悪役令息の花図鑑

蓮条緋月

文字の大きさ
94 / 140
六頁 サンビタリアに染まって

88話 第四王子の祝宴③

しおりを挟む
 おっふ、リベルタの原作スチル生公開来た~~~~~!!! スチルのエフェクトが! キラキラしている! ……じゃなくて。
 やっと主役が登場したことによりやっと役目も終わりが見えてきた。ぶっちゃけ関わる気もないし機会も少ないからリベルタがファーストダンスを終えた後に形式上の挨拶を済ませてそのまま一曲踊ってしまえばあとはパーティ終盤まで護衛役に徹すれば終わりだ。帰りの馬車はアクナイトのものを用意している。さすがにアクナイトの馬車に何かを仕掛けるほど馬鹿じゃないだろうしな。
 なんて考えているうちにリベルタの挨拶が始まった。リベルタの性格的にこういうの嫌がりそう……というかゲーム内ではめちゃくちゃ嫌がっていたんだがいざ本番となるとそつないものだ。まあ今日はクラルテも来ているから気合を入れているって感じかな。
 さてリベルタの挨拶が終わった後はいよいよファーストダンスだ。リベルタには婚約者がいないので参加している女性たちの中から踊る相手を選ぶ。この場では絶対に女性を選ぶものである。たしかに後継者以外は同性婚が認められてはいるがパートナーがいない以上は異性を選ぶのが習わし。ゲームではリベルタルートではクラルテを選んでいたけどそれ以外ではこの場で最も位の高い令嬢を選んでいた。たしか五大公爵家のひとつ・レンテンローズ公爵家の令嬢アネモスだったかな。

「レンテンローズ公爵令嬢。貴女と踊れる栄誉をぜひ私に」

 あ、ここは原作通りだな。レンテンローズ公爵家は五大公爵家の中で一番穏やかな一家だけど王室裁判長を代々務める一族なだけに犯罪に関してめちゃくちゃ厳しい者たちである。ぶっちゃけこの一族に睨まれたらまず国にはいられないと思ったほうがいい。因みにあの樽野郎を裁いたのも現レンテンローズ公爵だ。あの人にこにこ笑って罪状と判決を言い渡すからめっちゃ怖いんだよね。実はあの樽野郎の断罪場にとっ捕まえた当事者として俺もいたんだよね。もちろんあの樽野郎から見えない位置にね。下手な逆恨みされても困るし。だからあの人が断罪する場を直に見ていたのだ。その時俺は決めたんだ。何が何でも原作回避をしてやろうと。誰が好き好んであんな恐ろしい場に身を投げたいと思うんだ冗談じゃない。俺の! 平穏! 第一! ……なんて思っても原作の修正力なのか強制力なのかどう頑張っても原作のストーリーに関わってしまうという。…………もうため息しか出ないっての。
 しっかしこんなにはっきりとリベルタの顔を見たけどやっぱり無駄に顔いいわ。しかも普段こういう行事めちゃくちゃ嫌がってエヴェイユたちに怒られているのに本番になるとガラッと雰囲気変わるんだからもはや詐欺だと思う。普段魔法魔術大好きで天真爛漫系のリベルタがキリっとしているこの場面のスチルはリベルタファンのみならず他のキャラ推しのユーザーたちもめっちゃ盛り上がっていた。兄貴もその一人だったし。もっとも俺が最初にスチルを見た感想はなんだこの詐欺師は!? である。
 見目のいい王族のダンスシーンは否が応でも絵になるものでめっちゃ輝いている。ここまでくると腹立たしいっていう嫉妬すらわかないんだから不思議なものだ。
 ……さて、これが終わればいよいよ俺たちの番だ。どうか失敗しませんように。

「サンビタリア嬢。用意はいいか」
「……はい」
「君はサンビタリアだ。俯くことは許さない」
 
 俺の言葉に若干不安になっていたらしいセレーナは一つ深呼吸をした後、強い光の燈った目で俺をまっすぐに見つめた。……これなら大丈夫だろう。

「シュヴァリエ。気負わなくていい。練習であれだけ踊れていたんだから自信を持て」
「ふん……あれだけご指導くださったどこかの誰かに恥をかかせるようなことはしないさ」
「……期待している」

