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狐vs狸再び
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程なくしてユーリシア伯爵とサラ様は容疑者として拘束された。
サラ様が度々城に届けていた薬が毒薬と判明したからだ。
私の血以外はセフィル様の口に入らなかったので、今まで発覚しなかった。
なのに何故セフィル様の口に入ってしまったのか。
当日侍女の配置換えがあったという。
セフィル様付きの侍女は王命を受けており、私の血以外は決して飲ませないようにしていたらしい。
だが当日セフィル様付きになった侍女は、サラ様から受け取っている薬をセフィル様の薬と勘違いをし、飲ませてしまったのだ。
王族の身辺を管理する選ばれた侍女の移動。
そんな権限を持つのは王族、並びにその血縁者、公爵家、侯爵家の高位の貴族のみである。
ユーリシア伯爵では侍女の配置換えなどできない。
つまり2人は犯人ではない。
ということは、裏で糸を引いてる者がいるということだ。
伯爵の証言も、名のある薬師から購入し、点数稼ぎに王家に献上しただけなのだという。
薬師も犯人に雇われたのだろう。
セフィル様に毒を盛るために侍女の配置換えができるほどの権力を持ち、かつセフィル様が亡くなることで徳をする人間。
まさかという気持ちはあるが、心当たりがある。
甘ちゃんに見せかけていただけなの?
逸る気持ちを押さえ、私は敵陣に乗り込んでいく。
「君のほうから来てくれるなんて嬉しいね。」
「お惚けにならないでくださいな、アイザック様。」
「なんだ、もうバレちゃったのか。
聡明な王妃がいればこの国も安泰だな。」
証拠もない上に、相手は王族の血縁者だ。
糾弾をし、罪を認めさせるのはかなり困難だ。
だがこのままアイザック様を野放しにはできない。
セフィル様の命がかかっている。
「アリア嬢、いい加減私のものになりなさい。」
「お断り申し上げますわ。
わたくしはセフィル様の婚約者です。」
「彼は君のことなど愛していない。
噂は知っているのだろう?」
知っている。
彼はサラ様を愛している。
「存じ上げております。
でも貴族同士の結婚など、愛のない政略は当たり前ですわ。」
「だが、君は彼を愛している。」
「それがどうしましたの?」
「君は奇跡の血の後継者だね?」
ピクリと指が震えてしまう。
王家の血縁者だから、マクシミリア公爵家の秘密が伝わっているの?
だが認めるわけにはいかない。
「なんの事だか全く分かりませんわ。」
「悔しくないのかい?
彼の為に血を捧げているのに、君自身は見向きもされず、ゆくゆくは心臓が止まってしまう。」
そんなことまで……。
どこから情報が漏れたのかしら?
王と王妃以外公爵家の秘密は知らないはず。
王太子であるセフィル様とて例外ではなく、何も知らされていないというのに……。
「私は君を助けたい。
唯一君が助かるためには、彼の心臓を王家に伝わるこの短剣で刺し、全身にその血を浴びることだ。」
アイザック様は鈍く光る短剣をチラつかせる。
「………その短剣はなんですの?」
「王族の血筋の者の心臓を止める剣だよ。
前王が弟である父に、伝承と共に渡した品だ。
父の目を盗んで短剣を持ち出したんだ。
どうしても君を救いたかった。」
「…………考えさせてくださいませ。」
あ、危ない危ない!
そんな物騒な品物、アイザック様に持たせておくわけにはいかない!
なんとか奪わないと……。
アイザック様は私が迷っていると思ってるはず。
それなら……。
「その剣をお預かりしても?」
「あぁ、構わないよ。」
拍子抜けするほどアッサリと短剣を渡された。
これは………罠?
そう思ったのも束の間だった。
手のひらに短剣が乗った瞬間から頭にモヤがかかったようにボンヤリする。
あれ?
私はここで一体何をしていたのかしら?
