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最終章 最強部長はロードレースでも最強を目指す
第85話 ディバイディング・スプリント・トレイ
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先頭集団は順調に最初の平坦区間を走り終えて、最初の上り区間に突入した。
距離は11kmで標高は663mの中級山岳だ。
他の選手にとっては、ただの通過点でしかない。
だが、今の私にとっては最初の難関だ。
最悪、下りか次の平地区間で追いつけるよう、出来るだけ離されない様にしなければならない。
上り始めは5%程度の緩い斜面だが、1km程度進んだ所で8%程度の区間に突入する。
8%はヒルクライムでは普通の斜度だが、徐々に周囲の選手から遅れ始める。
どうやら、今の実力では斜度8%前後で他の選手と差が出るようだな。
ヒルクライム中に頻繁に出てくる斜度8%程度の坂で、毎回差をつけられたら勝負にならない。
これは克服しなければならない大きな弱点だ。
改めて露呈した弱点だが、だからといって今のレースを諦める訳にはいかないな。
「先頭集団から遅れ始めたけど大丈夫か?」
北見さんが遅れ始めた私を心配する。
私が先頭集団の最後尾まで後退しており、集団から脱落しかけているからだ。
「アシストするので頑張りましょう」
「おう、俺達に任せろ!」
木野さんと利男がアシストすると申し出てくれた。
二人の申し出は、とてもありがたい事だ。
だが、人数の少ないチームメンバーのアシストだけでは追いつけないだろう。
なぜなら、より人数が多い先頭集団の中で遅れたからだ。
集団より人数が少ないチームメンバーのアシストでは、空気低減効果は更に下がる。
空気抵抗低減の効果が薄いヒルクライムでは、自分の力で乗り切るしかない。
「心配ないから先に行ってくれ」
「本当に大丈夫か? 気が付いたらいませんでしたってのは勘弁してくれよ」
北見さんは心配性だな。
私が実力不足だから心配をかけてしまっていると理解している。
だが、これから私がやろうとしている事を実行したら、皆と走りが合わなくて迷惑をかけそうなのだが……
「俺が後ろにつくよ。それなら問題ないだろ?」
東尾師匠が私の後ろにつく事を提案する。
なるほど、師匠は私が何をしようとしているか理解しているようだ。
私の走りを良く理解してくれている。
師匠の実力なら一緒に走って問題ないだろう。
一緒に身に着けた力を使うのだから。
「まぁ、東尾君がついているなら問題はないだろう。先に行ってるからな」
「下りで追いつかなかったら、次の平地区間で待機してるぜ」
「先に行って待ってますよぉ」
北見さん、利男、木野さんの3人が加速して先頭集団に追いつく。
私は先頭集団から、ずるずると距離を開けられ後退していく。
距離は20m程度か……頃合いだな。
「一気に追いつきますよ師匠! ディバイディング・スプリント・トレイ!」
師匠の趣味に合わせて、あえて必殺技を叫ぶ!
下ハンドルを握り、腰を上げて一気に加速する。
師匠の提案で生まれた必殺技のディバイディング・スプリント。
トレイは一番出力が弱い簡易版のスプリントだ。
私の最大出力は1400Wを超えるが、トレイは900W程度に出力を抑えている。
スプリント時間が10秒未満であれば、5分のインターバルで次のスプリントが出来る。
スプリント時間が20秒なら、インターバル時間は15分必要だ。
出力が低いとはいえ、一気に長時間スプリントすると回復に時間がかかってしまう。
そして、5分で次のスプリントが出来るとはいえ、5分おきに連発していれば出力は徐々に落ちていく。
だから、使いどころを考えなければならない。
だから20m……8秒で追いつけるタイミングでスプリントを繰り出したのだ。
私は一気に加速して、先頭集団最後尾に追いつけた。
そして最初の斜度8%区間が終わり、集団最後尾で淡々と走る。
「結構派手にスプリントしていたけど大丈夫か? 体力持つか?」
流石、師匠。
一気に加速した私の速度に合わせて、ついて来てくれていた。
スプリントが苦手な木野さんと北見さんだったら、置き去りにしてしまっただろう。
「大丈夫ですよ。例の連装式のスプリントですから。最初から連発前提で出力を抑えていますから」
「いや、出力を抑えているのは分かっているけど、結構出力高かったよな?」
「最大900W程度なので問題ないですよ」
「いや、最大900Wは低くはないでしょ。木野さんや北見さんの最大出力より高いだろ?」
「そうですね、二人の最大出力よりは高いです。でも、トレイは私にとって一番出力を抑えたスプリントですよ」
「まてまて。トレイっていってたけど、上にデュースとエースがあったりするのか?」
「当然ありますよ。中出力のディバイディング・スプリント・デュースと全開放のディバイディング・スプリント・エース」
「猛士さんの馬鹿力には敵わないな。前から思ってたけど、競輪とかトラック競技のスプリントの方が得意なんじゃないのかな」
「そうかもしれないですね。でも、仲間と一緒に走るロードレースが楽しいのでね」
