシャタルアと違い、黄色く真っ直ぐな角が額から生えていた。
雷のような黄色い眼をボクに向けながら、そいつは言う。
「俺の雷を避けるなんてな。お前、名は?」
『あやつは七大魔王の序列五位、神速の雷神と呼ばれるクエントスじゃ!』
ボクはあえて構えることはしないで短く答える。
「カリヤ…」
「カリヤとな?俺は第七魔王のクエントスだ!神速の雷神…と言えば、わかるだろう?」
クエントスはニヤリと笑って言う。
「わからない。」
「う~ん。聞き間違えかな?」
ニコニコとしながらクエントスは言う。
「わからない」
「うっそだろお前…」
ボクがもう一度同じ言葉を言うとクエントスはガックリと膝を着いていた。
「人間の中で俺の事を知らないやつがいたなんて初めてだ…」
クエントスはそう言うと何事も無かったかのように「スッ…」と立ち上がる。
「まあ良い。知らないなら、力ずくでわからせれば良いだけだ!」
クエントスが雷を纏う。
『序列一位の我がついてるカリヤに喧嘩を売るなど愚かでしかないのぅ…ま、憑依してるからわからなくても当然じゃが。』
シャタルアは呆れた様子で言うと自身の魔力でボクの身体の傷を完全に癒す。
『カリヤ、我も力を貸すから、チャチャッと片づけるのじゃ!』
「そうだね。シャタルアさん。」
ボクはシャタルアから魔力を受け取り、シャタルアが内側でボクに身体強化魔法を使う。
ボクはシャタルアさんからもらった魔力を拳に纏わせる。
「ハッ!面白ぇ!雷相手に勝つ気でいやがるのか?余程力に自信があるか、ただのアホか…」
クエントスが一瞬にして消え、ボクの目の前に姿を現す。
「確かめてやるよ!」
ボクは腹に向かって突き出されたアッパーを避ける。
猫の目には、とてもハッキリと見える動きだ。
「遅い」
ボクはやつの腹に蹴りを放つが、軽々と避けられてしまった。
「ちったぁやるみてぇだな!」
クエントスは楽しそうに笑う。
「だが、これはどうかなっ!疾風!」
クエントスが先程よりも速くなった動きで今度は背中側に回りこんで蹴りを放つ。
ボクはそれを見る事もなく避けて、反撃の蹴りを放つが、それも避けられる。
『カリヤ、お主は強い。その気になれば、我がいなくともこの程度の相手なら余裕で勝てるくらいにはな…』
ボクはクエントスが行動する前に距離を詰める。
「んな…!」
「せいっ!」
ボクの上段蹴りがクエントスの顔にクリティカルヒットする。
クエントスが明らかに動揺した様子で顔を押えて言う。
「この俺の顔に傷をつける…だと?」
クエントスの身体から膨大な雷が溢れ始める。
『カリヤ、ここからが本番じゃ。目だけで戦おうとするなよ?』
「わかってる…」
ボクは静かに目を閉じる。
「殺す!」
到底目で追うには速すぎるクエントスの拳を避ける。
「せいっ!」
そして、ボクの蹴りは的確に当てる。
だが、次第に蹴りだけでは避けられて平行線になり始めてくる。
「オラオラァ!お前の足技はもう俺には届かねぇぜぇ?」
ボクはクエントスの拳を避けて反撃の左の拳を顔面に叩き込む。
「テメッ!またしても俺の顔をっ!」
ボクは静かに目を開けて、顔を押えるクエントスに言う。
「戦いにおいて、急所を狙うのは当然。そうする事で消耗も少なく戦える。」
入学試験前、ボクはシェラさん、ディアさん、ティアラさんと地獄のように辛い特訓をした。
でも、それはボクが強くなるには十分過ぎた。
ボクにとっては勉強する事に比べれば楽だったけど、ヘトヘトになるまで特訓した。
シェラさんの魔法で作り出した特殊な空間の中での修行は一日で3年分くらいは修行が出来ると言ってたっけ?
