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現代の常識学
変態、妖狐を見つける。
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「あ~…暇ですねぇ…」
私は欠伸をしながら言う。
ここはエリア1と呼ばれる場所だ。
他の場所と比べるとモンスターはBランク程度とあまり強くは無いが問題は罠の多さにある。
ここはまるで森型のダンジョンであるかのように罠の数が多いのだ。
加えて、魔素溜まりも多く、魔素の過剰摂取が起きやすい。
そのため、死の森とも呼ばれているこの地は並の人間であれば一瞬で魔族に変化するか、死亡するかの2択となる。
だが、私はとある魔法物質を持っているので平気なんだ。
それは魔素変換器と言って、大昔に存在したとされるレグリア様の娘のマルティエ様が作り出した特別な魔法物質で私たち獣人の中でも英雄視されているんだ。
シェラちゃんもとても凄い人なんだけど、私たち獣人の中にはシェラちゃん…じゃなくて、シェテラエンデ様よりもマルティエ様を崇拝するヒトもいるくらいには大英雄様なんだ。
なんたって、私たち獣人が魔法を使えるようになったのもマルティエ様のおかげだと言われているからね。
今では生活に欠かせない便利な生活魔法も外敵から身を守る攻撃魔法も私たち獣人には扱えないのが普通だったらしいし、魔力を持たないからシェテラエンデ様でも魔法を扱えるようには出来なかったんだって!
私は背後から飛びかかってきたウルフを振り向きざまにぶん殴る。
「ギャウウン!」
ウルフの身体は空中で弾き飛ばされて森の暗闇に消えて行く。
「さてと…この辺りかしら?」
私が魔素の噴出口を塞ごうと結界の用意をしていると…
「おやおや。せっかく開けた穴を塞がれてしまっては困りますなぁ!」
Cランクの小鬼のモンスター、ゴブリンを複数体引き連れた魔族が下品な笑みを浮かべながら暗闇から出てくる。
私は無視をして結界の用意を進める。
「おい!ボスが話しかけてるんだぞ!返事くらいせんかいっ!」
ゴブリンの1匹が野次を飛ばす。
私は結界を設置して立ち上がる。
「ふぅ…終わった終わったっと…」
私は振り向きざまに勢いよく右手の手刀を振り払って斬撃を発生させ、近くに居たゴブリンを殲滅する。
「テメェ…振り向きざまに攻撃するとは卑怯だぞ!」
残ったゴブリンの1匹が怒った様子で言う。
「殺し合いに卑怯もクソもあるもんですか…生きるか死ぬか、それだけでしょう?」
私が淡々とそう言うと魔族は下品な笑みを浮かべたまま言う。
「おやおや…躾のなってない犬っころのようですね。余程、おバカな個体だったのでしょうな。」
私は「ふわぁ…」と欠伸をする。
「名前もないようなやつが偉そうに言ったところで響くものも響きませんわね。」
魔族の表情が明らかに曇る。
私は全身の力を抜いて右手を突き出し、クイッと動かして挑発する。
「生きて帰れると思うなよ?」
魔族が魔力を解放すると同時にゴブリンが一斉に飛びかかる。
「斬ッ!」
私は異空間から取り出した特殊な虹色のダイヤモンドで出来た刀で一閃を放って、全てのゴブリンを斬り落とす。
このダイヤモンドはこの世界においてもっとも硬く強いとされる金属のヒヒイロカネよりも硬く強い性質を持っていた。
さらには魔力が一切通らない性質のヒヒイロカネと違い、非常に魔力を通しやすい性質もあるため、剣技を使わなくとも魔法を使う者なら喉から手が出るほど欲しいものだ。
これは本来名前の無い虹色金剛の剣であるが、私が勝手にキラキラブレードと呼んでいる。
実際にキラキラしてるし…
飛びかかったゴブリン達は一瞬で絶命しており、苦痛を感じた様子もないことから、とてつもなく素早い太刀筋だったのだとわかる。
