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二頁 アジサイの涙
28話 答え合わせ②
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クラルテは俺の言葉に従い、文字となった模様を読み上げる。模様は蓋の裏側と合わさることで言葉になるよう作られていた。その時点で特注品だとわかる。
さてクラルテの口から紡がれた言葉はーー
「『子爵家如きにはちょうどいい夢だったでしょう?』」
……。
その場の気温が急激に下がった気がした。正確には俺とクラルテ以外の顔つきが思いきり変わった。もう初夏だというのになんだか寒いなぁ……。
俺は知っていたから驚かなかったんだけど。
ゲーム内でイデアルとアラグリアに辿り着いたクラルテは俺のように箱の模様としてカモフラージュされた文字に気づき一切の悪意なく全く読みあげたことでエヴェイユ、リヒト、アウル、イデアルの四名は沈黙。今まさに目の前で起こっている状況そのままになっていた。
……やっぱりここはゲームの世界なんだな。
なんてぼんやり考えていたら俺はエヴェイユの言葉で強制的に引き戻される。
「なかなか面白い文言ですね。しかも古代語とは手の込んでいることで結構ではないですか」
「先ほどのリコリス嬢の発言は覆されますね。こんなすぐにボロが出る証拠を残しておいて馬鹿じゃないですか」
エヴェイユはいつもの笑顔で、リヒトはやや嫌悪を滲ませながらそれぞれ言葉を吐く。あまりにも率直なリヒトはアラグリアに睨まれていたが今回はよくぞ言ってくれたよ。……俺? もちろん無言だとも。だってストーリーで知っているし! それにシュヴァリエ・アクナイトはこの程度のことに興味を抱きはしないのだ。
「オルテンシア公子、文言についてはご存知でしたか?」
「…………いいえ、存じ……ません……」
……エヴェイユよわざわざ聞かんでも顔色でわかるでしょ。事実確認の意味があったのだとしても、能面より白い顔で項垂れている人間に追い討ちかけてくれるな。
俺が静かにドン引きしていると、エヴェイユと視線が絡む。出てこいですね。リョウカイデス。
「シュヴァリエ公子、最初にこの文字を見抜いた貴方は此度の件どのような推察をしていますか?」
なんという爽やかな問いだろう。穏やかな風も相まって、まるで優雅に日向ぼっこをしているような錯覚をしてしまうな~…………チッ!
「……今回の件はリコリス令嬢のお遊戯が拗れたもの、俗に言う痴情のもつれというものでしょう。元々リコリス令嬢はかなり奔放ですし」
「そんな言い方は酷いですわよお従兄様」
酷いのはお前の素行だ。シュヴァリエの記憶が教えてくれているからな。まあ今までは問題にならないように立ち回っていたようだけど、偶然とはいえ証拠の品をエヴェイユたちに見つかったのが運の尽き。
アラグリア・リコリスは尻軽ではないけど男を弄んで愉悦に浸るタイプの人間だ。その上身分も高くリコリスは社交界でも発言権が強い。アラグリア自身も社交界で指折りの美人ということも加わり、自然と令息たちが群がる。そうして群がってきた奴らをあの手この手で転がしてきた正真正銘の悪女。
……なんでこうも関わりたくない連中ばかり寄ってくるんだろう。まあアジサイ理由に首突っ込んだのは自分だけどさぁ。もう少し俺に優しいでき事があってもよくない?
……はあ、とりあえず終わらせるか。
やや投げやりになりながらも俺はアラグリアへと視線を向ける。
「アラグリアひとつ確認だ。そこの編入生が持っている箱、お前が贈ったもので間違いないか?」
「……どうせ違うと言ってもお従兄様は信じませんわよね」
「認めるんだな」
「そうですわよ」
あっさり白状した。イデアルの顔つきがわかりやすく変わった。おい、気絶しても介抱しねえぞ。
「まああまり隠すつもりもありませんでしたし? そもそもなぜ子爵家の者が私と交際できると思っていたのか理解できませんわ」
「自分が侯爵家の人間だからか」
「ええ、そうですわ」
笑みを浮かべながらさらりと言って、俺に挑発的な目を向けてきた。なんだよ、やるか?
「お従兄様だって身の程知らずが声をかけてきたら鬱陶しいでしょう? 立場を自覚させて差し上げただけですわ」
「つまり君は身分差を教えてあげただけだと?」
「ええ、そうですわ。私は侯爵令嬢。王家の一家臣としての役目をこなしているだけですわよ。お従兄様とて同じ立場ではありませんの」
……言ったな? ただ身分差を教えてあげただけだから罪にはならないって言ったよな?