その中で起きてる時間の半分は勉強にもう半分は戦闘に使っていた。
シェラさんの召喚するモンスターも強い相手ばかりだったし、ドラゴンとも戦った。
シェラさんは「このくらいなら、すぐ倒せると思うよ~」なんて言って召喚したのが、Aクラスモンスターの中でも別格の強さを持つと言われる炎の龍種の怒号を吐くものだった時はさすがにシャタルアさんもめっちゃ怒ってたね。
『当然じゃ!今思い出しても腸が煮えくり返るわい!あんなの修行相手として呼ぶもんじゃないわい!』
それでも、シャタルアさんと力を合わせてなんとか倒したんだよね。
そんな相手と戦ったボクたちには目の前のただ速いだけの相手は小物過ぎたんだ。
クエントスは魔法陣を展開しながら言う。
「なら、俺の魔法で殺してやるよ…死ねぇ!サンダーバーストォ!」
巨大な雷が一瞬にして目の前まで迫る。
「ふははは!逃げ場はねぇぜ!」
確かに目の前の極太の雷を避ける術は存在しない。
「だったら…」
ボクは全ての魔力を右足に纏わせて雷を蹴る。
「蹴り飛ばせば良いだけっ!」
極太の雷はボクの足で軽々と天へと打ち上げられた。
「はえ?」
クエントスはその様子を唖然として見ていた。
ボクはその隙を逃さずにクエントスの顔に蹴りを放つ。
「グッ…俺が…負ける?なんの力もないニンゲンごときに?」
クエントスはフラフラになりながらブツブツと何かを呟いていた。
「有り得ない…有り得ていいはずがない…俺は魔王だぞ?こんな無力なニンゲンに負けていいはずがないだろ?かくなる上は…あの魔剣を使うしか…」
クエントスが異空間から禍々しい炎を纏った剣を取り出す。
『あれは…!西の帝国で作られたとされる呪いの魔剣レーヴァン!カリヤ、あの剣には絶対に斬られてはならんぞ!あの呪われた炎には魂を焼く力がある。あれに魂を焼き尽くされれば問答無用で消滅させられてしまうぞ!』
ボクは足に纏わせていた魔力を全身に纏わせるようにする。
「大丈夫。シャタルアさんが居れば、ボクは強いから…!」
クエントスの高速の剣を避ける。
『そうじゃな。』
そして、振り下ろされた剣を避けて、背後に回る。
『我らは』「ボクたちは」
振り返ったクエントスの顔面に蹴りを放つ!
『「最強の二人だから!」』
クエントスの身体が吹っ飛び、近くにあった木に叩きつけられる。
クエントスが力無く倒れたのを見て、無意識にその隣で落ちているレーヴァンを紋章のある右手で拾う。
すると突然、レーヴァンの禍々しさを感じる黒い魔力が輝き始め、神々しささえ感じる赤い炎の剣になる。
『んなっ?!レーヴァンが変異したじゃと!?』
「変異…?」
この世界にある武具には時折、特定の条件を満たした場合に性質が変化するものがあるのだそう。
例えるなら、昆虫の変態のようなものだと言ってたっけ?
それを変異と呼んでいるんだ。
『まあ、読者のお主らには"進化"と言った方がわかりやすいかもしれんがな。』
シャタルアさん、またメタ発言?ってやつをしてるね?