「さぁアリア、この剣であいつを殺して、私の妃になりなさい。」
「そう………ですわね……。」
思考がまるで動かない。
でも私がセフィル様を刺さなければいけないことだけは分かる……。
早く行かなきゃ………。
アリアは覚束ない足取りで王宮の長い廊下を歩いてゆく。
王族に立ち入りを許可されたセフィルの婚約者として誰にも疑われることなく、セフィルの自室に向けて。
自分が催眠術をかけられてることにも気づかずに……。
サラ様が度々城に届けていた薬が毒薬と判明したからだ。
私の血以外はセフィル様の口に入らなかったので、今まで発覚しなかった。
なのに何故セフィル様の口に入ってしまったのか。
当日侍女の配置換えがあったという。
セフィル様付きの侍女は王命を受けており、私の血以外は決して飲ませないようにしていたらしい。
だが当日セフィル様付きになった侍女は、サラ様から受け取っている薬をセフィル様の薬と勘違いをし、飲ませてしまったのだ。
王族の身辺を管理する選ばれた侍女の移動。
そんな権限を持つのは王族、並びにその血縁者、公爵家、侯爵家の高位の貴族のみである。
ユーリシア伯爵では侍女の配置換えなどできない。
つまり2人は犯人ではない。
ということは、裏で糸を引いてる者がいるということだ。
伯爵の証言も、名のある薬師から購入し、点数稼ぎに王家に献上しただけなのだという。
薬師も犯人に雇われたのだろう。
セフィル様に毒を盛るために侍女の配置換えができるほどの権力を持ち、かつセフィル様が亡くなることで徳をする人間。
まさかという気持ちはあるが、心当たりがある。
甘ちゃんに見せかけていただけなの?
逸る気持ちを押さえ、私は敵陣に乗り込んでいく。
「君のほうから来てくれるなんて嬉しいね。」
「お惚けにならないでくださいな、アイザック様。」
「なんだ、もうバレちゃったのか。
聡明な王妃がいればこの国も安泰だな。」
証拠もない上に、相手は王族の血縁者だ。
糾弾をし、罪を認めさせるのはかなり困難だ。
だがこのままアイザック様を野放しにはできない。
セフィル様の命がかかっている。
「アリア嬢、いい加減私のものになりなさい。」
「お断り申し上げますわ。
わたくしはセフィル様の婚約者です。」
「彼は君のことなど愛していない。
噂は知っているのだろう?」
知っている。
彼はサラ様を愛している。
「存じ上げております。
でも貴族同士の結婚など、愛のない政略は当たり前ですわ。」
「だが、君は彼を愛している。」
「それがどうしましたの?」
「君は奇跡の血の後継者だね?」
ピクリと指が震えてしまう。
王家の血縁者だから、マクシミリア公爵家の秘密が伝わっているの?
だが認めるわけにはいかない。
「なんの事だか全く分かりませんわ。」
「悔しくないのかい?
彼の為に血を捧げているのに、君自身は見向きもされず、ゆくゆくは心臓が止まってしまう。」
そんなことまで……。
どこから情報が漏れたのかしら?
王と王妃以外公爵家の秘密は知らないはず。
王太子であるセフィル様とて例外ではなく、何も知らされていないというのに……。
「私は君を助けたい。
唯一君が助かるためには、彼の心臓を王家に伝わるこの短剣で刺し、全身にその血を浴びることだ。」
アイザック様は鈍く光る短剣をチラつかせる。
「………その短剣はなんですの?」
「王族の血筋の者の心臓を止める剣だよ。
前王が弟である父に、伝承と共に渡した品だ。
父の目を盗んで短剣を持ち出したんだ。
どうしても君を救いたかった。」
「…………考えさせてくださいませ。」
あ、危ない危ない!
そんな物騒な品物、アイザック様に持たせておくわけにはいかない!
なんとか奪わないと……。
アイザック様は私が迷っていると思ってるはず。
それなら……。
「その剣をお預かりしても?」
「あぁ、構わないよ。」
拍子抜けするほどアッサリと短剣を渡された。
これは………罠?
そう思ったのも束の間だった。
手のひらに短剣が乗った瞬間から頭にモヤがかかったようにボンヤリする。
あれ?
私はここで一体何をしていたのかしら?
「さぁアリア、この剣であいつを殺して、私の妃になりなさい。」
「そう………ですわね……。」
思考がまるで動かない。
でも私がセフィル様を刺さなければいけないことだけは分かる……。
早く行かなきゃ………。
アリアは覚束ない足取りで王宮の長い廊下を歩いてゆく。
王族に立ち入りを許可されたセフィルの婚約者として誰にも疑われることなく、セフィルの自室に向けて。
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