「それなら楽しくレースを続けるとしますか!」
まだまだレース序盤だ。
先頭集団から脱落するには早い。
付き添いの師匠と一緒に、集団最後尾で走り続けた。
距離は11kmで標高は663mの中級山岳だ。
他の選手にとっては、ただの通過点でしかない。
だが、今の私にとっては最初の難関だ。
最悪、下りか次の平地区間で追いつけるよう、出来るだけ離されない様にしなければならない。
上り始めは5%程度の緩い斜面だが、1km程度進んだ所で8%程度の区間に突入する。
8%はヒルクライムでは普通の斜度だが、徐々に周囲の選手から遅れ始める。
どうやら、今の実力では斜度8%前後で他の選手と差が出るようだな。
ヒルクライム中に頻繁に出てくる斜度8%程度の坂で、毎回差をつけられたら勝負にならない。
これは克服しなければならない大きな弱点だ。
改めて露呈した弱点だが、だからといって今のレースを諦める訳にはいかないな。
「先頭集団から遅れ始めたけど大丈夫か?」
北見さんが遅れ始めた私を心配する。
私が先頭集団の最後尾まで後退しており、集団から脱落しかけているからだ。
「アシストするので頑張りましょう」
「おう、俺達に任せろ!」
木野さんと利男がアシストすると申し出てくれた。
二人の申し出は、とてもありがたい事だ。
だが、人数の少ないチームメンバーのアシストだけでは追いつけないだろう。
なぜなら、より人数が多い先頭集団の中で遅れたからだ。
集団より人数が少ないチームメンバーのアシストでは、空気低減効果は更に下がる。
空気抵抗低減の効果が薄いヒルクライムでは、自分の力で乗り切るしかない。
「心配ないから先に行ってくれ」
「本当に大丈夫か? 気が付いたらいませんでしたってのは勘弁してくれよ」
北見さんは心配性だな。
私が実力不足だから心配をかけてしまっていると理解している。
だが、これから私がやろうとしている事を実行したら、皆と走りが合わなくて迷惑をかけそうなのだが……
「俺が後ろにつくよ。それなら問題ないだろ?」
東尾師匠が私の後ろにつく事を提案する。
なるほど、師匠は私が何をしようとしているか理解しているようだ。
私の走りを良く理解してくれている。
師匠の実力なら一緒に走って問題ないだろう。
一緒に身に着けた力を使うのだから。
「まぁ、東尾君がついているなら問題はないだろう。先に行ってるからな」
「下りで追いつかなかったら、次の平地区間で待機してるぜ」
「先に行って待ってますよぉ」
北見さん、利男、木野さんの3人が加速して先頭集団に追いつく。
私は先頭集団から、ずるずると距離を開けられ後退していく。
距離は20m程度か……頃合いだな。
「一気に追いつきますよ師匠! ディバイディング・スプリント・トレイ!」
師匠の趣味に合わせて、あえて必殺技を叫ぶ!
下ハンドルを握り、腰を上げて一気に加速する。
師匠の提案で生まれた必殺技のディバイディング・スプリント。
トレイは一番出力が弱い簡易版のスプリントだ。
私の最大出力は1400Wを超えるが、トレイは900W程度に出力を抑えている。
スプリント時間が10秒未満であれば、5分のインターバルで次のスプリントが出来る。
スプリント時間が20秒なら、インターバル時間は15分必要だ。
出力が低いとはいえ、一気に長時間スプリントすると回復に時間がかかってしまう。
そして、5分で次のスプリントが出来るとはいえ、5分おきに連発していれば出力は徐々に落ちていく。
だから、使いどころを考えなければならない。
だから20m……8秒で追いつけるタイミングでスプリントを繰り出したのだ。
私は一気に加速して、先頭集団最後尾に追いつけた。
そして最初の斜度8%区間が終わり、集団最後尾で淡々と走る。
「結構派手にスプリントしていたけど大丈夫か? 体力持つか?」
流石、師匠。
一気に加速した私の速度に合わせて、ついて来てくれていた。
スプリントが苦手な木野さんと北見さんだったら、置き去りにしてしまっただろう。
「大丈夫ですよ。例の連装式のスプリントですから。最初から連発前提で出力を抑えていますから」
「いや、出力を抑えているのは分かっているけど、結構出力高かったよな?」
「最大900W程度なので問題ないですよ」
「いや、最大900Wは低くはないでしょ。木野さんや北見さんの最大出力より高いだろ?」
「そうですね、二人の最大出力よりは高いです。でも、トレイは私にとって一番出力を抑えたスプリントですよ」
「まてまて。トレイっていってたけど、上にデュースとエースがあったりするのか?」
「当然ありますよ。中出力のディバイディング・スプリント・デュースと全開放のディバイディング・スプリント・エース」
「猛士さんの馬鹿力には敵わないな。前から思ってたけど、競輪とかトラック競技のスプリントの方が得意なんじゃないのかな」
「そうかもしれないですね。でも、仲間と一緒に走るロードレースが楽しいのでね」
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付き添いの師匠と一緒に、集団最後尾で走り続けた。
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