『ま、まあ、とにもかくにも、呪剣レーヴァンが変異したことには変わりない。見たところ、聖なる力を感じるから、聖剣になったと言えるのでは無いか?』
「じゃあ、聖剣レーヴァン?」
『いや、どうせなら、もっとかっこよく「レーヴァテイン」とかどうじゃ?』
「確か世界を焼き尽くす巨人の物語に出てくる炎の剣だよね?」
『うむ。こやつの呪剣の時の性能はまさにそのレーヴァテインそのものじゃ。じゃから、変異したこやつにピッタリだと思うたのじゃよ。』
「そっか。なら、これからは聖剣レーヴァテインだね!」
ボクがそう言うとレーヴァテインが輝きを強める。
『私に素敵な名前をくださって、ありがとうございます。』
「わわっ!剣が喋ったよ!」
『変異に伴う名付けにより自我が芽生えたのです。魔族が名付けによって進化するのと同じですね。』
レーヴァテインは嬉しそうに言うとボクの身体に吸い込まれるようにして消える。
『うおっ?!なんか来たのじゃ!』
『私の力はカリヤ様と共に…』
こうしてボクは新たな武器レーヴァテインを手に入れ、倒したクエントスをシャタルアさんの魔力を使った魔法の糸で縛る。
「後はシェラさんにこいつを届けるだけだね!」
『それなら、私にお任せを!』
ボクの中から緋色の長い髪の赤い瞳の女性が現れる。
背は高く、胸も大きい姿は大人の女性って感じがする。
『フフン♪我の方がどっちも大きいから大人じゃな!』
なんでだろう…すごく子供っぽく見えてきた。
『なんでじゃ!』
シャタルアが勢いよくツッコミを入れる。
「うふふ…私はシャタルアと違ってしっかりしてるからね!無理も無い話よ。」
レーヴァテインが煽るようにニヤリと笑って言う。
『くぅー!元呪剣のくせに煽りよる!』
悔しそうにシャタルアが言う。
「あれ?シャタルアさんとレーヴァテインさんも話せるんだ。」
「えぇ、私も不思議なのですが、進化して人格が生まれた際にカリヤ様と同一化をしたのですが、シャタルアとも同一化してしまったのです。おおよそはカリヤ様とシャタルアの契約のせいなのだろうとは思っていますが、原因はわからないですね。」
『そういうことじゃな。せっかく二人で楽しんでたところに邪魔が入ったのは面白くないのう…』
「それはこっちのセリフよ!せっかくカリヤ様と二人で楽しもうかと思ったら、うるさいのがいるんだもの!」
『なんじゃと?我の方が先なのじゃから、我がいるのは当たり前じゃろ!』
「この野郎…!カリヤ様の中で引きこもってるだけの分際でっ!偉そうにしやがって!」
『おうおう!やるってんなら、後でたっぷりと可愛がってやるぞ?』
「上等だこの野郎!私の方が強いってところ見せてやるよ!」
二人が喧しく喧嘩をする。
「二人とも…あんまり喧嘩しないで…ちょっとうるさい…」
ボクは少しだけ痛む頭を押さえる仕草をする。
「す、すみません…」
『ごめんなのじゃ』
2人はボクに対して謝る。
「わかったならいい…」
そんな感じで賑やかな二人と共にボクはシェラの元へと向かい始めるのであった。
『わかっておる!スプラッシュ!』
ボクの背中から水の弾丸が発射され、飛びかかってきたCランクモンスターのフォレストウルフの頭を貫く。
フォレストウルフはそのまま地に落ちて絶命した。
ここはエリア4。
凶暴な肉食のモンスターが数多く生息しており、草食性のモンスターでもかなり凶暴な性質のものが多い場所だ。
『気をつけろ!膨大な魔力がこっちに来てる!』
「次から次へと…」
ボクは周囲のモンスターを倒しながら移動を試みる。
「せやぁ!」
「ギャウウン!」
飛びかかったフォレストウルフの顔面に一撃を叩き込んで絶命させる。
そして、何体も倒しているうちにウルフの中に魔族が現れるようになる。
『進化した人狼、真人狼じゃと?!奴らは一体一体がAクラスに指定されておる!囲まれればひとたまりもないぞ!』
