一途な令嬢は悪役になり王子の幸福を望む

紫月

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切なる願い

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「アリア、今日は良いことでもあったの?」
「あらお母様、お分かりになりまして?」
そんなに顔に出ていたかしら?
「普通に小躍りしてたじゃないか。」
あらやだ、フランツお兄様。
見てたのね。
「私は唸っているアリアを見たのだが。」
お父様、それは鼻歌を歌っていたのです…。
「今日はセフィル様にお逢いできたので、とても嬉しかったのです。」
澄まして言ってみるも、
「なんだ、今日は遠くから眺めてニヤニヤ楽しんだだけじゃなかったのか。」
お、お兄様、あながち間違ってないので、否定できないではないですか……。
家族は私がセフィル様ラブなことを、胸焼けするほど知っている。
ハッキリ言って残念な子を見るレベルだ。

「で?今日は何があったの?」
お母様は優しく問うた。
「大した事ではありません。
ただ、手首の傷を心配してくださっただけです。」
「お前、それって……。」
「お兄様、何も言っておりませんわ。」
公爵家の秘密は例え王太子殿下であろうと話してはいけない。
王太子殿下が国王に即位された後、初めて伝えられる極秘事項なのだ。
一介の王の僕が、王の許可なしに他言していいことではない。
「それならいいが…。」
このことが公になれば、家族も危険に晒されることになるだろう。
何度でも言う。
ウッハウッハのボロ儲けは間違いない。

「なんにしても仲が良いのはいいことだ。
私達は奇跡の血であるとともに、呪われた血なのだからな。」
そうなのだ。
私達公爵家の人間は奇跡の血と引き換えるかのように、愛する人と心から結ばれないといずれ心臓が止まってしまうのだという。
私達は愛がなければ生きていけない。
父は母と出会い、兄はもうすぐ愛する婚約者と結婚することが決まっている。
私は……私の恋は叶うことはない。
いつ止まるとも知れない心臓を抱え、私はあの方の恋の応援をする。
家族にはセフィル様が他のご令嬢を好いていることを、死ぬ瞬間まで言わないつもりだ。
「私は今、とても幸せです。」
私は家族を悲しませないための嘘を貫いてみせる。
そして私が死んでも優しい彼が悲しまないように、私は悪役令嬢を演じきろう。
セフィル様。
どうか私を嫌いになってください。

切に祈るばかりだった。
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