「死ねぇ!」
魔族が巨大化させた拳で殴りかかる。
「ほい!」
「パァン!」と小気味よい音が拳の軌道を逸らして空振りにしたことを理解させる。
「な…なんだ…今のは…魔法か?」
魔族が魔法だと思ったもの。
それはメイリーンの右手から繰り出された裏拳の事だが、その動きは到底ヒトがしていいような動き方ではなかった。
まるで時を飛ばしたかのように瞬時に突き出された拳に裏拳で受け流しながら振り払ったのだ。
そして、振り切ったと同時に元の姿勢に戻る。
この間、僅か0.01秒にもならないほどの短時間だ。
「残念ながら、私は魔法が使えないですわ。本来、私の拳は玉響の一時ですら、捉えることなど出来ないのです。その辺の名もない雑種程度に捉えられるはずもない。」
メイリーンが刀を鞘に納める動作をすると同時に魔族の身体がボロボロと崩れる。
「私の絶技:魂響斬は、玉響の一時で八百万の刃を放つ技…人の技は極めれば極めるほどに魔法のような力を得るのです。痛みすら感じず、死すら理解しないままにお前は崩れ落ちるのです。私の職業のケンセイとは、拳聖であり、剣聖でもあるのだから…」
私は霧状に崩壊し、魔石だけとなった魔族を見る。
「とは言っても、死人に口なし…ですね。まあ、死んでるので聞く耳もありませんが…」
私は魔石を回収する。
「さてと…一番厄介そうなものは片づけましたし、軽く見回りして帰りますかぁ!」
私は見回り最中に見かけたモンスターを片っ端からやっつけながら、森の中を移動する。
「ん?」
私は草むらの影で何かが動いたのを見つける。
「多分この辺ですけど…」
「あっ…」
そんな間抜けな声が聞こえたかと思うと頭上から銀色の毛並みの妖狐族の獣人が落ちてくるのが見えた。
私はそれが自分の頭に落ちてくる前に受け止める体勢を取り、受け止める。
妖狐族の獣人は体をギュッと小さくさせて目を閉じていた。
「…?」
妖狐族の獣人が恐る恐る目を開ける。
私はその瞳を見て身体中に電撃が走ったような衝撃を受けた。
「か…」
そして、私は溢れ出る心を叫ぶ。
「可愛い~!なんて可愛さなの!こんな可愛い生物が居てもいいのか?!こんなの可愛過ぎて死んじまうよぉ!誰か医者をっ!私の心臓が弾け飛びそうなんです~!って、ここには私しか居らんやろがいっ!はぁ~…可愛さが押し寄せて来てもうダメですわ~!」
「ヒイッ?!な、なんなんですかぁ?!」
妖狐族の獣人は飛び降りるようにして私の腕から離れる。
輝く銀色の長い髪と警戒心MAXと言いたげに髪色と同じく銀色の毛が逆だってモッフモフになった1本の長い尻尾に今にも泣きそうなほど涙の溜まったルビーのような瞳の獣人だ。
顔はキツネと人間を足して2で割ったような顔をしており、怖さを紛らわすかのように白い歯を剥き出しにして威嚇していた。
「君、可愛いね!お姉さんの子にならない?てか、お姉さんと一緒に冒険者になろうよ!」
そして、メイリーンの反応を見てわかるようにこの獣人は女の子だ。
身長は人間の5歳児ほどでとても低く、胸は僅かに膨らみが見える程度だった。
全身が銀色の体毛に覆われており、手には肉球があった。
体毛は野生生物ならついてて当たり前な程度の汚れ程度だった。
「い…いや…で…す…」
妖狐族の少女は逃げられないと思いつつも隙を伺っていた。
「え~…じゃあ、性的に食べちゃうけど…どうする?」
「ヒェッ…怖いよぉ…馬鹿ハラミを追いかけなければ良かったなぁ…」
妖狐族の少女は怯えながらもしっかりと言いたいことを言う。
「そのハラミって子を探せばいいの?」
「えっ…あ…その…」
私が首を傾げていると少女は泣きそうになりながらも言う。
「ハラミはユキの友達なんですけど…数日前に突然村を飛び出したっきり戻ってこないんです…だから、ユキが探しに行こうかと…思って…その…」
