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四頁 カンパニュラの恩恵
51話 夢の検証と守り神の堕落
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いたいいたい…………
なんだこの声は?
イタイイタイ…………
誰だ?
痛い痛い…………
どこが?
助けて…………
なぜ?
堕ちたくない…………
……堕ちる?
助けて…………
ーー異界の人間
…………
……
…
「はっ!?」
唐突に体を起こした俺は次の瞬間に訪れた鋭い頭痛に頭を押さえて顔をしかめた。うぅ……痛い。
徐々に痛みが引いてくると今度はここはどこだという疑問が浮かんだ。確かあの変な煙の直撃食らってぶっ倒れたんだったっけ? それで……たぶん監視に送り込まれた子息たちが寝泊まりする宿に担ぎ込まれたってところか。
「……それにしても、堕ちたくない、ねえ?」
状況がわかったと同時に浮かんできたのは起きる直前まで見ていた夢。内容からしておそらくクラルテと同じものだ。それをなぜ俺が見たんだ? あいつとの共通点は無属性持ちという一点のみ。
「俺……クラルテじゃないんだけどなぁ」
これまでもクラルテが解決するところを俺が割って入ったし今回こそはと思っていたっていうのに、なんであんなもの見せてくるんだよ。
ゲーム通りであればあの夢はフェイバースパイダーに見せられている。自分と波長が合い尚且つ助けられるだけの力を有している者が無作為に選ばれるのだ。その無作為に選ばれた人間こそ主人公ことクラルテである……はずなんだけど。
どーいうわけか俺にまで見せて下さったようで大変困惑しております、はい。
「……はあ、めんどくさ」
王族命令じゃなかったら絶対にやらないよこんなこと。割に合わなさすぎだもの。そもそもこの案件は学生が携わっていいことじゃないだろうが。
再びベッドへ潜り込み鬱々と考え込んでいると控えめにノックがされた。誰だよ。
「アクナイト公子入ってもいいだろうか?」
アウルの声だった。タイミングが絶妙すぎてちょっと怖いな。起きていると確信できていなきゃ言えないセリフだぞそれ。
しかしこのまま黙っていても仕方がないので返事を返してアウルを室内に入れる。その後ろにはクラルテとリヒトの姿もあった。泣いたのかクラルテの目が充血している。
「なんだその目は」
「だ、だって……アクナイトさんはぼ……僕を庇ってくれましたよね……ごめんなさい……こんな目に合わせてしまって…………」
言いながらまた泣きはじめたクラルテの背をリヒトが心配そうに撫でる。別に庇ったわけじゃないんだけどな。ていうか元を辿ればクラルテを祠の前に立たせたの俺だし。ゲームの内容直前に思い出したから面倒なことになって欲しくなかったから引っ張っただけで……まあ結局それで俺が被害被って余計な夢まで見るというさらに面倒なことになったわけだけど。
「庇った覚えはないしそんなつまらない理由でいちいち泣くな鬱陶しい」
「シュヴァリエ様のために泣いてくれているクラルテに随分な物言いですね」
「恩着せがましい物言いはしないほうが賢明だ。そこの平民が必要以上に涙脆いだけであって何を思う必要があると?」
「……シュヴァリエ様には人の心がないんですか?」
「私相手に情で訴えかけるとは愚かとしか言いようがない。私に心がないと言うのなら、倒れて目が覚めたばかりの人間を責める君は配慮がなっていないだろう」
「なっ……!」
「リヒトそこまでにしておけ。この件に関してはアクナイト公子の言い分の方が正しい」
「……っ! それは……申し訳ありませんでした」
流石に失態だと思ったのかリヒトが気まずげに視線を逸らす。まあリヒトの言い分はわかるけど、ぶっ倒れた人間の前で取る行動ではないのも事実。病院で騒ぐなと同じです。
……そんなことより。
「私が倒れた後で何か進展はありましたか?」
状況確認をするために質問すると一瞬で空気が重くなった。……これは予想通りの事態が起こったな。
「アクナイト公子が倒れた直後、祠が内側から破壊され同時に一瞬だけアベリア山から黒い魔力の柱が吹き上がった」
