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二頁 アジサイの涙
26話 主人公と右腕と悪役と②
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「ーー私の推察は以上だ」
と締め括ったのはいいものの、途中からおそらくは違うだろう理由で険しい顔になっていった二人は沈黙のまま口を開こうとしない。
「……何か言ったらどうなんだ」
「あの……アクナイトさんの推察はわかりました」
でも、と言葉を続けたクラルテは拳を作り肩を震わせた。クラルテの性格を知っている俺はこの後クラルテが言わんとしていることがわかる。というかゲーム内でもこんな展開になった時に言っていたから全く同じじゃなくともそれに似たことを言いそう。
「クラルテ大丈夫か?」
話せなくなったクラルテにアウルが声をかける。
こういう細かなところを見ていると否が応でもゲームの世界なんだと思い知らされる。ほんとうにこの二人は仲がよかったのだ。そんな二人の間になんで俺が入るなんて現象が起こっているのか。おそらくの予想は立てられても認めたくはない。
「もし本当のことだったらひどくないですか? 想いを寄せてくれる相手に……」
「確かに気分の良い話ではないが、アクナイト公子も言っていたようにこれは単なる推察だ」
「でも……!」
このままヒートアップすると余計な時間を使ってしまうな。それだとこの後のことにも支障が出そうだ。……仕方ない。
「世の中には自分以外の人間は自分を楽しませる玩具としか思っていない人間は一定数いる。いちいち相手にするだけ無駄だ」
そう言うとやや責めるような視線がクラルテから向けられる。そんな目で見られても事実だし? それにこんな話はフィクションだろうが現実だろうがありふれている。そんな自分の知らない日常にいちいち腹を立てていたら身が持たないっての。
「ただの推察にそこまで感情を乗せられるのだから才能だな」
「アクナイトさんは……何も思わないんですか?」
「さっき言ったばかりだと言うのにもう忘れたか? いちいち相手をするだけ無駄だと」
「そんなの……!」
ヒートアップしそうになったところでアウルが間に入ってきた。
「少し冷静になれ。アクナイト公子に突っかかっても仕方のない話だ」
「……っ! ……すー……はー…………そう、ですね。アクナイトさん八つ当たりしてすみませんでした」
……わー素直。なんかむず痒いんですけど。まあでも話が進みそうだしいっか。
「……ふん、さっさと行くぞ」
歩き出した俺と並ぶように二人が続く。できればもう少し離れてくれませんかねお二人さん? というかクラルテの目が若干濡れているのはなんだ? 泣きそうになって慌てて袖を使ったのか? 微妙に袖に染みがついているから多分そうだな。この程度で涙を流せるんだからほんとうに感情豊かなんだな。
まあいいや。そんなことよりも今はお目当ての人物がまだ寮の中にいるかが問題だ。ゲームの時間軸に比べて早く動いているからできれば見つかってほしいんだけど……。
………………って、なんでこんなこと考えているんだ! 俺の目的はあくまでも思う存分趣味に勤しむためにシュヴァリエの悲劇を回避しそうとしているだけで、ストーリーにはなるだけ首を突っ込まないようにしていたよな!? 今回は腹黒野郎の命令があったからっていうのと、花が踏み荒らされていたのが許せないからってことで動いているだけで本来は絶対に関わるべきではないんだぞ! わかっているのか、しっかりしろ俺!
