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三頁 ローダンセの喜劇
40話 やっぱりクズはクズだった!
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やりやがったなあの銭樽野郎……!
俺は今見知らぬ場所に閉じ込められている、というか揺れているので多分目隠しされて馬車の中。まさか実家が自分より上の身分の令息を誘拐するなんて思わないだろ。ふっ……やっぱり胴体から上は見栄えの悪い樽につけた飾りだったか。
なんてそんなことよりもここをどう乗り切るかだけど……。アウルたちには俺に何かあった際のことは伝えてあるからなんとかするだろ。
問題は俺だ。幸い切り札は没収されていない。刑事ドラマやスパイ映画みたいにはうまくできなくても、現代知識と柊紅夏よりは上のシュヴァリエの身体能力でどうにか切り抜けないとならないが、さてどうしたものかな。
向かっているのはおそらく奴の屋敷だ。そして逃げられないように監禁してお楽しみってことになるか、俺を脅して公爵に繋ぐか……奴の性格的に前者だろうけど。
……三日ないし五日。最長そこらまで時間を稼げば奴をお縄につけられるだろうが、それまでは確実に待てない。というかあの銭樽相手だとぶっちゃけ一日持つかどうかも怪しいんだよな。……俺の忍耐が、だけど。
あれの相手を躱してこれを使わってその隙に動けるだけ動く。正面から正々堂々なんてやる価値ないし。
それじゃあ奴の目的地に着くまで作戦を詰めるとしますか!
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
……目が覚めたらそこは知らない天井だった。
どうやら作戦を考えていて寝落ちしたらしい。いや普通そんなことある!? 神経図太すぎるだろ自分。緊張感なさすぎだっつーの。
……で、その呑気さに身を任せていた間に。
ジャラリ。
これだよ。ベッドに鎖で繋がれるという監禁調教系の大定番でございます。本当に予想を外さないというかベタすぎて若干白けました。つーか制服のままだし、例のあれも取られていないとか……身体検査もろくにしていないなこりゃ。
そこらのチンピラでももうちょい頭使えると思うがそれとも俺にはなにもできないとか思ってる? ねえ。三下以下の鉄砲玉にもならない雑魚、塵、万年発情豚、整理されていないエロ本の山。前世で痴漢セクハラ公然猥褻売春盗撮露出強姦の性犯罪オンパレードで逮捕されていそうな下の蓋が外れた肉樽如きに、俺を犯せる資格があると思うなよ? ……ぶっ潰してやるから覚悟しとけ。
「……は、……る?」
……? なんか聞こえてきた。あの野郎戻ってきたのか……って、声うるせえ。おまけに汚いしここまで下品な貴族がいてたまるかってーの!
「おお、お目覚めですかなアクナイト公子」
両腕を広げお客さんを出迎えるように挨拶してくる樽に、俺は無表情で返す。というか自然とこうなった。こいつ相手に最低限の礼儀なんて勿体ないことはしない。そもそもあんなお茶出してきた時点で敵確定だ。こうなった以上徹底抗戦してやるよ。
「これはどういうことだろうか」
「申し訳ありません。ですが公子がいけないのですぞ? わしの勧めるままにお茶を飲んでいてくださればこのような乱暴な真似はせんでした」
「ほう? 乱暴する気はなかったと?」
「もちろんですとも。アクナイト公子のような美しいモノを害するなど」
「媚薬作用があるものを出すのも充分害になると思うがな」
俺が知らないとでも思ったのか、樽野郎は目を見開いて一瞬だけ悔しそうな顔を見せる。
「……よくご存知ですな」
「あの茶から香ってきたのはサフランの花の香りだ。サフランにはいくつかの効能があるが、そのうちのひとつに媚薬効果もあるといわれている」
大体はお湯で抽出するもので、わずか一グラムのサフランに一リットルのお湯で十五分くらいで効果が出るらしい。小学五年の頃に興味本位で調べていたらそんな感じの話を本で知り父さんに聞いたことがあった。それで本当に効くのか試そうと抽出をして両親に出してみた。その時うっかりなんの花からなんの目的で抽出したのか話しちゃって父子揃って母さんに大目玉くらいました。それ以来は薬や毒の効果について知っても試していない。あの時「花の趣味は押し花だけにしなさい。間違っても毒や薬の方向は試そうとしてはだめ」と言われなかったら、俺は今ごろマッドサイエンティストの道を突き進んでいたと思う。だって俺のやろうとしたことって両親を使っての人体実験だぞ? そりゃ怒るわ。数年くらいして自分の行いを客観的に見れるようになった頃に思い出して自分で自分にゾッとしたもの。ほんと押し花っていう平和な方向でよかったと心底思う。