言質取ったり♪
……だけど、エヴェイユの代わりに処罰を与えることも必要なんだよな。あくまでもエヴェイユが学生の範囲で収まる処罰…………あ、あれでいいんじゃね? よし決めた。
「確かにそうだな、君が正しい。私もオルテンシア公子は身の程知らずだと思っていた」
「お従兄様なら判ってくださると思っておりましたわ。今までも身の程知らずを制してきたお従兄様なら私の行動もご理解いただけますでしょう?」
「ああ、私も今までそうしてきた」
「それでしたらーー」
「だから今この場で君のことも制するとしよう」
「……は?」
俺の言葉にぽかんとするアラグリア。なんだよ言質は取っただろうが。何か文句でも?
間抜け面を晒すアラグリアを無視して俺はエヴェイユに向き直る。
「エヴェイユ殿下、物が必要になりました故、少々御前失礼いたします」
「構いませんが、何が必要なのですか?」
「すぐわかりますよ」
「シュヴァリエ様また何をやらかす気ですか?」
俺はリヒトを無視して一礼するとある物を取って戻ってきた。そしてアラグリアとイデアル目掛けて思い切り。
バッシャーン!!!
「きゃっ……!?」
「うわっ……!?」
『!?』
俺は手に持っていた物を投げ捨てる。カランカランと音を立てて転がったのはーーバケツだ。
「シュヴァリエ公子……一体何を……?」
「いきなり何するんですかシュヴァリエ様!」
絶句する周囲に俺は内心スッキリしていた。水ぶち撒けるのって結構楽しいな。アホ面も拝めるし溜飲も下がるし一石二鳥じゃね?
心の中で小躍りしながら俺はエヴェイユに頭を下げる。
「エヴェイユ殿下、この度は身内の不祥事に巻き込んでしまい、申し訳ありません。処罰いたしましたのでどうかこれで収めていただきたく存じます」
俺の言葉にその場にいた全員が息を呑んだ。そうだよね、まさかあのシュヴァリエ・アクナイトがこんな寛大なわけない。それは事実だ。だけどそれはシュヴァリエ・アクナイトの全てじゃない。興味関心がなく傲慢で冷酷と言う点は間違っていない真実だ。けれど今は現代人の俺が入っているし、シュヴァリエも不遜で無情なだけの人間ではないんだよ。そのことは柊紅夏が誰よりも知っている。
俺の言葉にエヴェイユはしばし固まったのち、面白そうに嗤った。
「……聞き届けましょう。今後はこのような不祥事がないようにしてくださいね。リコリス嬢とオルテンシア公子も学園での情事はほどほどに」
「よろしいんですか?」
「おや? 私たちは元々小箱の落とし主を探していただけでしょう? 本来の目的は果たせています。それで充分ではないでしょうか」
「殿下はまたそのようなことを……」
リヒトが頭を抱えるように項垂れる。……真面目も大変だな。面倒回避で良かったくらいに思っておけばいいのに。ある意味損しているわ。……頑張れ次期宰相候補。
そんな愉快な会話をしながらエヴェイユとリヒトはその場を去っていった。
俺はずぶ濡れのアラグリアとイデアルに目を向ける。初夏とはいえそんなポタポタしていたら風邪引きそうだな。頭冷やす意味では良かったんじゃねえの。
「お従兄様……なぜこのようなことを!」
「『立場を判らせてあげるのも上に立つ者の務めだ』と君が言ったのだろう。君はいつから公爵子息より上の立場になったんだ?」
「っ……!?」
俺の指摘にアラグリアは判りやすく青ざめた。おいおい言質取られた自覚なかったのかよ。大丈夫か? 皇族と婚姻可能な身分の令嬢が簡単に言質取られちゃまずいだろ。しかも気づかなかったとか……。
まあ余計なお世話か。
「アラグリア、オルテンシア公子。今後はお互いの接触を禁ずる。これは教師たちにも通達しておく。……アラグリア」
「なんですの……?」
「間違ってもつまらないことは起こすなよ」
「……っ判りましたわ。以前よりも意地悪になられましたわね」
「君よりはマシだ」
「……いつか後悔しますわよ」
「私の知ったことではない」
俺がそう言うとアラグリアは顔を赤くしながら取り巻きを引き連れていなくなった。
…………さて、と。
俺はスッとイデアルを見つめる。こいつには個人的に言いたいことがあるんだよなぁ……? むしろ俺はアラグリアよりもこいつに恨みがある。
「……イデアル・オルテンシア。君には個人的に話がある。明日の放課後、学園裏にあるアジサイ噴水まで来るように」
それだけ言って俺はその場を後にした。
よしやることやった! さっさと帰ってご褒美タイムだー!!!