私は少女の言葉に気を引き締める。
メイリーンの雰囲気が突然変わった事に少女が戸惑いを見せる。
「なら、この森で探すのはやめた方が良いですよ。もし仮にそのハラミさんが居たとしても死んでいるか、魔族に変化している可能性が高いです。魔法物質…通称:魔法物質を持たないヒトはこの場所では息をする事さえ困難なはずです。貴方の場合は、その白い下着がレリーフアイテムのようですので、魔素を魔力に変換出来ているようですが、本来なら貴方も死んでておかしくないのですよ。」
「んなっ!?」
少女が私の目線に気づいた様子で顔を真っ赤にして胸と股を隠す。
「安心してくださいな。私は生粋のロリコンですけど、嫌なことはしないつもりですので。と言うか、シェラちゃんと言う本命がいますし…」
嘘は言ってない。
実際に私は自分より年下の幼くて可愛い女の子が大好きなのだ。
それこそ、自分のことよりも優先してしまうほどに好きなのだ。
初めはただ小さいものが好きだった。
それがだんだんと可愛さを求め始めた。
そうして、行き着いた先が今のシェラちゃんである。
胸は年齢の割にかなり大きく、大人の標準サイズより少し大きいくらいのサイズ感であり、背が低く、幼い顔立ちが愛おしい。
そして、その立ち振る舞いも歳相応の女の子らしく、可愛らしいし、可愛いの化身と言っても過言ではない。
もちろん、私にとってはカリヤちゃんもティアラちゃんも可愛くて好きだし、体形だけを見るなら、胸が無く、身長も小さめなティアラちゃんが最推しだ。
カリヤちゃんは胸はそれなりにあって、背は高めだけど、シェラちゃんとイチャイチャしてるところとか、とても信頼してるのがわかるし、シェラちゃんといる時の笑顔が犯罪級に可愛過ぎる!
もちろん、シェラちゃんがいない時も可愛いけど、シェラちゃんがいる事でより可愛くなるのが、カリヤちゃんの凄いところなの!
つまり、何が言いたいかと言うとロリは正義であり、可愛いはロリなのです!
「いや、聞いてないですけど…」
少女は目を逸らす。
「まあまあ、良いじゃないですか!ところでハラミさんの特徴とか教えてもらえますか?死んでいたり、魔族になっていた場合に手がかりとなる可能性がありますよ。」
私の明るい声が不快に感じたのだろう。
少女は一瞬顔を顰めて言う。
「…ハラミは私と同じ銀狐族です。今の私とは違って、人間の姿でいることが多いです。尻尾の数は1つ、短い髪型です。」
私は固有能力を発動させて、空気の情報を嗅ぎ分ける。
「了解!じゃあ、行こっか!」
私の鼻は犬の鼻。
それもただの犬の鼻じゃない。
空気があれば、どんな情報も私の鼻によって理解可能なの。
それが私の固有能力:研嗅。
それと空神の賢察による万物の真の姿を見る空神:ホルスの加護もある。
たまたま依頼で出かけていた時に命を助けたホルスの娘のシャクティーの紹介によってホルスの加護を得ることとなったのだ。
まあ、収納状態の魔族に関してはわからないけど、それ以外なら他の五感で得る情報以上の情報が嗅ぎ分けられるし、加護の影響で障害物を無視して遠くを見ることも出来る。
色、姿、身体状態、距離、適性属性など、様々な情報が鼻を通じて脳に流れ込んでくる。
そして、少女の情報からハラミと言う少女のことも嗅ぎとる。
「行くって…?」
少女が首を傾げる。
「ハラミさんのところにですよ。今なら、全力で向かえばギリギリ間に合うはずです。」
「ハラミ、危ないの?!」
「答える暇が無いほどには…」
「わかった」
私が走り始めると少女も二足歩行で走る。
少女が前に出て来て変身能力で妖狐の姿に変身する。
『お姉さん、乗って!お姉さんの指示通りに向かうよ!』
「わかったわ!」