……だけど知識は持っていて損はしてない。
「別の効果の方でお出ししたとは思いませんかな?」
「お前が? あり得ない。若く美しい人間を寝所に引きずり込んで自分の下半身を慰めさせているような下劣な輩が、その効果を持つものを利用しないはずはないだろう。私が気づかないとでも思ったか愚か者」
「……口の利き方にはお気をつけなされアクナイト公子。いくらアクナイト公爵家の後ろ盾があるとはいえ公子はただの子息に過ぎません。わしの方が身分は上ですぞ」
「あいにくとお前如きに尽くす礼儀は持ち合わせていない」
「……生意気な。その無礼な態度をわしが直々に正して差し上げますよ」
「その男を使って三人でするとでも?」
俺は奴の後ろに目を向ける。そこには隠れるようにしてひとりの青年が立っていた。あ~あ、そんなスケスケで面積も少ない宝石まみれの布なんか着せられちゃって可哀想に。おまけに目ぇ死んでいるし。助け出した後のメンタルケアもどうにかしないとダメだな。
「察しが良いですな。その無垢なお身体にたっぷりと大人の行いを仕込んであげますよ。言ったでしょう。我が家の遊びで満足させて差し上げると」
そういや言っていたな。なんか頑張って包んで言っているけど、クラルテはストレートに色々言われていたから相当苦痛だったと思う。あれにはめちゃくちゃ同情した。巻き込まれたくなかったけど結果としてクラルテをこの地獄から救ったということになるのか。なんか微妙な気分だな。
まあ良い。それよりも今はこいつだ。とりあえずめちゃくちゃ気持ち悪いから、そろそろ動くか。
後ろの子、ごめんね。ちょっと酷いことを言うけど、許して。
「その前に……後ろにいるのは平民か? 楽しむのは構わないが、平民の匂いは好きではない」
「これはこれは気が利かず申し訳ない。今すぐ追い出して……」
「だからそいつには香を焚いてもらう」
「香ですか……?」
「匂いが消えさえすれば問題ない」
「いいでしょう。どのような香がお好みで?」
「私は常に気に入ったものを持ち歩く癖がある。……これだ」
俺は首からペンダントを取り出す。これ実はマジックアイテムのひとつでアイテムボックス的な役割を果たすペンダントだ。素晴らしいね魔法の世界は。
そのペンダントから薄紫色のボトルを取り出す。ラベンダーを煮詰めて作った香水だ。それを樽野郎に投げる。
「これを焚けばよろしいのですかな?」
「ああ。ここはお前の屋敷だろう?」
「はい。わしの屋敷です」
「貴族の屋敷に平民の匂いが染みついているなど耐え難い。できればこの屋敷全体に焚いてもらいたいのだが」
「それはさすがに……そもそもこちらの大きさでは屋敷全体など不可能でしょう。何か企んでおられるのかな?」
「私は平民というものが嫌いでな。その平民がいる場所にいるかと思うと吐き気がするというだけだ。それさえ聞いてくれれば私を抱くなりなんなり好きにしろ」
「おや……よろしいのですかな?」
「私も男だ。そういったことには多少興味がある。だが扱いは丁重にしてもらおう。この私を抱くのだから下手だったらコランバイン伯爵家がなくなると思え」
うええぇぇっ……! 自分で言っていて気持ち悪い。正直今すぐにでも胃の中のものを吐き出したいけど、我慢だ我慢。
少し凄むと樽野郎はビクつき、首を縦に振る。
「……いいでしょう。ですが屋敷全体となると足りないように思えます」
「それ一本だけとは言っていない」
ペンダントからさらに追加分を取り出す。そこそこの大きさのものが二十本。
「これで足りるか? わかったならさっさとしろ。じゃないと下賤な匂いで息ができなくなる」
「……わ、わかりました。すぐに焚きましょう。終わったら、楽しみにしていてくださいね」
そう言って奴は男を引き連れて部屋を後にした。
……。
ちったあ疑いやがれ! どう考えても怪しいだろうが。まさか本当に焚いたりしないよな? 普通は言うこと聞いたふりして捨てるよな?