(わかってるけど…)
数が多過ぎた。
ボクはこのまま死ぬのかもしれないと思うほどに身動きが取れないでいた。
そのうえ、真人狼はまるでおもちゃで遊ぶかのようにボクの体に傷をつけていた。
「グッ…」
『カリヤッ!』
真人狼の牙を受け止めたボクの左腕がミシミシと嫌な音を立てる。
牙がどんどん肉を割くのがわかる。
『ええい!いい加減にしろー!スプラッシュレイン・インフィニット!』
ボクの噛まれた腕から真人狼の口の中に水の弾丸の雨が降り注ぐ。
真人狼の体には弾丸は効いているような感覚はなかったが、その水は真人狼の胃に溜まり、真人狼の体を内部から圧迫して破壊する。
苦しそうな表情をしているが、最後まで食いちぎろうと口に力を入れていた。
その判断が命取りとなるなんて微塵も思わなかったのだろう…
仲間の真人狼の強固な胃袋が自身を蝕む凶器と化したことには周りの真人狼も嫌そうに顔を顰めていた。
そして、膨大な量の水に耐えきれなくなった真人狼の膨らんだ体が破裂すると同時に凄まじい勢いで中の水が飛び出し、周囲の真人狼たちを吹き飛ばす。
ボクも吹き飛ぶかと思ったが、そこはシャタルアが防いでくれたようだ。
近くにいた真人狼たちは巻き込まれて瀕死か死亡した。
遠くで生き残った真人狼たちは逃げるように散って行ったが、肉食性の植物型モンスターに捕食されたり、一瞬で大きなモンスターに横から呑み込まれたりして、ほぼ壊滅となったのが見えた。
『カリヤ、来るぞ!』
ボクは目の前から邪魔なモンスターを黒焦げにしながら飛んできた雷を避ける。
雷が当たった先では魔族が拳を木に当てているのが見える。
雷を思わせるような黄色の髪の五方向に尖らせた特徴的な髪型でシャタルアと違い、黄色く真っ直ぐな角が額から生えていた。
雷のような黄色い眼をボクに向けながら、そいつは言う。
「俺の雷を避けるなんてな。お前、名は?」
『あやつは七大魔王の序列五位、神速の雷神と呼ばれるクエントスじゃ!』
ボクはあえて構えることはしないで短く答える。
「カリヤ…」
「カリヤとな?俺は第七魔王のクエントスだ!神速の雷神…と言えば、わかるだろう?」
クエントスはニヤリと笑って言う。
「わからない。」
「う~ん。聞き間違えかな?」
ニコニコとしながらクエントスは言う。
「わからない」
「うっそだろお前…」
ボクがもう一度同じ言葉を言うとクエントスはガックリと膝を着いていた。
「人間の中で俺の事を知らないやつがいたなんて初めてだ…」
クエントスはそう言うと何事も無かったかのように「スッ…」と立ち上がる。
「まあ良い。知らないなら、力ずくでわからせれば良いだけだ!」
クエントスが雷を纏う。
『序列一位の我がついてるカリヤに喧嘩を売るなど愚かでしかないのぅ…ま、憑依してるからわからなくても当然じゃが。』
シャタルアは呆れた様子で言うと自身の魔力でボクの身体の傷を完全に癒す。
『カリヤ、我も力を貸すから、チャチャッと片づけるのじゃ!』
「そうだね。シャタルアさん。」
ボクはシャタルアから魔力を受け取り、シャタルアが内側でボクに身体強化魔法を使う。
ボクはシャタルアさんからもらった魔力を拳に纏わせる。
「ハッ!面白ぇ!雷相手に勝つ気でいやがるのか?余程力に自信があるか、ただのアホか…」
クエントスが一瞬にして消え、ボクの目の前に姿を現す。
「確かめてやるよ!」
ボクは腹に向かって突き出されたアッパーを避ける。
猫の目には、とてもハッキリと見える動きだ。
「遅い」
ボクはやつの腹に蹴りを放つが、軽々と避けられてしまった。
「ちったぁやるみてぇだな!」
クエントスは楽しそうに笑う。
「だが、これはどうかなっ!疾風!」
クエントスが先程よりも速くなった動きで今度は背中側に回りこんで蹴りを放つ。