私は妖狐の背中に飛び乗って指示を出す。
「その先の木を10時の方角!200ほど先で1時の方角!その先900ほどの地点にいるはずよ!」
『了解!』
妖狐の走る速度が上がる。
獣人の姿の時よりもはるかに速い速度で走る姿はまるで白き稲妻のようだった。
少しして妖狐が言う。
『お姉さん、そろそろ言われた場所に…!』
妖狐が何かに気がついた様子で言葉を止めた。
「あれがハラミちゃんだね?」
『うん!』
妖狐の少女が言った通りに銀色の毛色の短い髪の少女が黒く変色した左腕を苦しそうに抑えていた。
体には凸凹がなく、どこまでも平坦だった。
尻尾は1本瞳の色は青かった。
『ハラミ!』
「来ちゃダメ!」
ハラミの叫びに妖狐が止まる。
私が妖狐から降りるとハラミが気がついた様子だった。
「お姉ちゃん、その子を連れて早く逃げて!」
ハラミの心からの叫びだと誰が聞いてもわかった。
「…理由だけでも聞かせてもらえるかしら?」
普段の私なら、その可愛い容姿にヒャッハー!していたところだが、ハラミの様子がおかしいので、ヒャッハー!したい心を抑える。
「…私、洗脳を受けてわけも分からないまま、ここまで連れて来られたの。それで左腕に魔物っぽい何かを入れられた。それがここの魔素を吸って私の身体を蝕んでいるの。お願い!このままじゃ、そこの妖狐…ユキちゃんを傷つけちゃう!だから、早くここから逃げて!」
ハラミは泣きそうな顔をして言う。
「…あなたはどうするの?」
「私は…もう助か…らない…と思う…」
『そんなっ!』
ユキが悲しい声を上げる。
私はハラミの目を見る。
「あなたを助けられるかもしれないと言えば、あなたは信じますか?」
『ッ!』
妖狐のユキの尻尾がピンと伸びる。
「…本当にあるなら、私はなんでもするわ。ユキちゃんを悲しませたくは無いもの…」
ハラミの真っ直ぐな視線は強い意志を持っていた。
「なら、私とともに行きましょう。もちろん、ユキさん、あなたにも協力してもらいますよ。」
『もちろんだよ!ハラミを助けられるなら、私も頑張る!』
私は気休め程度にハラミの黒い左腕に私の魔法物質である包帯を巻つける。
「この包帯は魔法物質よ。そこそこ魔素を吸って治療魔法に変換してくれるけど、気休め程度にしかならないとは思うわ。それでも無いよりはマシになるはずよ。」
私はハラミを抱えてユキの背中に飛び乗る。
「ユキさん、お願い出来るかしら?」
『全速前進!だよっ!』
ユキはそう言うと先程よりも速い速度で走る。
私は指示を出す。
『あい!』と元気な声が森の中に響いた。
私は欠伸をしながら言う。
ここはエリア1と呼ばれる場所だ。
他の場所と比べるとモンスターはBランク程度とあまり強くは無いが問題は罠の多さにある。
ここはまるで森型のダンジョンであるかのように罠の数が多いのだ。
加えて、魔素溜まりも多く、魔素の過剰摂取が起きやすい。
そのため、死の森とも呼ばれているこの地は並の人間であれば一瞬で魔族に変化するか、死亡するかの2択となる。
だが、私はとある魔法物質を持っているので平気なんだ。
それは魔素変換器と言って、大昔に存在したとされるレグリア様の娘のマルティエ様が作り出した特別な魔法物質で私たち獣人の中でも英雄視されているんだ。
シェラちゃんもとても凄い人なんだけど、私たち獣人の中にはシェラちゃん…じゃなくて、シェテラエンデ様よりもマルティエ様を崇拝するヒトもいるくらいには大英雄様なんだ。
なんたって、私たち獣人が魔法を使えるようになったのもマルティエ様のおかげだと言われているからね。
今では生活に欠かせない便利な生活魔法も外敵から身を守る攻撃魔法も私たち獣人には扱えないのが普通だったらしいし、魔力を持たないからシェテラエンデ様でも魔法を扱えるようには出来なかったんだって!