さてクラルテの口から紡がれた言葉はーー
「『子爵家如きにはちょうどいい夢だったでしょう?』」
……。
その場の気温が急激に下がった気がした。正確には俺とクラルテ以外の顔つきが思いきり変わった。もう初夏だというのになんだか寒いなぁ……。
俺は知っていたから驚かなかったんだけど。
ゲーム内でイデアルとアラグリアに辿り着いたクラルテは俺のように箱の模様としてカモフラージュされた文字に気づき一切の悪意なく全く読みあげたことでエヴェイユ、リヒト、アウル、イデアルの四名は沈黙。今まさに目の前で起こっている状況そのままになっていた。
……やっぱりここはゲームの世界なんだな。
なんてぼんやり考えていたら俺はエヴェイユの言葉で強制的に引き戻される。
「なかなか面白い文言ですね。しかも古代語とは手の込んでいることで結構ではないですか」
「先ほどのリコリス嬢の発言は覆されますね。こんなすぐにボロが出る証拠を残しておいて馬鹿じゃないですか」
エヴェイユはいつもの笑顔で、リヒトはやや嫌悪を滲ませながらそれぞれ言葉を吐く。あまりにも率直なリヒトはアラグリアに睨まれていたが今回はよくぞ言ってくれたよ。……俺? もちろん無言だとも。だってストーリーで知っているし! それにシュヴァリエ・アクナイトはこの程度のことに興味を抱きはしないのだ。
「オルテンシア公子、文言についてはご存知でしたか?」
「…………いいえ、存じ……ません……」
……エヴェイユよわざわざ聞かんでも顔色でわかるでしょ。事実確認の意味があったのだとしても、能面より白い顔で項垂れている人間に追い討ちかけてくれるな。
俺が静かにドン引きしていると、エヴェイユと視線が絡む。出てこいですね。リョウカイデス。
「シュヴァリエ公子、最初にこの文字を見抜いた貴方は此度の件どのような推察をしていますか?」
なんという爽やかな問いだろう。穏やかな風も相まって、まるで優雅に日向ぼっこをしているような錯覚をしてしまうな~…………チッ!
「……今回の件はリコリス令嬢のお遊戯が拗れたもの、俗に言う痴情のもつれというものでしょう。元々リコリス令嬢はかなり奔放ですし」
「そんな言い方は酷いですわよお従兄様」
酷いのはお前の素行だ。シュヴァリエの記憶が教えてくれているからな。まあ今までは問題にならないように立ち回っていたようだけど、偶然とはいえ証拠の品をエヴェイユたちに見つかったのが運の尽き。
アラグリア・リコリスは尻軽ではないけど男を弄んで愉悦に浸るタイプの人間だ。その上身分も高くリコリスは社交界でも発言権が強い。アラグリア自身も社交界で指折りの美人ということも加わり、自然と令息たちが群がる。そうして群がってきた奴らをあの手この手で転がしてきた正真正銘の悪女。
……なんでこうも関わりたくない連中ばかり寄ってくるんだろう。まあアジサイ理由に首突っ込んだのは自分だけどさぁ。もう少し俺に優しいでき事があってもよくない?
……はあ、とりあえず終わらせるか。
やや投げやりになりながらも俺はアラグリアへと視線を向ける。
「アラグリアひとつ確認だ。そこの編入生が持っている箱、お前が贈ったもので間違いないか?」
「……どうせ違うと言ってもお従兄様は信じませんわよね」
「認めるんだな」
「そうですわよ」
あっさり白状した。イデアルの顔つきがわかりやすく変わった。おい、気絶しても介抱しねえぞ。
「まああまり隠すつもりもありませんでしたし? そもそもなぜ子爵家の者が私と交際できると思っていたのか理解できませんわ」
「自分が侯爵家の人間だからか」
「ええ、そうですわ」
笑みを浮かべながらさらりと言って、俺に挑発的な目を向けてきた。なんだよ、やるか?
「お従兄様だって身の程知らずが声をかけてきたら鬱陶しいでしょう? 立場を自覚させて差し上げただけですわ」
「つまり君は身分差を教えてあげただけだと?」
「ええ、そうですわ。私は侯爵令嬢。王家の一家臣としての役目をこなしているだけですわよ。お従兄様とて同じ立場ではありませんの」
……言ったな? ただ身分差を教えてあげただけだから罪にはならないって言ったよな?