ボクはそれを見る事もなく避けて、反撃の蹴りを放つが、それも避けられる。
『カリヤ、お主は強い。その気になれば、我がいなくともこの程度の相手なら余裕で勝てるくらいにはな…』
ボクはクエントスが行動する前に距離を詰める。
「んな…!」
「せいっ!」
ボクの上段蹴りがクエントスの顔にクリティカルヒットする。
クエントスが明らかに動揺した様子で顔を押えて言う。
「この俺の顔に傷をつける…だと?」
クエントスの身体から膨大な雷が溢れ始める。
『カリヤ、ここからが本番じゃ。目だけで戦おうとするなよ?』
「わかってる…」
ボクは静かに目を閉じる。
「殺す!」
到底目で追うには速すぎるクエントスの拳を避ける。
「せいっ!」
そして、ボクの蹴りは的確に当てる。
だが、次第に蹴りだけでは避けられて平行線になり始めてくる。
「オラオラァ!お前の足技はもう俺には届かねぇぜぇ?」
ボクはクエントスの拳を避けて反撃の左の拳を顔面に叩き込む。
「テメッ!またしても俺の顔をっ!」
ボクは静かに目を開けて、顔を押えるクエントスに言う。
「戦いにおいて、急所を狙うのは当然。そうする事で消耗も少なく戦える。」
入学試験前、ボクはシェラさん、ディアさん、ティアラさんと地獄のように辛い特訓をした。
でも、それはボクが強くなるには十分過ぎた。
ボクにとっては勉強する事に比べれば楽だったけど、ヘトヘトになるまで特訓した。
シェラさんの魔法で作り出した特殊な空間の中での修行は一日で3年分くらいは修行が出来ると言ってたっけ?
その中で起きてる時間の半分は勉強にもう半分は戦闘に使っていた。
シェラさんの召喚するモンスターも強い相手ばかりだったし、ドラゴンとも戦った。
シェラさんは「このくらいなら、すぐ倒せると思うよ~」なんて言って召喚したのが、Aクラスモンスターの中でも別格の強さを持つと言われる炎の龍種の怒号を吐くものだった時はさすがにシャタルアさんもめっちゃ怒ってたね。
『当然じゃ!今思い出しても腸が煮えくり返るわい!あんなの修行相手として呼ぶもんじゃないわい!』
それでも、シャタルアさんと力を合わせてなんとか倒したんだよね。
そんな相手と戦ったボクたちには目の前のただ速いだけの相手は小物過ぎたんだ。
クエントスは魔法陣を展開しながら言う。
「なら、俺の魔法で殺してやるよ…死ねぇ!サンダーバーストォ!」
巨大な雷が一瞬にして目の前まで迫る。
「ふははは!逃げ場はねぇぜ!」
確かに目の前の極太の雷を避ける術は存在しない。
「だったら…」
ボクは全ての魔力を右足に纏わせて雷を蹴る。
「蹴り飛ばせば良いだけっ!」
極太の雷はボクの足で軽々と天へと打ち上げられた。
「はえ?」
クエントスはその様子を唖然として見ていた。
ボクはその隙を逃さずにクエントスの顔に蹴りを放つ。
「グッ…俺が…負ける?なんの力もないニンゲンごときに?」
クエントスはフラフラになりながらブツブツと何かを呟いていた。
「有り得ない…有り得ていいはずがない…俺は魔王だぞ?こんな無力なニンゲンに負けていいはずがないだろ?かくなる上は…あの魔剣を使うしか…」
クエントスが異空間から禍々しい炎を纏った剣を取り出す。
『あれは…!西の帝国で作られたとされる呪いの魔剣レーヴァン!カリヤ、あの剣には絶対に斬られてはならんぞ!あの呪われた炎には魂を焼く力がある。あれに魂を焼き尽くされれば問答無用で消滅させられてしまうぞ!』
ボクは足に纏わせていた魔力を全身に纏わせるようにする。
「大丈夫。シャタルアさんが居れば、ボクは強いから…!」
クエントスの高速の剣を避ける。
『そうじゃな。』
そして、振り下ろされた剣を避けて、背後に回る。
『我らは』「ボクたちは」
振り返ったクエントスの顔面に蹴りを放つ!
