悪役令息の花図鑑

蓮条緋月

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四頁 カンパニュラの恩恵

58話 新たな眷属候補の誕生

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 拝啓異世界の兄貴、俺は今『はなしゅご』の攻略対象にお姫様抱っこされています。対処法を教えてください。
 ……なんて現実逃避をしてもバチは当たらないと思う。何がどう作用したらこんなことになるんだよ。本来ならクラルテのポジションだろうが。

「辛くはないか?」
「貴方に運ばれていますので問題はありません。それに私を落とすようなことはなさらないでしょうし」
「それは信用してくれていると受け取ってもいいのだろうか?」
「貴方のせいで私が怪我をすればあとが面倒でしょう。そんなものに時間を割きたくはないので」
「それは確かに」
「ですから今後は私にあまり関わらない方がよろしいかと」

 なんて会話しているけど、変な声出してしまわないか気が気でない。今心拍数えっぐいことになっているんだから妙なことはしてくれるな! そして早く着いてくれ。なんとしてでも忘れないと今後の生活に影響が出かねん。頼むからこれ以上変な関わり持ちたくないのですよ。だって考えてみろ? 超至近距離で未成熟な美丈夫の低音イケボを聞かされるんだぞ。しかもお姫様抱っこ状態で。両手が塞がっているから防御もできず、ただイケメンの集中砲火を浴びるわけだ。どうよこれ。もしファンだったら卒倒ものだぞ。シュヴァリエがあまり表情の動かない人間でよかった。じゃないとこいつの前で百面相する事態になっていたはず。

「……君はなぜそうも人を遠ざけようとする?」

 静かな問いだった。動かない顔の裏でプチパニックを起こしていた俺にアウルの声が湯冷ましのように浸透し、落ち着きを取り戻す。
 人を遠ざける、ねえ。あんたらと関わると俺の運命が大変なことになるから、なんて言えるわけないし…………あ。

「人が嫌いだからですよ。それ以外に理由はありません」

 これはシュヴァリエの公式設定のひとつ。彼はその環境故に人間不信に陥っていた。大切な存在などなく、周りは全て敵という認識であったから誰かを陥れても何も感じなかったし、あんなことができたのだ。シュヴァリエが処刑されるまでに至ったのは何もクラルテに度の過ぎた嫌がらせをしたからというだけではない。……ゲーム終盤のシュヴァリエ・アクナイトは、ツヴィトークという国そのものを恨んでいた。

「それは公爵が関係しているのか?」
「他国の人間である貴方に話すことはありません」
「それもそうだな。踏み込みすぎた。忘れてくれ」
「……ふん」

 互いに話題がなくなり、洞窟内にはアウルの足音だけが響く。人一人と卵一個を抱えているというのに全くぶれない体幹を肌で感じながら俺はそっと卵に視線を向ける。……あれ? そういえばゲーム内で浄化が完了した卵って…………ああ!!!

「……オルニス公子」
「どうした?」
「…………卵、孵りそうです」
「……はあ!?」

 アウルに似合わず素っ頓狂な声をあげて俺をガン見し、次いで卵を食い入るように見つめる。

「ほ、本当か?」
「……こんな状況で嘘言ってどうするのです? 現に私の腕に軽い振動が伝わっているのですが」

 事実である。内側から何かがコツコツと叩き外に出ようしている気配が卵を抱く俺の腕に感じるのだ。本当に肝心なところは直前にならないと思い出さないのはどうにかならんのか!
 俺の様子に嘘ではないと伝わったらしく真剣な顔になって俺を抱え直す。

「わかった。……少し揺れるだろうが我慢してくれ」
「落としさえしなければ気にしないので急いでください。さすがにこんなところで産まれてもらっては少し困ります」
「本当に動じないな君は」

 やや呆れとある種の尊敬を込めた眼差しで俺を見下ろし、ほんの少し腕に力を込めて俺を横抱きにしたまま走り出した。だ~れが動じないだって? そんなわけあるか。下半身鉛状態になっている卵を抱えた男が男にお姫様抱っこされるなんて人生でどれだけあるんだっつーの。ないない普通にあり得ない。シュヴァリエになってから奇妙なことばっかり起こるのはなんなんだろう……厄日ならぬ厄生かな?
 っていうか少し揺れるとか言いながら全っ然ぶれないのはなんなんでしょうね。走っている息遣いと心拍音を超間近で聞こえてくるし汗もかいて健康的な筋肉質の体が艶やかにコーティングされていく。つまり何が言いたいかというと…………エ・ロ・い!!! 
 攻略対象が攻略対象している。ファンなら確実に色気に充てられて鼻血吹き出しからの失神確定だ。
 
 頭の中が不純な言葉で埋められ始めている中も卵から殻を破ろうとする音が強くなっている。頼むからもうちょっとがんばってくれ。産まれるなら親の前で産まれてほしい。そう念を込めて産まれようとしている卵をそっと叩く。

「……あとどのくらいで産まれそうなんだ?」
「…………おそらくもう間もなくかと」
「わかった。…………急ぐからしっかり掴まって!」
「言われずとも」

 もはや全力疾走といってもいいような速さで上り坂を駆け上がる。その体力には純粋に称賛を送りたい。半分分けろ。
 
 何とか間に合えと祈りながらとうとう出口が見え、洞窟を出るとそこではフェイバースパイダーが落ち着きなく脚を動かしていて、その周囲にビアンコラーニョが囲みこちらも忙しなく痙攣していた。

