悪役令息の花図鑑

蓮条緋月

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五頁 孤立したホオズキ

動き出す者(side???)

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♦♦♦side???♦♦♦ 

 いつものように仕事に精を出していた時。持っていたネックレスが突如として燃えた。どうやら依頼は失敗したらしい。

「使えないな~……せっかくあの人を始末できると思っていたんだけど」

 シュヴァリエ・アクナイト。あの男は厄介だ。これまで通りだったら何ら問題はなかった。これまでのシュヴァリエだったらクラルテとかいうあの平民に見当違いな憎悪を抱いて勝手に自滅しただろう。だけどあの馬鹿女に毒を盛られてから変わった。このままではこちらにとって非常に不都合なことになりかねない。

「この様子じゃ町のほうも無事なんだろうなぁ……あの人になんて報告すればいいのやら」

 本当に面倒だ。なぜ自分がこんな貧乏くじを引かねばいけないのか。いっそ自分でやってほしい。だがあの人には恩がある。この程度で恩返しができるならいいか。あの人の望みを叶える、そのためだけに俺は……いや俺たちは存在している。
 以前のシュヴァリエ・アクナイトは実に都合がよかった。しかし今の奴は近いうちに必ず我らの妨げになる。妙に勘が鋭くて真実に辿り着けるだけの賢さも持ち合わせている。答えの導き方は……かなり変わっているが。
 だから今回始末しておこうと思ったのに……なんで失敗するかなあの役立たず。今回は駄目だったなぁ。

「ゴミは所詮ごみでしかないってことか。まあいい。……それよりも」

 自分宛てに届いた。ぶっちゃけゴミがしくじった暗殺よりもこちらのほうが重要だ。というか珍しいな。ここ数年は特に何もなかったのに。そっとレターナイフを滑らせ内容を改める。そこに書かれていた文章に俺は目を見開いた。そして……盛大に笑った。

「ずっとお待ちしておりましたよ。ほんとうにこれまで鬱々としていたんですからね。私だけ仲間外れなんて酷いですよ。あぁ……なんとしてもやり遂げなければならないなぁ!」

 俺は手紙の内容に酔いしれた。本当に感謝しますよ主? じゃないと、俺は…………この意味不明な感情に呑まれて戻れなくなってしまうところだったんですから。

「『服従こそ秩序、支配こそ真理、穢れた世界の救済を』」


♦♦♦side???♦♦♦
 
 優秀な側近が持ってきたのはあいつのしくじりの情報だった。始末するかと聞いてきた側近に一言「不要」と返す。

「よろしいのですか?」
「うん、あいつにはちょうどやってもらいたいことがあるからね。方々に散らしていた欠片も光りだしてきたところだしいい時期だよ。それにしても……」

 机に置かれた報告書に書かれていたシュヴァリエ・アクナイトの名前に指を添える。

「このシュヴァリエ・アクナイトって学園の入学に合わせて顔を出したっていうアクナイト公爵家の次男だよね?」
「はい。その傲慢で冷酷な性格からあまり評判良くないようですが」
「だけどだいぶ優秀みたいだね。暗殺から逃れた上に町まで守ったんだから」
「ですがそれは協力者があってのこと。主の敵ではないかと」
「どれだけ人を使えるかというのも立派な能力だ。しかも……洗脳魔法は効かないらしいから充分面倒な相手だと思うよ?」
 
 ツヴィトーク王国を支える五つの公爵家はどれも曲者中の曲者揃いだ。当主もその子どもも。どれだけ不和の種を蒔かれようが呑み込まれることのない強靭な花たち。枯れない花ほど厄介なものはない。それがツヴィトークが長年存続できた理由の一つでもある。

「あの方は?」
「相変わらずでございます」
「あっそう。本当に人使いが荒いんだよね……だけど逆らうのは面倒だし。大人しく望まれるままに働くとするか」
「主…………」
「何も言うな。どうせもうすぐ壊れるんだから」

 そう。砕け逝くだけの者に興味はない。それよりもやるべきことは山積みなのだ。

「鳥たちはどうなっているの?」
「……変わりなく」
「やっぱりそう簡単には堕ちないよね~。天翔ける鳥はなかなかどうして狙いが定まらないからこっちも厄介だよほんと」
「ですが的が大きい分狙いやすくもあります」
「そうだね。もうすぐ包囲網も完成する。その時は盛大に狩りをしようじゃないか」
 
 さあ、もうすぐ…………盛大な祭りが始まるよ。暗殺から逃れ町を救った英雄シュヴァリエさん? 貴方はその時どう動いてくれるんだろうね。


・・・・・・・・・・・

 
 次回から『六頁 サンビタリアに染まって』が始まります。お楽しみに♪





 
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