言質取ったり♪
……だけど、エヴェイユの代わりに処罰を与えることも必要なんだよな。あくまでもエヴェイユが学生の範囲で収まる処罰…………あ、あれでいいんじゃね? よし決めた。
「確かにそうだな、君が正しい。私もオルテンシア公子は身の程知らずだと思っていた」
「お従兄様なら判ってくださると思っておりましたわ。今までも身の程知らずを制してきたお従兄様なら私の行動もご理解いただけますでしょう?」
「ああ、私も今までそうしてきた」
「それでしたらーー」
「だから今この場で君のことも制するとしよう」
「……は?」
俺の言葉にぽかんとするアラグリア。なんだよ言質は取っただろうが。何か文句でも?
間抜け面を晒すアラグリアを無視して俺はエヴェイユに向き直る。
「エヴェイユ殿下、物が必要になりました故、少々御前失礼いたします」
「構いませんが、何が必要なのですか?」
「すぐわかりますよ」
「シュヴァリエ様また何をやらかす気ですか?」
俺はリヒトを無視して一礼するとある物を取って戻ってきた。そしてアラグリアとイデアル目掛けて思い切り。
バッシャーン!!!
「きゃっ……!?」
「うわっ……!?」
『!?』
俺は手に持っていた物を投げ捨てる。カランカランと音を立てて転がったのはーーバケツだ。
「シュヴァリエ公子……一体何を……?」
「いきなり何するんですかシュヴァリエ様!」
絶句する周囲に俺は内心スッキリしていた。水ぶち撒けるのって結構楽しいな。アホ面も拝めるし溜飲も下がるし一石二鳥じゃね?
心の中で小躍りしながら俺はエヴェイユに頭を下げる。
「エヴェイユ殿下、この度は身内の不祥事に巻き込んでしまい、申し訳ありません。処罰いたしましたのでどうかこれで収めていただきたく存じます」
俺の言葉にその場にいた全員が息を呑んだ。そうだよね、まさかあのシュヴァリエ・アクナイトがこんな寛大なわけない。それは事実だ。だけどそれはシュヴァリエ・アクナイトの全てじゃない。興味関心がなく傲慢で冷酷と言う点は間違っていない真実だ。けれど今は現代人の俺が入っているし、シュヴァリエも不遜で無情なだけの人間ではないんだよ。そのことは柊紅夏が誰よりも知っている。
俺の言葉にエヴェイユはしばし固まったのち、面白そうに嗤った。
「……聞き届けましょう。今後はこのような不祥事がないようにしてくださいね。リコリス嬢とオルテンシア公子も学園での情事はほどほどに」
「よろしいんですか?」
「おや? 私たちは元々小箱の落とし主を探していただけでしょう? 本来の目的は果たせています。それで充分ではないでしょうか」
「殿下はまたそのようなことを……」
リヒトが頭を抱えるように項垂れる。……真面目も大変だな。面倒回避で良かったくらいに思っておけばいいのに。ある意味損しているわ。……頑張れ次期宰相候補。
そんな愉快な会話をしながらエヴェイユとリヒトはその場を去っていった。
俺はずぶ濡れのアラグリアとイデアルに目を向ける。初夏とはいえそんなポタポタしていたら風邪引きそうだな。頭冷やす意味では良かったんじゃねえの。
「お従兄様……なぜこのようなことを!」
「『立場を判らせてあげるのも上に立つ者の務めだ』と君が言ったのだろう。君はいつから公爵子息より上の立場になったんだ?」
「っ……!?」
俺の指摘にアラグリアは判りやすく青ざめた。おいおい言質取られた自覚なかったのかよ。大丈夫か? 皇族と婚姻可能な身分の令嬢が簡単に言質取られちゃまずいだろ。しかも気づかなかったとか……。
まあ余計なお世話か。
「アラグリア、オルテンシア公子。今後はお互いの接触を禁ずる。これは教師たちにも通達しておく。……アラグリア」
「なんですの……?」
「間違ってもつまらないことは起こすなよ」
「……っ判りましたわ。以前よりも意地悪になられましたわね」
「君よりはマシだ」
「……いつか後悔しますわよ」
「私の知ったことではない」
俺がそう言うとアラグリアは顔を赤くしながら取り巻きを引き連れていなくなった。
…………さて、と。
俺はスッとイデアルを見つめる。こいつには個人的に言いたいことがあるんだよなぁ……? むしろ俺はアラグリアよりもこいつに恨みがある。
「……イデアル・オルテンシア。君には個人的に話がある。明日の放課後、学園裏にあるアジサイ噴水まで来るように」
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―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
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