「アウル! アクナイトさん! その状態はいったいどうしたんですか!?」
「卵は!?」
「無事だ。それよりもフェイバースパイダーは……」
「突然僕の頭にフェイバースパイダーが話しかけてきたんです! なんでも子どもが産まれると言ってちょっと前からこんな感じで……!」

 どうやらフェイバースパイダー、ちゃんとクラルテに伝達していたよう。といっても何をするでもないんだよなぁ……。できることと言えば無事に産まれてくるよう祈るだけ。

「オルニス公子、アクナイト公子! よくご無事で」
「まったく! ビアンコラーニョたちが突然動き出したかと思ったら一斉に移動するんだもの。何事かと思ったわよ。ついてきてみたらそこのマルチ小僧が卵孵るとか言い出すし」

 どうやら彼らに続いて一緒に残っていたクラージュとヴィータもついてきていたらしい。正直ありがたいわ。
 と思っている間にピシリと今まで以上に大きな音を立てたので俺はアウルの腕を叩いて下ろしてくれるように合図するとアウルは俺をそっと地面に近づける。俺は腕の中にあった卵を下ろそうとする。その直前にフェイバースパイダーが地面に糸を出し、クッションのようなものを即席で作った。俺はその場所に卵を下ろしたと同時にパキンという音を立てて中から白いモフモフの塊がちょこんと姿を現した。

「……産まれた」

 新たな眷属候補の誕生である。
 フェイバースパイダーが我が子に近づき、ぐるぐると音を鳴らす。ビアンコラーニョはその場にまるで跪くように姿勢を低くした。
 その場にいた人間たちは誰もその光景に口を開くことはできなかった。それは人間が決して介入してはならない儀式に思えたから。あの子蜘蛛はこれから洗礼を受けた後に成長し、このアベリア山の新たな主になる。代替わりまではかなり先になるが、この場に居合わせたのはとてつもない幸運だろう。
 産まれた子蜘蛛は親を認識したのか近づこうとするが、フェイバースパイダーはそれを制止した。本当は触れたかっただろうに今の状態のフェイバースパイダーは産まれたばかりの子蜘蛛にとっては毒になってしまう。我が子のために断腸の思いで触れることを禁じたのだ。我が子を止めたフェイバースパイダーは徐に俺へと視線を向けた。

 ——……人間、触る。

 …………はい?

 ——お前、恩人、触る。

「アクナイト公子?」

 アウルからかけられた訝しげな声を無視し、俺はフェイバースパイダーを見つめた。

「人間である私が触れていい存在ではありません」

 ——人間、触る。

 じっと見つめられながら繰り返され俺は言葉に詰まった。なんでそんなに触らせたがるんだ?

 ——異界の人間、波長合う、この子にも、効く。人間、抱っこ。魔力、ごはん。

 …………ああ、そうだった。本来一番最初に魔力という名の食事を与えるのは親であるフェイバースパイダーだった。しかし現在フェイバースパイダーは堕ちかけているためその魔力は穢れを纏っている。つまり本来の役割は果たせない。だから波長の合う俺の魔力を代わりに食させて泉まで自力で行かせるのだ。ゲームの設定だと卵は本来山頂で産ませてフェイバースパイダーは魔力というエネルギーを与え、子蜘蛛は最初の食事で得た力で自分の主である存在へ通ずる泉へ赴き洗礼を受けることで初めて眷属と認められる。万が一親が何らかの事情でエネルギーを与えられない場合は親に認められた他者が代わりに魔力を与えるのだ。重要なのは眷属として洗礼を受けるための最初のご飯だ。それさえクリアすれば後は本能に従い自分たちで勝手に動く。もちろんあの場までたどり着けるかは彼らの力次第。そこには親も手助けができない。それは産まれた眷属候補に与えられた最初の試練だからだ。手を貸そうものならそれは儀式の妨害と見做され神の怒りを買う。
 ……で、俺は光栄なことに? 最初の食事係に任命されたわけだ。

 ——人間、早く。

 急かされた。もとより任命された時点で拒否権などないのだが。…………仕方ない、腹括りますかねえ。


「アクナイト公子どうしたんだ?」
「後でお話ししますので一旦下ろしてもらえますか?」

 そう言うと首をかしげながらもアウルは俺を地面に下ろす。するとすでにフェイバースパイダーに言われたのか、ふわっふわの子蜘蛛がご飯をもらいにやってきた。俺は小フェイダーに両手をかざして慎重に魔力を流していく。うわっ……めっちゃ吸われていく。産まれたばかりで腹減ってるんだろうな。

「アクナイト公子!?」
「フェイバースパイダーに頼まれて魔力を与えているところですのでお静かに」

 そんなやり取りをしている間も子蜘蛛はびっくりするくらいの早さで俺の魔力を吸っていき、その体が徐々に光を纏い始めた。たしかゲームでは光がリング状になったら供給は終わりのはず。勢いが凄すぎてあっという間にリングが完成しそうだ。そしてリング状になっていくのに比例して俺は眩暈と倦怠感が酷くなっていった。今にもぶっ倒れそうになるのを意地で耐えていると無事にきれいな輪が浮かび上がる。

「終わった、のか?」
「少なくとも吸われる感覚はありません」
「…………そうか」

 固唾をのんで成り行きを見守っていた面々がほっと息をついた。
 
 ——人間、もう大丈夫、礼を、言う。

「いえ、礼など不要で」

 あ、やば…………。

 眩暈と倦怠感がピークに達し俺の体がゆっくりと傾く。遠くで焦った声がした気がするが俺はそれに応えることはできず雲に光を遮られた月のごとく視界が色を変えた——

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