ああ……やっぱりね。
黒い魔力は……聖獣が魔物へと堕ちる段階で最初に起こる現象だ。この現象が起こると次第にその見た目が徐々に変化し最後は本能のままに動く真の魔物になる。聖と魔は背中合わせの真理。きっかけがあれば簡単に堕ちる。
……はあ、どう考えても序盤で出すストーリーじゃないしむしろこのイベント最後に持ってくるべきだろうに、一体何考えていたんだあの運営。
あ~あ……丸いボールに入るモンスターの新作ゲームがやりたいなぁ。あれは非常に真っ当なゲームで世界的にも大人気だし。黒と水色の組織が出てくる世代のリメイクずっと楽しみにしていたのに死んじゃったんだよな俺。
……。
なんて現実逃避している場合じゃない。クライマックス並みのイベントが現在進行形で動いている以上、なんとかしないと冗談抜きで終わる。こうなるから今回こそは絶対に来たくなかったのに。
「編入生に聞きたいことがある」
「なんですか?」
「君が見たという夢の内容を詳しく話せ」
「え? わかりました」
クラルテが語った内容はゲームそのままで特にこれという差もなくて少しだけ安心すると同時に俺は内心深くため息をついた。
「あのアクナイトさん、大丈夫ですか?」
「……どうやら私も君と同じ夢を見たようだ」
「えっ!?」
俺の告白に室内にいた全員の顔が驚愕に染まる。無理もない。俺も信じられないもん。ほんとなんで俺なわけ?
「それは無属性を持っているからか?」
「それも条件のひとつだとは思いますが、単純に波長が合っただけということもあるかと」
「しかしどちらにせよ、事態が事態だ。兄上も交えて早急に今後の動きを決める必要がある」
俺も賛成だ。眷属が完全に魔物へ堕ちたらその力はそこらの魔物とは比べ物にならないほどの被害が出る。今回は是が非でも関わらざるを得ない。ぶっちゃけ自分の命が心底惜しい。ただでさえストーリーに関わってろくに時間が作れていないのにこんなところで死んだりしたら俺の押し花ライフが強制終了されてしまう。せっかく大金持ちの家に生まれたのにまともに贅沢もできないとかどんな罰ゲームだっつーの!
「アクナイト公子すまないが今から起きられるだろうか」
「こんな状況でひとりだけベッドにいるほど厚顔無恥ではない。それにこんな面倒ごとは早く片付けたほうがいいだろう」
「感謝する」
この状況下で知らんふりできるほど神経図太くないぞ。それにまだ間に合うんだから動かなくてどうする。
「途中で具合が悪くなったら遠慮しないで言ってくれ」
「余計なお世話ですよ」
ベッドから降りた俺にアウルが声をかけてきた。確かにちょっとふらふらするけどそこまでじゃないし、アウルに支えてもらうっていうのは色んな意味で怖い。気遣ってくれることには感謝だけど何かの拍子に怪我でもさせたらまずいので謹んで跳ね除けさせていただきます。
そんな良心の痛む会話をしながら部屋を出てクラージュたちの元へ向かう。
部屋に到着するとブリンク村長とクラージュが数名の騎士らと話し合いの最中だった。だがその顔つきは険しく、ブリンク村長は心配になる程顔色が悪い。
「兄上」
「おお来たか。アクナイト公子もう起き上がって平気だろうか?」
「問題ありません」
「それはよかった。無理はしないでください」
「兄上のお耳に入れておきたいことがあります」
「……なんだ?」
兄に促されるままクオーレがクラルテと俺の夢のことを説明をしていく。話が進むにつれてクラージュの顔色がどんどん青ざめていった。
「そんな……じゃあアベリア山の主は……」
「公子様? いかがなさいましたか?」
ブリンク村長は顔色を悪くしたクラージュに何か良くないことが起こっているのでは、とただでさえ悪かった顔色がさらにひどくなり病人の方がまだマシなほどだ。
「ブリンク村長……こうなってしまった以上一刻の猶予もありません。アベリア山の主であるフェイバースパイダーは……」
「堕ちかけている、わよねぇ」
クラージュの説明を乗っ取るように響きのある低い声とともに室内の魔力が一時的に高まり、空間から背の高い人物が現れる。
……ついにでやがった!