いつの間にかひとりで唸っていたらしい俺は誰かに肩を叩かれたことで我に返った。
「アクナイト公子、大丈夫か? 具合が悪いのなら切り上げるが」
見るとクラルテも心配そうにこちらを見ていた。……うわ、俺めっちゃ怪しい奴になってたじゃん。そりゃいきなり自分の世界に入り込んで唸っていたら声かけるわな。……ここはひとまず、誤魔化そう。
「いえ、そういうわけではありません。どうぞお気遣いなく。先に言っておきますが、かの人物が寮にいるという保証はありません。無駄足になってしまうこともあるでしょう。その辺りは私の責任ではありませんのでご了承を」
「そんなのアクナイトさんのせいには絶対にならないので大丈夫ですよ!」
「クラルテの言うとおりだ。そもそも元はと言えばこちらの事情にアクナイト公子を強引に引き摺り込んだようなもの。にも関わらず貴方のせいになどしないさ」
「……そうですか。ならば結構です」
……なんかさっきの言葉だと二人が人のせいにするような無責任な人物って揶揄したとも取れそう。……できるだけシュヴァリエの言動を壊さず、かつ上手い言い方考えないとダメだな。特に今の俺は公爵子息だ。下手に揚げ足取られかねない発言をしたら自分の首を絞めかねん。
そうこうしているうちに、ヴィオレ寮にたどり着いた。ほんといつ見ても無駄に金かけているよな。平民に恵めこんちくしょう!
「ここがヴィオレ寮……」
建物を見上げてクラルテが感嘆の声を漏らす。アウルも初めて見たようで興味深そうに眺めていた。まあ用事がなければ他寮なんか行く機会ないし、各寮ごとに雰囲気違うから好奇心をくすぐられるのも無理ないか。
ヴィオレ寮の色彩は紫と黄を基調としていてその周りには数種類のトリカブトが植えられている。トリカブトは言わずもがな触るな危険。
……というかあんたらいつまで眺めるつもりだ、さっさと入れ。
「早く入ってください」
「! すまない、つい見惚れてしまった」
「ごめんなさいっ!」
やっと動き出した二人を尻目に目的の人物の部屋へ向かった。もし居なかったら面倒だな。
扉の外にある名札を確認してノックをする。
「失礼、シュヴァリエ・アクナイトだ。いるか?」
……返事がない。まさかこの寮の中で一番身分の高い人物の訪問に居留守を使うはずないと思い、念のためもう一度ノック。……お返事なし。
「居ないのか?」
首を傾げた時、取っ手付近を見ると鍵がかかっていなかった。
「アクナイト公子、如何した?」
俺はアウルの言葉を無視して扉を開けるとーー
「な、なにこれっ……!?」
「っ……!」
開け放たれた部屋の惨状にクラルテが声を震わせた。隣ではアウルも言葉を失っている。
まるで強盗にでも遭ったかのように散らかった室内、締め切ったカーテンの隙間から微妙に漏れ出る陽光が不気味に室内を照らしている。そして大量のアジサイが無残に散らされ床に敷き詰められていた。
よくもやってくれたな……って、この光景は…………くそ、マジかよ!!!
そう思った時にはすでに走り出していた。驚いたクラルテとアウルの声が背後から飛んでくるが構っている場合じゃない。どうせ追いかけてくるだろ。それよりも……!
全速力で走る俺を道行く生徒が驚愕の眼差しで見てくるがどうでもいい。
あの室内の様子はゲームの背景画面であった! てことはこの後にあるのはアレだ。全く大筋はゲーム通りでなんか訳わかんないけど苛々してきたわ! もう絶対関わってたまるかクソがっ! ……間に合え! もしあんなことになれば俺はーー
「確か……あの背景の場所は……こっちか!」
ひたすら例の場所を目指し進んだ先では、
「ああ、もう!」
今まさにゲーム通りの状況が起ころうとしていた。俺は間髪入れずに間に滑り込む。そしてーー
パシンッ……!