「だけど奴の特性上は……」
かなり賭けなやり方だし、保証はない。その上少々時間がかかる。
漫画のご都合主義を望むとは言わないけど、奇跡が起きたら嬉しいな♪ ……なんつって。
さあ、賭けの結果はーー
俺は今見知らぬ場所に閉じ込められている、というか揺れているので多分目隠しされて馬車の中。まさか実家が自分より上の身分の令息を誘拐するなんて思わないだろ。ふっ……やっぱり胴体から上は見栄えの悪い樽につけた飾りだったか。
なんてそんなことよりもここをどう乗り切るかだけど……。アウルたちには俺に何かあった際のことは伝えてあるからなんとかするだろ。
問題は俺だ。幸い切り札は没収されていない。刑事ドラマやスパイ映画みたいにはうまくできなくても、現代知識と柊紅夏よりは上のシュヴァリエの身体能力でどうにか切り抜けないとならないが、さてどうしたものかな。
向かっているのはおそらく奴の屋敷だ。そして逃げられないように監禁してお楽しみってことになるか、俺を脅して公爵に繋ぐか……奴の性格的に前者だろうけど。
……三日ないし五日。最長そこらまで時間を稼げば奴をお縄につけられるだろうが、それまでは確実に待てない。というかあの銭樽相手だとぶっちゃけ一日持つかどうかも怪しいんだよな。……俺の忍耐が、だけど。
あれの相手を躱してこれを使わってその隙に動けるだけ動く。正面から正々堂々なんてやる価値ないし。
それじゃあ奴の目的地に着くまで作戦を詰めるとしますか!
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……目が覚めたらそこは知らない天井だった。
どうやら作戦を考えていて寝落ちしたらしい。いや普通そんなことある!? 神経図太すぎるだろ自分。緊張感なさすぎだっつーの。
……で、その呑気さに身を任せていた間に。
ジャラリ。
これだよ。ベッドに鎖で繋がれるという監禁調教系の大定番でございます。本当に予想を外さないというかベタすぎて若干白けました。つーか制服のままだし、例のあれも取られていないとか……身体検査もろくにしていないなこりゃ。
そこらのチンピラでももうちょい頭使えると思うがそれとも俺にはなにもできないとか思ってる? ねえ。三下以下の鉄砲玉にもならない雑魚、塵、万年発情豚、整理されていないエロ本の山。前世で痴漢セクハラ公然猥褻売春盗撮露出強姦の性犯罪オンパレードで逮捕されていそうな下の蓋が外れた肉樽如きに、俺を犯せる資格があると思うなよ? ……ぶっ潰してやるから覚悟しとけ。
「……は、……る?」
……? なんか聞こえてきた。あの野郎戻ってきたのか……って、声うるせえ。おまけに汚いしここまで下品な貴族がいてたまるかってーの!
「おお、お目覚めですかなアクナイト公子」
両腕を広げお客さんを出迎えるように挨拶してくる樽に、俺は無表情で返す。というか自然とこうなった。こいつ相手に最低限の礼儀なんて勿体ないことはしない。そもそもあんなお茶出してきた時点で敵確定だ。こうなった以上徹底抗戦してやるよ。
「これはどういうことだろうか」
「申し訳ありません。ですが公子がいけないのですぞ? わしの勧めるままにお茶を飲んでいてくださればこのような乱暴な真似はせんでした」
「ほう? 乱暴する気はなかったと?」
「もちろんですとも。アクナイト公子のような美しいモノを害するなど」
「媚薬作用があるものを出すのも充分害になると思うがな」
俺が知らないとでも思ったのか、樽野郎は目を見開いて一瞬だけ悔しそうな顔を見せる。
「……よくご存知ですな」
「あの茶から香ってきたのはサフランの花の香りだ。サフランにはいくつかの効能があるが、そのうちのひとつに媚薬効果もあるといわれている」
大体はお湯で抽出するもので、わずか一グラムのサフランに一リットルのお湯で十五分くらいで効果が出るらしい。小学五年の頃に興味本位で調べていたらそんな感じの話を本で知り父さんに聞いたことがあった。それで本当に効くのか試そうと抽出をして両親に出してみた。その時うっかりなんの花からなんの目的で抽出したのか話しちゃって父子揃って母さんに大目玉くらいました。それ以来は薬や毒の効果について知っても試していない。あの時「花の趣味は押し花だけにしなさい。間違っても毒や薬の方向は試そうとしてはだめ」と言われなかったら、俺は今ごろマッドサイエンティストの道を突き進んでいたと思う。だって俺のやろうとしたことって両親を使っての人体実験だぞ? そりゃ怒るわ。数年くらいして自分の行いを客観的に見れるようになった頃に思い出して自分で自分にゾッとしたもの。ほんと押し花っていう平和な方向でよかったと心底思う。
