1 / 101
1章 最強中年は敗北を求める
第1話 最強中年は敗北を求める
しおりを挟む
最終コーナーであるヘアピンを抜けてホームストレートに躍り出た。
今日のレースのライバルは10m先。
逆転可能な距離ではあるがドラフティングの恩恵を受けるには遠すぎる。
コーナーからの立ち上がりで、腰を挙げてペダルに力を込める。
サイクルコンピューターが843Wを表示する。
最終周回でへばった体にしては上出来なパワーを立ち上がりでかけられた。
ヘアピンコーナーで時速30kmまで落ちた車速が時速45kmまで一気に上がる。
9m……6m……4m……徐々に距離が詰まる。
時速45km程度で追いつけるって事は、相手も相当疲れてるって事だ。
体格から推測すると相手はオールラウンダーだと思う。
それなら勝つのはスプリンターの私だ。
ゴールまで残り150mーー相手が重い腰を上げてゴールスプリントを始める。
私もすかさず腰を上げてスプリントを開始する。
サイコンの最大パワー欄に975Wと表示された……この程度しかパワーがでないなんてバテすぎだろ!
サラ脚ならホビーレーサーでも上位といえる1300Wのパワーを誇るのにな。
915W……827W……678W……パワーがたったの4秒で600W代まで落ちる。
速度は一瞬時速55kmまで上がったが、パワーの減少に合わせて時速50kmまで下がっている。
それでもライバルの背後から飛び出し隣に並べた。
残り50m……これ以上落ちるな私のパワー!!
足の力だけでは足りない。
腕でバイクを振りながら、上半身の力を広背筋、脊柱起立筋を通して大臀筋に伝える。
もう隣のライバルなど見ている余裕はない。
見据えるのは計測用のセンサーが引かれたゴールライン。
全身が悲鳴を上げ激痛が走る……それでも!!
あと10cm……これでラストだあああああっ!
全力で最後の一踏みを行う。そして、通過したゴールライン。
隣を見ると今日のライバルが悔しがっていた。
あぁ、私が勝ったのだな。
嬉しさがこみ上げるがガッツポーズは取らない。
手放し走行は危険だから禁止されているのだ。
こんな疲れ切った状態では、ガッツポーズどころじゃないってのが本音だけど。
コースから出てゼッケンと計測用のチップを返却してレース仲間の元に戻る。
そして、20分後に張り出されたレース結果をみる。
【ビギナークラス】
9位 中杉 猛士
初の1桁順位だ!
普通の人にとっては一番下のビギナークラスで9位なんて、喜ぶ程の事ではないのだろう。
最後ゴール前で一人追い抜いたけど、9位じゃレースで勝ったとは言えない。
私にとっては嬉しい事なのだ。
ここで真剣に戦う若者達と全力で戦って敗北出来る……それがこの上なく嬉しい。
私だって1年前にロードバイクに出会わなければこんな事は思わなかっただろうーー
*
「落ち着いて下さい部長! 部長が本気だしたら新人が潰れちゃいますよ!!」
部下の主任に注意される。少し仕事で張り切っただけなんだがな。
この程度で潰れるって一体何と戦えるんだ?
仕事には勝ち負けがあるんだよ! そんなひ弱でどうする?
私が新人の頃はパワハラ部長を倒すと言って必死に仕事していたけどな。
社長からも生意気だからあいつの鼻を折ってやれと言われていたくらいだ。
「鼻をへし折ったくらいで俺を倒せると思ったか」と言い返して社長を怒らせたのも良い思い出だ。
39才になって社長が代替わりした頃には部長となり、社内で『最強』と言われる様になった。
社員の誰もが中杉さんに聞けば何でも解決出来ると褒め称える。
だが優越感はない。最近は少し本気で仕事しただけで、周囲の社員がギブアップする。
『最強』とは退屈なものだ……仕事は不完全燃焼で、自宅でも動画投稿サイトで動画をダラダラと見る日々。
そんなある日。オススメ動画に「ゴールスプリント集」というタイトルの動画が表示された。
サムネに写る沢山の自転車競技の選手。選手が何十人も集まっているけどスタート直後の写真かな?
暇だし興味本位で動画を再生した。
再生と同時にサムネに写っていた何十人もの選手が、自転車を振りながら物凄い速度で動き出した。
そして、暴走するバッファローの群の様な集団のままゴールラインを通過した。
なんだよ……この凶暴な競技は! 自転車ってこんな風に走るものだったのか。
表示された速度を見て更に驚愕する。
時速75km……肘がぶつかるくらいに密集しながら時速70km以上の速度で走っていたのか!
しかも自転車で!!
私は運命を感じた。
このスポーツなら……ロードレースなら、今の私の本気を受け止めてくれるのではないか?