 楽し気に挑発しながら俺たちは二組に分かれてリベルタのダンスが終わったフロアに踊り出る。本日デビュタントの令嬢と学園以外では表に出たことのないシュヴァリエ・アクナイトの登場に会場から一気に視線を向けられた。失敗は許されないと俺はセレーナをリードしながら踊っていく。まさか転生して社交ダンスを踊る日が来るなんて夢にも思わなかったわ。……ダンスの練習中、適度な緊張は楽しいを増すアクセントだとアウルは言っていたけど、俺はまだその領域に達することはできない。まあでも体を動かすことが嫌いなわけでもないからな。……それに、俺が創ったアクセサリーがステップのたびに揺れるのは見ていて楽しいと思う。セレーナへの激励と妹への感謝のつもりで作ったものではあるがまあプラスに働いているようで安心した。
 ……もっともそんな楽しい空間を邪魔しようとする輩がいるんだけど。わざとこちらに近づいてくる輩、わざとぶつかるか、ステップを踏む要領で足を出して転ばせようとするか、はたまたアクセサリーを使ってドレスを傷つけようとするか……いずれにせよこんな場所でやるにはあまりにも無作法です。王族主催の祝宴の場でなにやってんだか。気づく人たちはふつうに気づくからね? ……どうせ例の方たちに頼まれでもしたのかご機嫌取りのために自らやってんのか知らないけど、俺が何の対策も立てていないわけないしそんなことをして妨害をするような輩を許すつもりもない。お互いの今後がかかっている以上こっちも向かってくる輩には喧嘩上等の精神状態なんだよ。……もっとも俺がどうにかする前にアウル、ルアルの二人が間に入って来るんだけど。ほんとよく動いてくれるよね。アウルなんて他国の人間なのに手を貸してくれているんだもん。さっきの無礼もあるしちゃんと借りは返さないとな。
 そうやって踊っている間妨害しようとする刺客を躱していくたび、時々視界に入る面々が一瞬悔しそうにするのはなかなかに見物だった。
 
 そうやって密かな攻撃を躱し、一曲目が無事終了。セレーナは晴れて社交界の仲間入りを果たした。

「社交界デビューおめでとうございます。セレーナ・サンビタリア侯爵令嬢」
「本日は私のパートナーとしてこの場にご参加くださりありがとうございますシュヴァリエ・アクナイト公爵子息様」

 互いに挨拶を交わし、俺の役目は終わりを告げた。あとは彼女自身で乗り切らなければいけない。まあルアルの息がかかった令嬢、子息たちが守ってくれるらしいしなんとかなるだろ。あちらの息がかかった使用人たちは事前に潰してかわりにアクナイトの息がかかった人間を入れている。もちろん王族の許可は取ってますよ? あらかじめルアルが味方の子息令嬢の顔を把握させ今日はそういう人たちと踊るようにと言いつけている。

「ダンスが終わったところで主役に挨拶へ行こうか」
「そうだな」

 ついに攻略対象リベルタと本格的に対面か。……正直に言えば滅茶苦茶逃げたい。だけど相手は王族だから不可能という。はあ……サラッと終わらせますか。
 ……なんて思っていたのですが!

「初めましてリベルタ・イル・ツヴィトークです! 貴方のことはエヴェイユ兄さまやクラルテから聞いています! ぼ、私ともぜひ仲良くしてください!」

 とまあ、なんとも元気なお言葉を頂戴しました。嫌ですなんていえないんですわ。立場的にも場所的にも。というかこんなにぐいぐいくるなんていったいどうなっているんだ。しかもなんか……耳としっぽが見える気がする……幻覚、だよな?

「殿下。そんなに食らいついてはシュヴァリエが困ってしまいますよ」
「おっとそうだったそうだった」
 
 さすがに近すぎたと思ったのかリベルタが一歩下がる。因みにここまでの行動に一切の悪気も悪意もない。ほんとうにクラルテと似たタイプだ。

「学年が違うぶんあまり話す機会はないけど一杯お話したいです。これからよろしくお願いしますねアクナイト第二公子!」
「……はい」

 なんとかそれだけ言って俺はその場を後にした。多分あの感じだと今後クラルテと一緒に遭遇する可能性が高い。むしろなんで今まで絡んでこなかったんだ? 俺としてはありがたいけどね。……まあいいや、主役への挨拶は終わったしどうするかな。俺は公爵家の人間だから早く帰れないんだよな。ほんと用事があるわけでもないんだからさっさと帰っちゃだめなの? 踊るのも嫌だし時間が来るまで控室にでも行っておくか……それに、さっきから変な視線がこっちに向いているしね。あれで隠しているつもりとか……舐められてんなぁ。
 
「……シュヴァリエ?」
「何でもない。ただ
「……わかった。
「ああ。

「そうか。……少し外の空気を吸ってくる」
「ああ。……気をつけろよ」

 あ~あ、さっさと部屋に戻って休みたい。
 会場を出てそのままアクナイト公爵家に用意された部屋へ向かった。
しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

処理中です...