乾いた音がその場に響いた。
『なっ……!?』
前方と後方、そしてやや遠くから驚きと困惑の声が被る。……あ、クラルテとアウルが追いついた。…………なんか知らんけどエヴェイユとリヒトもいるし。いやゲーム内でもいたから、これが正解なのか。
「アクナイト公子!/アクナイトさん」
なんとか追いついてきたアウルとクラルテ、リヒトとエヴェイユが状況を見るなり困惑の眼差しを俺に向ける。そして俺の前と後ろにいる人物を交互に見ると深くため息をついた。
「シュヴァリエ公子。これは一体どういうことでしょう?」
「見たままですよ殿下。不本意ですが此度の件の主とその元凶の諍いを止めさせていただきました」
そう言いながら俺は後にいる人物へ目を向ける。
「部屋にいないと思ったらこんなところにいたのかイデアル・オルテンシア。それから……」
ゆっくりと視線を移し、今度は前方に立つ女の方へ向き直る。
「やっぱりお前だったなアラグリア・リコリス」
そこには元アクナイト公爵夫人を想起させる面差しの令嬢ーー俺の従兄妹が立っていた。
と締め括ったのはいいものの、途中からおそらくは違うだろう理由で険しい顔になっていった二人は沈黙のまま口を開こうとしない。
「……何か言ったらどうなんだ」
「あの……アクナイトさんの推察はわかりました」
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「クラルテ大丈夫か?」
話せなくなったクラルテにアウルが声をかける。
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「もし本当のことだったらひどくないですか? 想いを寄せてくれる相手に……」
「確かに気分の良い話ではないが、アクナイト公子も言っていたようにこれは単なる推察だ」
「でも……!」
このままヒートアップすると余計な時間を使ってしまうな。それだとこの後のことにも支障が出そうだ。……仕方ない。
「世の中には自分以外の人間は自分を楽しませる玩具としか思っていない人間は一定数いる。いちいち相手にするだけ無駄だ」
そう言うとやや責めるような視線がクラルテから向けられる。そんな目で見られても事実だし? それにこんな話はフィクションだろうが現実だろうがありふれている。そんな自分の知らない日常にいちいち腹を立てていたら身が持たないっての。
「ただの推察にそこまで感情を乗せられるのだから才能だな」
「アクナイトさんは……何も思わないんですか?」
「さっき言ったばかりだと言うのにもう忘れたか? いちいち相手をするだけ無駄だと」
「そんなの……!」
ヒートアップしそうになったところでアウルが間に入ってきた。
「少し冷静になれ。アクナイト公子に突っかかっても仕方のない話だ」
「……っ! ……すー……はー…………そう、ですね。アクナイトさん八つ当たりしてすみませんでした」
……わー素直。なんかむず痒いんですけど。まあでも話が進みそうだしいっか。
「……ふん、さっさと行くぞ」
歩き出した俺と並ぶように二人が続く。できればもう少し離れてくれませんかねお二人さん? というかクラルテの目が若干濡れているのはなんだ? 泣きそうになって慌てて袖を使ったのか? 微妙に袖に染みがついているから多分そうだな。この程度で涙を流せるんだからほんとうに感情豊かなんだな。
まあいいや。そんなことよりも今はお目当ての人物がまだ寮の中にいるかが問題だ。ゲームの時間軸に比べて早く動いているからできれば見つかってほしいんだけど……。
………………って、なんでこんなこと考えているんだ! 俺の目的はあくまでも思う存分趣味に勤しむためにシュヴァリエの悲劇を回避しそうとしているだけで、ストーリーにはなるだけ首を突っ込まないようにしていたよな!? 今回は腹黒野郎の命令があったからっていうのと、花が踏み荒らされていたのが許せないからってことで動いているだけで本来は絶対に関わるべきではないんだぞ! わかっているのか、しっかりしろ俺!