……だけど知識は持っていて損はしてない。
「別の効果の方でお出ししたとは思いませんかな?」
「お前が? あり得ない。若く美しい人間を寝所に引きずり込んで自分の下半身を慰めさせているような下劣な輩が、その効果を持つものを利用しないはずはないだろう。私が気づかないとでも思ったか愚か者」
「……口の利き方にはお気をつけなされアクナイト公子。いくらアクナイト公爵家の後ろ盾があるとはいえ公子はただの子息に過ぎません。わしの方が身分は上ですぞ」
「あいにくとお前如きに尽くす礼儀は持ち合わせていない」
「……生意気な。その無礼な態度をわしが直々に正して差し上げますよ」
「その男を使って三人でするとでも?」
俺は奴の後ろに目を向ける。そこには隠れるようにしてひとりの青年が立っていた。あ~あ、そんなスケスケで面積も少ない宝石まみれの布なんか着せられちゃって可哀想に。おまけに目ぇ死んでいるし。助け出した後のメンタルケアもどうにかしないとダメだな。
「察しが良いですな。その無垢なお身体にたっぷりと大人の行いを仕込んであげますよ。言ったでしょう。我が家の遊びで満足させて差し上げると」
そういや言っていたな。なんか頑張って包んで言っているけど、クラルテはストレートに色々言われていたから相当苦痛だったと思う。あれにはめちゃくちゃ同情した。巻き込まれたくなかったけど結果としてクラルテをこの地獄から救ったということになるのか。なんか微妙な気分だな。
まあ良い。それよりも今はこいつだ。とりあえずめちゃくちゃ気持ち悪いから、そろそろ動くか。
後ろの子、ごめんね。ちょっと酷いことを言うけど、許して。
「その前に……後ろにいるのは平民か? 楽しむのは構わないが、平民の匂いは好きではない」
「これはこれは気が利かず申し訳ない。今すぐ追い出して……」
「だからそいつには香を焚いてもらう」
「香ですか……?」
「匂いが消えさえすれば問題ない」
「いいでしょう。どのような香がお好みで?」
「私は常に気に入ったものを持ち歩く癖がある。……これだ」
俺は首からペンダントを取り出す。これ実はマジックアイテムのひとつでアイテムボックス的な役割を果たすペンダントだ。素晴らしいね魔法の世界は。
そのペンダントから薄紫色のボトルを取り出す。ラベンダーを煮詰めて作った香水だ。それを樽野郎に投げる。
「これを焚けばよろしいのですかな?」
「ああ。ここはお前の屋敷だろう?」
「はい。わしの屋敷です」
「貴族の屋敷に平民の匂いが染みついているなど耐え難い。できればこの屋敷全体に焚いてもらいたいのだが」
「それはさすがに……そもそもこちらの大きさでは屋敷全体など不可能でしょう。何か企んでおられるのかな?」
「私は平民というものが嫌いでな。その平民がいる場所にいるかと思うと吐き気がするというだけだ。それさえ聞いてくれれば私を抱くなりなんなり好きにしろ」
「おや……よろしいのですかな?」
「私も男だ。そういったことには多少興味がある。だが扱いは丁重にしてもらおう。この私を抱くのだから下手だったらコランバイン伯爵家がなくなると思え」
うええぇぇっ……! 自分で言っていて気持ち悪い。正直今すぐにでも胃の中のものを吐き出したいけど、我慢だ我慢。
少し凄むと樽野郎はビクつき、首を縦に振る。
「……いいでしょう。ですが屋敷全体となると足りないように思えます」
「それ一本だけとは言っていない」
ペンダントからさらに追加分を取り出す。そこそこの大きさのものが二十本。
「これで足りるか? わかったならさっさとしろ。じゃないと下賤な匂いで息ができなくなる」
「……わ、わかりました。すぐに焚きましょう。終わったら、楽しみにしていてくださいね」
そう言って奴は男を引き連れて部屋を後にした。
……。
ちったあ疑いやがれ! どう考えても怪しいだろうが。まさか本当に焚いたりしないよな? 普通は言うこと聞いたふりして捨てるよな?
「だけど奴の特性上は……」
かなり賭けなやり方だし、保証はない。その上少々時間がかかる。
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さあ、賭けの結果はーー
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