私は背後から飛びかかってきたウルフを振り向きざまにぶん殴る。
「ギャウウン!」
ウルフの身体は空中で弾き飛ばされて森の暗闇に消えて行く。
「さてと…この辺りかしら?」
私が魔素の噴出口を塞ごうと結界の用意をしていると…
「おやおや。せっかく開けた穴を塞がれてしまっては困りますなぁ!」
Cランクの小鬼のモンスター、ゴブリンを複数体引き連れた魔族が下品な笑みを浮かべながら暗闇から出てくる。
私は無視をして結界の用意を進める。
「おい!ボスが話しかけてるんだぞ!返事くらいせんかいっ!」
ゴブリンの1匹が野次を飛ばす。
私は結界を設置して立ち上がる。
「ふぅ…終わった終わったっと…」
私は振り向きざまに勢いよく右手の手刀を振り払って斬撃を発生させ、近くに居たゴブリンを殲滅する。
「テメェ…振り向きざまに攻撃するとは卑怯だぞ!」
残ったゴブリンの1匹が怒った様子で言う。
「殺し合いに卑怯もクソもあるもんですか…生きるか死ぬか、それだけでしょう?」
私が淡々とそう言うと魔族は下品な笑みを浮かべたまま言う。
「おやおや…躾のなってない犬っころのようですね。余程、おバカな個体だったのでしょうな。」
私は「ふわぁ…」と欠伸をする。
「名前もないようなやつが偉そうに言ったところで響くものも響きませんわね。」
魔族の表情が明らかに曇る。
私は全身の力を抜いて右手を突き出し、クイッと動かして挑発する。
「生きて帰れると思うなよ?」
魔族が魔力を解放すると同時にゴブリンが一斉に飛びかかる。
「斬ッ!」
私は異空間から取り出した特殊な虹色のダイヤモンドで出来た刀で一閃を放って、全てのゴブリンを斬り落とす。
このダイヤモンドはこの世界においてもっとも硬く強いとされる金属のヒヒイロカネよりも硬く強い性質を持っていた。
さらには魔力が一切通らない性質のヒヒイロカネと違い、非常に魔力を通しやすい性質もあるため、剣技を使わなくとも魔法を使う者なら喉から手が出るほど欲しいものだ。
これは本来名前の無い虹色金剛の剣であるが、私が勝手にキラキラブレードと呼んでいる。
実際にキラキラしてるし…
飛びかかったゴブリン達は一瞬で絶命しており、苦痛を感じた様子もないことから、とてつもなく素早い太刀筋だったのだとわかる。
「死ねぇ!」
魔族が巨大化させた拳で殴りかかる。
「ほい!」
「パァン!」と小気味よい音が拳の軌道を逸らして空振りにしたことを理解させる。
「な…なんだ…今のは…魔法か?」
魔族が魔法だと思ったもの。
それはメイリーンの右手から繰り出された裏拳の事だが、その動きは到底ヒトがしていいような動き方ではなかった。
まるで時を飛ばしたかのように瞬時に突き出された拳に裏拳で受け流しながら振り払ったのだ。
そして、振り切ったと同時に元の姿勢に戻る。
この間、僅か0.01秒にもならないほどの短時間だ。
「残念ながら、私は魔法が使えないですわ。本来、私の拳は玉響の一時ですら、捉えることなど出来ないのです。その辺の名もない雑種程度に捉えられるはずもない。」
メイリーンが刀を鞘に納める動作をすると同時に魔族の身体がボロボロと崩れる。
「私の絶技:魂響斬は、玉響の一時で八百万の刃を放つ技…人の技は極めれば極めるほどに魔法のような力を得るのです。痛みすら感じず、死すら理解しないままにお前は崩れ落ちるのです。私の職業のケンセイとは、拳聖であり、剣聖でもあるのだから…」
私は霧状に崩壊し、魔石だけとなった魔族を見る。
「とは言っても、死人に口なし…ですね。まあ、死んでるので聞く耳もありませんが…」
私は魔石を回収する。
「さてと…一番厄介そうなものは片づけましたし、軽く見回りして帰りますかぁ!」
私は見回り最中に見かけたモンスターを片っ端からやっつけながら、森の中を移動する。
「ん?」
私は草むらの影で何かが動いたのを見つける。
「多分この辺ですけど…」
「あっ…」
そんな間抜けな声が聞こえたかと思うと頭上から銀色の毛並みの妖狐族の獣人が落ちてくるのが見えた。