『ロードバイクを手に入れたい』
そう思った私は直ぐに近場でロードバイクを売っているお店を探し始めたのであった。
今日のレースのライバルは10m先。
逆転可能な距離ではあるがドラフティングの恩恵を受けるには遠すぎる。
コーナーからの立ち上がりで、腰を挙げてペダルに力を込める。
サイクルコンピューターが843Wを表示する。
最終周回でへばった体にしては上出来なパワーを立ち上がりでかけられた。
ヘアピンコーナーで時速30kmまで落ちた車速が時速45kmまで一気に上がる。
9m……6m……4m……徐々に距離が詰まる。
時速45km程度で追いつけるって事は、相手も相当疲れてるって事だ。
体格から推測すると相手はオールラウンダーだと思う。
それなら勝つのはスプリンターの私だ。
ゴールまで残り150mーー相手が重い腰を上げてゴールスプリントを始める。
私もすかさず腰を上げてスプリントを開始する。
サイコンの最大パワー欄に975Wと表示された……この程度しかパワーがでないなんてバテすぎだろ!
サラ脚ならホビーレーサーでも上位といえる1300Wのパワーを誇るのにな。
915W……827W……678W……パワーがたったの4秒で600W代まで落ちる。
速度は一瞬時速55kmまで上がったが、パワーの減少に合わせて時速50kmまで下がっている。
それでもライバルの背後から飛び出し隣に並べた。
残り50m……これ以上落ちるな私のパワー!!
足の力だけでは足りない。
腕でバイクを振りながら、上半身の力を広背筋、脊柱起立筋を通して大臀筋に伝える。
もう隣のライバルなど見ている余裕はない。
見据えるのは計測用のセンサーが引かれたゴールライン。
全身が悲鳴を上げ激痛が走る……それでも!!
あと10cm……これでラストだあああああっ!
全力で最後の一踏みを行う。そして、通過したゴールライン。
隣を見ると今日のライバルが悔しがっていた。
あぁ、私が勝ったのだな。
嬉しさがこみ上げるがガッツポーズは取らない。
手放し走行は危険だから禁止されているのだ。
こんな疲れ切った状態では、ガッツポーズどころじゃないってのが本音だけど。
コースから出てゼッケンと計測用のチップを返却してレース仲間の元に戻る。
そして、20分後に張り出されたレース結果をみる。
【ビギナークラス】
9位 中杉 猛士
初の1桁順位だ!
普通の人にとっては一番下のビギナークラスで9位なんて、喜ぶ程の事ではないのだろう。
最後ゴール前で一人追い抜いたけど、9位じゃレースで勝ったとは言えない。
私にとっては嬉しい事なのだ。
ここで真剣に戦う若者達と全力で戦って敗北出来る……それがこの上なく嬉しい。
私だって1年前にロードバイクに出会わなければこんな事は思わなかっただろうーー
*
「落ち着いて下さい部長! 部長が本気だしたら新人が潰れちゃいますよ!!」
部下の主任に注意される。少し仕事で張り切っただけなんだがな。
この程度で潰れるって一体何と戦えるんだ?
仕事には勝ち負けがあるんだよ! そんなひ弱でどうする?
私が新人の頃はパワハラ部長を倒すと言って必死に仕事していたけどな。
社長からも生意気だからあいつの鼻を折ってやれと言われていたくらいだ。
「鼻をへし折ったくらいで俺を倒せると思ったか」と言い返して社長を怒らせたのも良い思い出だ。
39才になって社長が代替わりした頃には部長となり、社内で『最強』と言われる様になった。
社員の誰もが中杉さんに聞けば何でも解決出来ると褒め称える。
だが優越感はない。最近は少し本気で仕事しただけで、周囲の社員がギブアップする。
『最強』とは退屈なものだ……仕事は不完全燃焼で、自宅でも動画投稿サイトで動画をダラダラと見る日々。
そんなある日。オススメ動画に「ゴールスプリント集」というタイトルの動画が表示された。
サムネに写る沢山の自転車競技の選手。選手が何十人も集まっているけどスタート直後の写真かな?
暇だし興味本位で動画を再生した。
再生と同時にサムネに写っていた何十人もの選手が、自転車を振りながら物凄い速度で動き出した。
そして、暴走するバッファローの群の様な集団のままゴールラインを通過した。
なんだよ……この凶暴な競技は! 自転車ってこんな風に走るものだったのか。
表示された速度を見て更に驚愕する。
時速75km……肘がぶつかるくらいに密集しながら時速70km以上の速度で走っていたのか!
しかも自転車で!!
私は運命を感じた。
このスポーツなら……ロードレースなら、今の私の本気を受け止めてくれるのではないか?
『ロードバイクを手に入れたい』
そう思った私は直ぐに近場でロードバイクを売っているお店を探し始めたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる