悪役令息の花図鑑

蓮条緋月

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二頁 アジサイの涙

20話 幸福感からの・・・・・・

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 ああ、幸せ~♪
 これだよこれ、この景色を待っていた。俺の唯一の癒し。まじ最高。

 俺は今ガゼボに来ていた。放課後という時間帯にも関わらず人が人がほとんどいない、というかほぼ貸切状態だった。やれ訓練だお茶会だクラブ活動だで多忙の皆様と違って暇人代表のシュヴァリエ様は現在、優雅にお茶を飲んでいます。

「あの管理人のおっちゃん、めちゃくちゃ怯えていたっけ。そんなにシュヴァリエが怖いのか?」

 ここに来る前立ち寄った管理人室でガゼボの管理を担当しているベルデさんにガゼボの花をいくつか摘み取りたいと許可を取りに行ったら何故かめちゃくちゃ怯えられた。過去にシュヴァリエと何かあったんだろうか? だけどシュヴァリエはそういった諍いはほぼ憶えていないので心当たりがないものが多い。息をするように恨みを買っていそうだ。

「…………それにしても静かだな」

 学園特有の賑やかをどこか遠くに感じる。一人になりたい時こういう場所が近くにあると楽だよな。押し花の素材もたくさんあるし。
 ……ではさっそく。
 ベルデさんに貰った園芸鋏で慎重に花を切り取る。あ、ムラサキツユクサあるじゃん。これ割と平だから押し花にしやすいんだよな。
 
 ……夢中になることしばし。花束ができてしまった。ちょっと没頭しすぎたか。でもこの前の自室を埋め尽くした時よりは遥かにマシだろ。
 そろそろ日も暮れそうだし、この辺で切り上げますか。帰るならこの鋏を返さないとだな。その前に花束と化した押し花の材料たちは……リボンで束ねるかね。ベルデさんなら持っているだろうか。まあどうせ鋏返しに行くしその時聞いてみるか。

「そこにいるのは誰ですか?」

 ……ん? なんか知っている声だな。これは振り返ってはいけないような、災いのような……そんな嫌な予感がするのだが。

「振り返ってはいただけませんか?」

 その声に釣られ嫌々振り返り、俺は後悔した。やっぱりアンタか! 
 そこにはキラキラエフェクトがふんだんにあしらわれた美形ーー第二王子エヴェイユがにこやかに立っていた。ああ、ゲームの立ち絵そのままのヤマユリスマイルだ……! 
 だけどゲームのラストを知るからわかる。その笑顔ほど怖いものはない!!!!!
 
「シュヴァリエ公子ではないですか。お久しぶりですね」
「不肖シュヴァリエ・アクナイトがエヴェイユ第二王子殿下にご挨拶申し上げます。お久しぶりです」
「そんなに畏まらないでください。私と貴方の仲ではありませんか」

 アンタとの仲なんて知りませんし知りたくありませんけど!? なんでこんなに早く災厄其のニとご対面しなきゃいけないんだ。因みに其の一は言うまでもなくクラルテだ。

「それよりもシュヴァリエ公子がこのような場所にいるなんて驚きました。散策ですか?」
「そのようなものです」
「そうでしたか。どうやら私は邪魔をしてしまったのかな」
「いいえ、ちょうど帰ろうと思っていたところですので、お気になさらないでください」
「そう言ってくれると嬉しいです。……ところで最近よくリヒトと揉めているようですね」

 エヴェイユの声のトーンが変わった瞬間、俺は自分の思考の甘さに気づく。この男がこんな時間に偶然ここに現れるなんてあり得ない。多分リヒトと諍いを起こしているという情報を得て、確認と牽制のために俺との接触を目論んでいたんだろう。エヴェイユ・イル・ツヴィトークはそういう男だ。側近候補の中でもリヒトとクオーレのことは特に気に入っていた。だから自分を裏切らない限り護る。
 関わりたくないと思った矢先にこれだよ。どうしてこう嫌な相手との接触ばかり増えるんだろう。マジで放っておいてくれよ。

「揉めているわけではありません。ただ互いに意見が異なるというだけです」
「そうでしたか。そのようなことは私もよくあります。すみません。私が反応する話ではありませんでしたね。忘れてください」

 うん、目が全く笑っていないなアンタ。マジで関わりたくないわこの人。

「申し訳ありませんが、所用がございますので」
「それは残念です。次はゆっくり趣味の話でもしましょう。公子の手にある花束についてもお聞きしたいですし」

 次が来ないことを心底祈るよ……って、花束? 
 ……あああっ! 俺左手に花持ったままだった! 嫌すぎる相手の登場ですっかり忘れていたけど! え? 何俺このまま話していたわけ? エヴェイユと? ……最悪。

「御前失礼致します」
「許可します」

 なんとかそれだけ言って俺は足早にエヴェイユの元を立ち去り、姿が完全に見えなくなったところで壁に寄りかかってそのまま座り込む。

「……はあ、勘弁してくれ。なんでよりにもよって花束持っている時に出くわすかな。しかもあのお誘い怖すぎなんだけど」

 アクナイト公爵家は第二王子派ではないからそれだけで警戒する理由に足るけど、エヴェイユ個人の主観としてもアクナイトにはあまりいい感情を抱いていないとストーリー内で説明があった。それどころか一種の憎しみすらある。

「まあ……その原因はあれなんだよな」

 シュヴァリエの記憶とゲームのストーリーを照らし合わせて思いつく出来事は一つだけ。なんであんなことしたんだっけ? 

「……なんでの部分がなぜかいつも曖昧なんだよな。確かにシュヴァリエとして感じていたものがあったはずなのに、肝心なところが思い出せない。いや思い出したところでやっちゃダメなことしているからなんの免罪符にもならんけど」

 そんなだからエヴェイユの怒りを買いまくったんだろうな。あれだ、いじめの加害者と被害者のようなものだ。やった側は憶えていないがやられた側は忘れないってやつ。全員が全員それに該当するわけではないだろうけど、少なくともエヴェイユは該当する。今更謝罪をしようが失ったものは戻ってこない。

「はあ……絶対に関わらないようにしよう。どのルートに入ろうが俺は知らない興味ないどうでもいい。……よし!」

 立ち上がって拳を握る。俺は絶対に関わらない!
 ……それにしてもエヴェイユの奴いくら俺に話があるからってわざわざ探すとは思えないんだけど。気まぐれに散歩することはあるだろうが今は生徒会の仕事をしている時間のはず。……なんか大事なことがあったはずだけど思い出せないな。
 ……まあいいか。さっさと鋏を返してリボンをもらって、作業に取り掛かろう。カルから貰った焔の宝珠も使ってみたいし。


      ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 ……で、ただ鋏を返しに来ただけなのに。
 なんでそんな怯えんだよおっさん!

「どうした?」
「へぁっ!? いえすみませんすみません! 鋏ありがとうございます!」

 へぁっ!? ってどんな声上げてんだこの人。そんな震えていたら椅子から落っこちるぞ。

「……何故怯える」
「え、えーっと、その、お、怯えているわけでは……」
「怯えているだろう。くだらない言い訳をするな」
「すすすすみませんっ!!!!!」

 ついに椅子から降りて土下座した。本当に勘弁してくれ。こんなに怯えられる謂れがないんだけど。だけどなんとかしないと今後に響きそうだ。これからも鋏を借りに来ることになるのに毎回これではお互い余計な疲労を負う。

「このままでは埒があかない。何故私にそんな態度を取るのか話せ」

 無理やり言わせるのは気が引けるけど、ここは必要事項と割り切ろう。そう思って目を向ければあからさまに視線を逸らすベルデさん。

「そ、それは……」

 視線がウヨウヨ動き、実に忙しない。これは話してくれるのは無理そうかな。

「言いたくないのであればいい」
「い、いえ! 申し訳ありません! 実は……」

 ベルデさんはゆっくりとことの経緯を話し始めた。その口から飛び出したのはかなり衝撃の内容だった。
 ベルデさんは元々、アクナイト公爵家に庭師として仕えていたらしい。しかし歳を取るにつれあの広大な庭を管理するのが厳しくなり引退を考えていた時、公爵が俺を引き取ってきた。その時俺がベルデさんに声をかけたらしい。その時言われた言葉に奮起してもう少し働こうと思った。けれど今まで通りお仕えすることは肉体的に厳しく、苦渋の思いで公爵に相談したところ、この学園を紹介された。ここならばかなりの融通が利くから体に負担をかけにくいだろうとのことだったらしい。それ以来学園に勤務しながら俺が入学するのを待っていたらしい。しかしいざその姿を目にした時、俺があまりにも冷たい空気を纏っていたことで無様にも恐怖した。恩を返したいと思いながら体が動かずずっと遠目から見るだけにしていた。それなのにさっき俺から声をかけられたことで喜びと申し訳なさでグチャクチャになりあんな態度になってしまった。
 以上がベルデさんの口から出た言葉だ。話し終えたベルデさんはすっかり俯いてしまい表情は見えない。
 シュヴァリエに感謝なんてご大層な感情を向ける相手がいるとは思わなかった。今となっては自分自身でありどこか他人のようでもあるシュヴァリエ・アクナイトは孤立していた。けれどほんの少し視点を変えていれば何か違っていたのかもしれない。

「……私はお前に何かをしたことはない。恩だの申し訳なさだのを向けられても迷惑だ」

 俺の言葉にベルデさんの肩がビクリと震える。

「それでも何かしたいと思うのなら好きにしろ。私は別にお前の心などに関与しない」

 途端にベルデさんは思い切り顔を上げる。その目に浮かぶのは困惑と歓喜。

「貴方様が何もしていないと仰っても私が救われた事実は変わりません。貴方様のお役に立てるのならなんだっていたします」
「その言葉に嘘はないか」
「はい、誓います」
「ならば、これから私の指示に従ってもらう。いいな」
「はい」

 ベルデさんははっきりと口にした。その目にはもう歓喜しか宿っていない。
 ……なんだ。シュヴァリエを純粋に考えてくれる人、この学園にもいるんじゃん。
 俺は無意識に笑みを浮かべていた。この胸に宿るのはシュヴァリエの感情か俺自身の感情かはわからないけど、決して悪いものじゃない。

「なら早速だが、リボンか何かあるか?」
「はい、ございます」
「ではこの花を縛れ」
「かしこまりました」

 俺の持っていた花束に目を見開いたものの、特に何も聞くことなく、テキパキと花を縛った。……見事だな。

「アクナイト坊っちゃまは……」
「シュヴァリエでいい」
「では、シュヴァリエ様。いつでもお越しくださいませ」
「ああ」

 俺は綺麗に束ねられた花を受け取り、管理室を後にする。良い人だったなベルデさん。時々遊びに来て与太話するのも悪くないかも。
 なんて思いながら俺はのほほんとした気分で寮へと戻る。
 翌日の騒動など知りもしないでーー

 














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