私はそれが自分の頭に落ちてくる前に受け止める体勢を取り、受け止める。
妖狐族の獣人は体をギュッと小さくさせて目を閉じていた。
「…?」
妖狐族の獣人が恐る恐る目を開ける。
私はその瞳を見て身体中に電撃が走ったような衝撃を受けた。
「か…」
そして、私は溢れ出る心を叫ぶ。
「可愛い~!なんて可愛さなの!こんな可愛い生物が居てもいいのか?!こんなの可愛過ぎて死んじまうよぉ!誰か医者をっ!私の心臓が弾け飛びそうなんです~!って、ここには私しか居らんやろがいっ!はぁ~…可愛さが押し寄せて来てもうダメですわ~!」
「ヒイッ?!な、なんなんですかぁ?!」
妖狐族の獣人は飛び降りるようにして私の腕から離れる。
輝く銀色の長い髪と警戒心MAXと言いたげに髪色と同じく銀色の毛が逆だってモッフモフになった1本の長い尻尾に今にも泣きそうなほど涙の溜まったルビーのような瞳の獣人だ。
顔はキツネと人間を足して2で割ったような顔をしており、怖さを紛らわすかのように白い歯を剥き出しにして威嚇していた。
「君、可愛いね!お姉さんの子にならない?てか、お姉さんと一緒に冒険者になろうよ!」
そして、メイリーンの反応を見てわかるようにこの獣人は女の子だ。
身長は人間の5歳児ほどでとても低く、胸は僅かに膨らみが見える程度だった。
全身が銀色の体毛に覆われており、手には肉球があった。
体毛は野生生物ならついてて当たり前な程度の汚れ程度だった。
「い…いや…で…す…」
妖狐族の少女は逃げられないと思いつつも隙を伺っていた。
「え~…じゃあ、性的に食べちゃうけど…どうする?」
「ヒェッ…怖いよぉ…馬鹿ハラミを追いかけなければ良かったなぁ…」
妖狐族の少女は怯えながらもしっかりと言いたいことを言う。
「そのハラミって子を探せばいいの?」
「えっ…あ…その…」
私が首を傾げていると少女は泣きそうになりながらも言う。
「ハラミはユキの友達なんですけど…数日前に突然村を飛び出したっきり戻ってこないんです…だから、ユキが探しに行こうかと…思って…その…」
私は少女の言葉に気を引き締める。
メイリーンの雰囲気が突然変わった事に少女が戸惑いを見せる。
「なら、この森で探すのはやめた方が良いですよ。もし仮にそのハラミさんが居たとしても死んでいるか、魔族に変化している可能性が高いです。魔法物質…通称:魔法物質を持たないヒトはこの場所では息をする事さえ困難なはずです。貴方の場合は、その白い下着がレリーフアイテムのようですので、魔素を魔力に変換出来ているようですが、本来なら貴方も死んでておかしくないのですよ。」
「んなっ!?」
少女が私の目線に気づいた様子で顔を真っ赤にして胸と股を隠す。
「安心してくださいな。私は生粋のロリコンですけど、嫌なことはしないつもりですので。と言うか、シェラちゃんと言う本命がいますし…」
嘘は言ってない。
実際に私は自分より年下の幼くて可愛い女の子が大好きなのだ。
それこそ、自分のことよりも優先してしまうほどに好きなのだ。
初めはただ小さいものが好きだった。
それがだんだんと可愛さを求め始めた。
そうして、行き着いた先が今のシェラちゃんである。
胸は年齢の割にかなり大きく、大人の標準サイズより少し大きいくらいのサイズ感であり、背が低く、幼い顔立ちが愛おしい。
そして、その立ち振る舞いも歳相応の女の子らしく、可愛らしいし、可愛いの化身と言っても過言ではない。
もちろん、私にとってはカリヤちゃんもティアラちゃんも可愛くて好きだし、体形だけを見るなら、胸が無く、身長も小さめなティアラちゃんが最推しだ。
カリヤちゃんは胸はそれなりにあって、背は高めだけど、シェラちゃんとイチャイチャしてるところとか、とても信頼してるのがわかるし、シェラちゃんといる時の笑顔が犯罪級に可愛過ぎる!
もちろん、シェラちゃんがいない時も可愛いけど、シェラちゃんがいる事でより可愛くなるのが、カリヤちゃんの凄いところなの!
つまり、何が言いたいかと言うとロリは正義であり、可愛いはロリなのです!