「はぁ~い皆さんご機嫌よう♪ 魔塔の主ヴィータ様よ初めまして~♪」
突然現れたのはチュートリアルの案内役としてちょくちょく出てくる魔塔の主ーーヴィータだった。
なんだこの声は?
イタイイタイ…………
誰だ?
痛い痛い…………
どこが?
助けて…………
なぜ?
堕ちたくない…………
……堕ちる?
助けて…………
ーー異界の人間
…………
……
…
「はっ!?」
唐突に体を起こした俺は次の瞬間に訪れた鋭い頭痛に頭を押さえて顔をしかめた。うぅ……痛い。
徐々に痛みが引いてくると今度はここはどこだという疑問が浮かんだ。確かあの変な煙の直撃食らってぶっ倒れたんだったっけ? それで……たぶん監視に送り込まれた子息たちが寝泊まりする宿に担ぎ込まれたってところか。
「……それにしても、堕ちたくない、ねえ?」
状況がわかったと同時に浮かんできたのは起きる直前まで見ていた夢。内容からしておそらくクラルテと同じものだ。それをなぜ俺が見たんだ? あいつとの共通点は無属性持ちという一点のみ。
「俺……クラルテじゃないんだけどなぁ」
これまでもクラルテが解決するところを俺が割って入ったし今回こそはと思っていたっていうのに、なんであんなもの見せてくるんだよ。
ゲーム通りであればあの夢はフェイバースパイダーに見せられている。自分と波長が合い尚且つ助けられるだけの力を有している者が無作為に選ばれるのだ。その無作為に選ばれた人間こそ主人公ことクラルテである……はずなんだけど。
どーいうわけか俺にまで見せて下さったようで大変困惑しております、はい。
「……はあ、めんどくさ」
王族命令じゃなかったら絶対にやらないよこんなこと。割に合わなさすぎだもの。そもそもこの案件は学生が携わっていいことじゃないだろうが。
再びベッドへ潜り込み鬱々と考え込んでいると控えめにノックがされた。誰だよ。
「アクナイト公子入ってもいいだろうか?」
アウルの声だった。タイミングが絶妙すぎてちょっと怖いな。起きていると確信できていなきゃ言えないセリフだぞそれ。
しかしこのまま黙っていても仕方がないので返事を返してアウルを室内に入れる。その後ろにはクラルテとリヒトの姿もあった。泣いたのかクラルテの目が充血している。
「なんだその目は」
「だ、だって……アクナイトさんはぼ……僕を庇ってくれましたよね……ごめんなさい……こんな目に合わせてしまって…………」
言いながらまた泣きはじめたクラルテの背をリヒトが心配そうに撫でる。別に庇ったわけじゃないんだけどな。ていうか元を辿ればクラルテを祠の前に立たせたの俺だし。ゲームの内容直前に思い出したから面倒なことになって欲しくなかったから引っ張っただけで……まあ結局それで俺が被害被って余計な夢まで見るというさらに面倒なことになったわけだけど。
「庇った覚えはないしそんなつまらない理由でいちいち泣くな鬱陶しい」
「シュヴァリエ様のために泣いてくれているクラルテに随分な物言いですね」
「恩着せがましい物言いはしないほうが賢明だ。そこの平民が必要以上に涙脆いだけであって何を思う必要があると?」
「……シュヴァリエ様には人の心がないんですか?」
「私相手に情で訴えかけるとは愚かとしか言いようがない。私に心がないと言うのなら、倒れて目が覚めたばかりの人間を責める君は配慮がなっていないだろう」
「なっ……!」
「リヒトそこまでにしておけ。この件に関してはアクナイト公子の言い分の方が正しい」
「……っ! それは……申し訳ありませんでした」
流石に失態だと思ったのかリヒトが気まずげに視線を逸らす。まあリヒトの言い分はわかるけど、ぶっ倒れた人間の前で取る行動ではないのも事実。病院で騒ぐなと同じです。
……そんなことより。
「私が倒れた後で何か進展はありましたか?」
状況確認をするために質問すると一瞬で空気が重くなった。……これは予想通りの事態が起こったな。
「アクナイト公子が倒れた直後、祠が内側から破壊され同時に一瞬だけアベリア山から黒い魔力の柱が吹き上がった」
ああ……やっぱりね。