いつの間にかひとりで唸っていたらしい俺は誰かに肩を叩かれたことで我に返った。
「アクナイト公子、大丈夫か? 具合が悪いのなら切り上げるが」
見るとクラルテも心配そうにこちらを見ていた。……うわ、俺めっちゃ怪しい奴になってたじゃん。そりゃいきなり自分の世界に入り込んで唸っていたら声かけるわな。……ここはひとまず、誤魔化そう。
「いえ、そういうわけではありません。どうぞお気遣いなく。先に言っておきますが、かの人物が寮にいるという保証はありません。無駄足になってしまうこともあるでしょう。その辺りは私の責任ではありませんのでご了承を」
「そんなのアクナイトさんのせいには絶対にならないので大丈夫ですよ!」
「クラルテの言うとおりだ。そもそも元はと言えばこちらの事情にアクナイト公子を強引に引き摺り込んだようなもの。にも関わらず貴方のせいになどしないさ」
「……そうですか。ならば結構です」
……なんかさっきの言葉だと二人が人のせいにするような無責任な人物って揶揄したとも取れそう。……できるだけシュヴァリエの言動を壊さず、かつ上手い言い方考えないとダメだな。特に今の俺は公爵子息だ。下手に揚げ足取られかねない発言をしたら自分の首を絞めかねん。
そうこうしているうちに、ヴィオレ寮にたどり着いた。ほんといつ見ても無駄に金かけているよな。平民に恵めこんちくしょう!
「ここがヴィオレ寮……」
建物を見上げてクラルテが感嘆の声を漏らす。アウルも初めて見たようで興味深そうに眺めていた。まあ用事がなければ他寮なんか行く機会ないし、各寮ごとに雰囲気違うから好奇心をくすぐられるのも無理ないか。
ヴィオレ寮の色彩は紫と黄を基調としていてその周りには数種類のトリカブトが植えられている。トリカブトは言わずもがな触るな危険。
……というかあんたらいつまで眺めるつもりだ、さっさと入れ。
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「! すまない、つい見惚れてしまった」
「ごめんなさいっ!」
やっと動き出した二人を尻目に目的の人物の部屋へ向かった。もし居なかったら面倒だな。
扉の外にある名札を確認してノックをする。
「失礼、シュヴァリエ・アクナイトだ。いるか?」
……返事がない。まさかこの寮の中で一番身分の高い人物の訪問に居留守を使うはずないと思い、念のためもう一度ノック。……お返事なし。
「居ないのか?」
首を傾げた時、取っ手付近を見ると鍵がかかっていなかった。
「アクナイト公子、如何した?」
俺はアウルの言葉を無視して扉を開けるとーー
「な、なにこれっ……!?」
「っ……!」
開け放たれた部屋の惨状にクラルテが声を震わせた。隣ではアウルも言葉を失っている。
まるで強盗にでも遭ったかのように散らかった室内、締め切ったカーテンの隙間から微妙に漏れ出る陽光が不気味に室内を照らしている。そして大量のアジサイが無残に散らされ床に敷き詰められていた。
よくもやってくれたな……って、この光景は…………くそ、マジかよ!!!
そう思った時にはすでに走り出していた。驚いたクラルテとアウルの声が背後から飛んでくるが構っている場合じゃない。どうせ追いかけてくるだろ。それよりも……!
全速力で走る俺を道行く生徒が驚愕の眼差しで見てくるがどうでもいい。
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「確か……あの背景の場所は……こっちか!」
ひたすら例の場所を目指し進んだ先では、
「ああ、もう!」
今まさにゲーム通りの状況が起ころうとしていた。俺は間髪入れずに間に滑り込む。そしてーー
パシンッ……!
乾いた音がその場に響いた。
『なっ……!?』
前方と後方、そしてやや遠くから驚きと困惑の声が被る。……あ、クラルテとアウルが追いついた。…………なんか知らんけどエヴェイユとリヒトもいるし。いやゲーム内でもいたから、これが正解なのか。
「アクナイト公子!/アクナイトさん」
なんとか追いついてきたアウルとクラルテ、リヒトとエヴェイユが状況を見るなり困惑の眼差しを俺に向ける。そして俺の前と後ろにいる人物を交互に見ると深くため息をついた。
「シュヴァリエ公子。これは一体どういうことでしょう?」
「見たままですよ殿下。不本意ですが此度の件の主とその元凶の諍いを止めさせていただきました」
そう言いながら俺は後にいる人物へ目を向ける。
「部屋にいないと思ったらこんなところにいたのかイデアル・オルテンシア。それから……」
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病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
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