「いや、聞いてないですけど…」
少女は目を逸らす。
「まあまあ、良いじゃないですか!ところでハラミさんの特徴とか教えてもらえますか?死んでいたり、魔族になっていた場合に手がかりとなる可能性がありますよ。」
私の明るい声が不快に感じたのだろう。
少女は一瞬顔を顰めて言う。
「…ハラミは私と同じ銀狐族です。今の私とは違って、人間の姿でいることが多いです。尻尾の数は1つ、短い髪型です。」
私は固有能力を発動させて、空気の情報を嗅ぎ分ける。
「了解!じゃあ、行こっか!」
私の鼻は犬の鼻。
それもただの犬の鼻じゃない。
空気があれば、どんな情報も私の鼻によって理解可能なの。
それが私の固有能力:研嗅。
それと空神の賢察による万物の真の姿を見る空神:ホルスの加護もある。
たまたま依頼で出かけていた時に命を助けたホルスの娘のシャクティーの紹介によってホルスの加護を得ることとなったのだ。
まあ、収納状態の魔族に関してはわからないけど、それ以外なら他の五感で得る情報以上の情報が嗅ぎ分けられるし、加護の影響で障害物を無視して遠くを見ることも出来る。
色、姿、身体状態、距離、適性属性など、様々な情報が鼻を通じて脳に流れ込んでくる。
そして、少女の情報からハラミと言う少女のことも嗅ぎとる。
「行くって…?」
少女が首を傾げる。
「ハラミさんのところにですよ。今なら、全力で向かえばギリギリ間に合うはずです。」
「ハラミ、危ないの?!」
「答える暇が無いほどには…」
「わかった」
私が走り始めると少女も二足歩行で走る。
少女が前に出て来て変身能力で妖狐の姿に変身する。
『お姉さん、乗って!お姉さんの指示通りに向かうよ!』
「わかったわ!」
私は妖狐の背中に飛び乗って指示を出す。
「その先の木を10時の方角!200ほど先で1時の方角!その先900ほどの地点にいるはずよ!」
『了解!』
妖狐の走る速度が上がる。
獣人の姿の時よりもはるかに速い速度で走る姿はまるで白き稲妻のようだった。
少しして妖狐が言う。
『お姉さん、そろそろ言われた場所に…!』
妖狐が何かに気がついた様子で言葉を止めた。
「あれがハラミちゃんだね?」
『うん!』
妖狐の少女が言った通りに銀色の毛色の短い髪の少女が黒く変色した左腕を苦しそうに抑えていた。
体には凸凹がなく、どこまでも平坦だった。
尻尾は1本瞳の色は青かった。
『ハラミ!』
「来ちゃダメ!」
ハラミの叫びに妖狐が止まる。
私が妖狐から降りるとハラミが気がついた様子だった。
「お姉ちゃん、その子を連れて早く逃げて!」
ハラミの心からの叫びだと誰が聞いてもわかった。
「…理由だけでも聞かせてもらえるかしら?」
普段の私なら、その可愛い容姿にヒャッハー!していたところだが、ハラミの様子がおかしいので、ヒャッハー!したい心を抑える。
「…私、洗脳を受けてわけも分からないまま、ここまで連れて来られたの。それで左腕に魔物っぽい何かを入れられた。それがここの魔素を吸って私の身体を蝕んでいるの。お願い!このままじゃ、そこの妖狐…ユキちゃんを傷つけちゃう!だから、早くここから逃げて!」
ハラミは泣きそうな顔をして言う。
「…あなたはどうするの?」
「私は…もう助か…らない…と思う…」
『そんなっ!』
ユキが悲しい声を上げる。
私はハラミの目を見る。
「あなたを助けられるかもしれないと言えば、あなたは信じますか?」
『ッ!』
妖狐のユキの尻尾がピンと伸びる。
「…本当にあるなら、私はなんでもするわ。ユキちゃんを悲しませたくは無いもの…」
ハラミの真っ直ぐな視線は強い意志を持っていた。
「なら、私とともに行きましょう。もちろん、ユキさん、あなたにも協力してもらいますよ。」
『もちろんだよ!ハラミを助けられるなら、私も頑張る!』
私は気休め程度にハラミの黒い左腕に私の魔法物質である包帯を巻つける。
「この包帯は魔法物質よ。そこそこ魔素を吸って治療魔法に変換してくれるけど、気休め程度にしかならないとは思うわ。それでも無いよりはマシになるはずよ。」
私はハラミを抱えてユキの背中に飛び乗る。
「ユキさん、お願い出来るかしら?」
『全速前進!だよっ!』
ユキはそう言うと先程よりも速い速度で走る。
私は指示を出す。
『あい!』と元気な声が森の中に響いた。
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