『「最強の二人だから!」』
クエントスの身体が吹っ飛び、近くにあった木に叩きつけられる。
クエントスが力無く倒れたのを見て、無意識にその隣で落ちているレーヴァンを紋章のある右手で拾う。
すると突然、レーヴァンの禍々しさを感じる黒い魔力が輝き始め、神々しささえ感じる赤い炎の剣になる。
『んなっ?!レーヴァンが変異したじゃと!?』
「変異…?」
この世界にある武具には時折、特定の条件を満たした場合に性質が変化するものがあるのだそう。
例えるなら、昆虫の変態のようなものだと言ってたっけ?
それを変異と呼んでいるんだ。
『まあ、読者のお主らには"進化"と言った方がわかりやすいかもしれんがな。』
シャタルアさん、またメタ発言?ってやつをしてるね?
『ま、まあ、とにもかくにも、呪剣レーヴァンが変異したことには変わりない。見たところ、聖なる力を感じるから、聖剣になったと言えるのでは無いか?』
「じゃあ、聖剣レーヴァン?」
『いや、どうせなら、もっとかっこよく「レーヴァテイン」とかどうじゃ?』
「確か世界を焼き尽くす巨人の物語に出てくる炎の剣だよね?」
『うむ。こやつの呪剣の時の性能はまさにそのレーヴァテインそのものじゃ。じゃから、変異したこやつにピッタリだと思うたのじゃよ。』
「そっか。なら、これからは聖剣レーヴァテインだね!」
ボクがそう言うとレーヴァテインが輝きを強める。
『私に素敵な名前をくださって、ありがとうございます。』
「わわっ!剣が喋ったよ!」
『変異に伴う名付けにより自我が芽生えたのです。魔族が名付けによって進化するのと同じですね。』
レーヴァテインは嬉しそうに言うとボクの身体に吸い込まれるようにして消える。
『うおっ?!なんか来たのじゃ!』
『私の力はカリヤ様と共に…』
こうしてボクは新たな武器レーヴァテインを手に入れ、倒したクエントスをシャタルアさんの魔力を使った魔法の糸で縛る。
「後はシェラさんにこいつを届けるだけだね!」
『それなら、私にお任せを!』
ボクの中から緋色の長い髪の赤い瞳の女性が現れる。
背は高く、胸も大きい姿は大人の女性って感じがする。
『フフン♪我の方がどっちも大きいから大人じゃな!』
なんでだろう…すごく子供っぽく見えてきた。
『なんでじゃ!』
シャタルアが勢いよくツッコミを入れる。
「うふふ…私はシャタルアと違ってしっかりしてるからね!無理も無い話よ。」
レーヴァテインが煽るようにニヤリと笑って言う。
『くぅー!元呪剣のくせに煽りよる!』
悔しそうにシャタルアが言う。
「あれ?シャタルアさんとレーヴァテインさんも話せるんだ。」
「えぇ、私も不思議なのですが、進化して人格が生まれた際にカリヤ様と同一化をしたのですが、シャタルアとも同一化してしまったのです。おおよそはカリヤ様とシャタルアの契約のせいなのだろうとは思っていますが、原因はわからないですね。」
『そういうことじゃな。せっかく二人で楽しんでたところに邪魔が入ったのは面白くないのう…』
「それはこっちのセリフよ!せっかくカリヤ様と二人で楽しもうかと思ったら、うるさいのがいるんだもの!」
『なんじゃと?我の方が先なのじゃから、我がいるのは当たり前じゃろ!』
「この野郎…!カリヤ様の中で引きこもってるだけの分際でっ!偉そうにしやがって!」
『おうおう!やるってんなら、後でたっぷりと可愛がってやるぞ?』
「上等だこの野郎!私の方が強いってところ見せてやるよ!」
二人が喧しく喧嘩をする。
「二人とも…あんまり喧嘩しないで…ちょっとうるさい…」
ボクは少しだけ痛む頭を押さえる仕草をする。
「す、すみません…」
『ごめんなのじゃ』
2人はボクに対して謝る。
「わかったならいい…」
そんな感じで賑やかな二人と共にボクはシェラの元へと向かい始めるのであった。
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元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
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