黒い魔力は……聖獣が魔物へと堕ちる段階で最初に起こる現象だ。この現象が起こると次第にその見た目が徐々に変化し最後は本能のままに動く真の魔物になる。聖と魔は背中合わせの真理。きっかけがあれば簡単に堕ちる。
……はあ、どう考えても序盤で出すストーリーじゃないしむしろこのイベント最後に持ってくるべきだろうに、一体何考えていたんだあの運営。
あ~あ……丸いボールに入るモンスターの新作ゲームがやりたいなぁ。あれは非常に真っ当なゲームで世界的にも大人気だし。黒と水色の組織が出てくる世代のリメイクずっと楽しみにしていたのに死んじゃったんだよな俺。
……。
なんて現実逃避している場合じゃない。クライマックス並みのイベントが現在進行形で動いている以上、なんとかしないと冗談抜きで終わる。こうなるから今回こそは絶対に来たくなかったのに。
「編入生に聞きたいことがある」
「なんですか?」
「君が見たという夢の内容を詳しく話せ」
「え? わかりました」
クラルテが語った内容はゲームそのままで特にこれという差もなくて少しだけ安心すると同時に俺は内心深くため息をついた。
「あのアクナイトさん、大丈夫ですか?」
「……どうやら私も君と同じ夢を見たようだ」
「えっ!?」
俺の告白に室内にいた全員の顔が驚愕に染まる。無理もない。俺も信じられないもん。ほんとなんで俺なわけ?
「それは無属性を持っているからか?」
「それも条件のひとつだとは思いますが、単純に波長が合っただけということもあるかと」
「しかしどちらにせよ、事態が事態だ。兄上も交えて早急に今後の動きを決める必要がある」
俺も賛成だ。眷属が完全に魔物へ堕ちたらその力はそこらの魔物とは比べ物にならないほどの被害が出る。今回は是が非でも関わらざるを得ない。ぶっちゃけ自分の命が心底惜しい。ただでさえストーリーに関わってろくに時間が作れていないのにこんなところで死んだりしたら俺の押し花ライフが強制終了されてしまう。せっかく大金持ちの家に生まれたのにまともに贅沢もできないとかどんな罰ゲームだっつーの!
「アクナイト公子すまないが今から起きられるだろうか」
「こんな状況でひとりだけベッドにいるほど厚顔無恥ではない。それにこんな面倒ごとは早く片付けたほうがいいだろう」
「感謝する」
この状況下で知らんふりできるほど神経図太くないぞ。それにまだ間に合うんだから動かなくてどうする。
「途中で具合が悪くなったら遠慮しないで言ってくれ」
「余計なお世話ですよ」
ベッドから降りた俺にアウルが声をかけてきた。確かにちょっとふらふらするけどそこまでじゃないし、アウルに支えてもらうっていうのは色んな意味で怖い。気遣ってくれることには感謝だけど何かの拍子に怪我でもさせたらまずいので謹んで跳ね除けさせていただきます。
そんな良心の痛む会話をしながら部屋を出てクラージュたちの元へ向かう。
部屋に到着するとブリンク村長とクラージュが数名の騎士らと話し合いの最中だった。だがその顔つきは険しく、ブリンク村長は心配になる程顔色が悪い。
「兄上」
「おお来たか。アクナイト公子もう起き上がって平気だろうか?」
「問題ありません」
「それはよかった。無理はしないでください」
「兄上のお耳に入れておきたいことがあります」
「……なんだ?」
兄に促されるままクオーレがクラルテと俺の夢のことを説明をしていく。話が進むにつれてクラージュの顔色がどんどん青ざめていった。
「そんな……じゃあアベリア山の主は……」
「公子様? いかがなさいましたか?」
ブリンク村長は顔色を悪くしたクラージュに何か良くないことが起こっているのでは、とただでさえ悪かった顔色がさらにひどくなり病人の方がまだマシなほどだ。
「ブリンク村長……こうなってしまった以上一刻の猶予もありません。アベリア山の主であるフェイバースパイダーは……」
「堕ちかけている、わよねぇ」
クラージュの説明を乗っ取るように響きのある低い声とともに室内の魔力が一時的に高まり、空間から背の高い人物が現れる。
……ついにでやがった!
「はぁ~い皆さんご機嫌よう♪ 魔塔の主ヴィータ様よ初めまして~♪」
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