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七頁 クレマチスの願い
103話 久しぶり
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夜、むかつく文面で呼び出された俺は例の使用人が死んだ場所、そのすぐ近くにあるクレマチスの群生地へやってきた。ほんと知ったときはびっくりしたものだ。なんだってこんな場所に咲いているんだよ。まあ日本でもなんでこんな場所にってところに咲いている花とかあったからそういうものなんだと思うようにしている今日この頃。
……さて、こんなところに呼び出した張本人は——
「ようやく来たんですね。待ちくたびれましたよ」
「攫われたくらいでは君の性根は変わらなかったようだな——リヒト・クレマチス」
振り向いた先にはいつもの腹立つしかめ面でリヒトが立っていた。攻略対象なだけあって顔と声はいい。余計にムカつくわ~。
「ほんっとに憎たらしい方ですね」
「君に言われたくはない。それよりも……こんな無駄話をするために呼び出したわけではないだろう?」
「……どうせ気づいているくせに」
わざとらしくため息をつきがらりと表情を変えたリヒトは話し始めた。
「詳しい話は殿下からあるでしょうから今ここでは割愛させていただきます。あの女性……メティさんの身分は平民ですがもとは貴族の隠し子なんですよ」
ああ、なんか納得。隠し子といえば聞こえはいいが実際は夫婦以外の間に生まれた子どものことだ。そういう子たちは実の子として育てられる場合もあるがほとんどは見捨てられてしまう。とはいえ貴族の血が流れていることに変わりはない。このツヴィトーク王国では王家主体でそういう子どもたちを集め愛国心と高度教育を施し国を守るための人材として活用しているんだよ。城や国でも重要な土地を守護している高位貴族の使用人、騎士、学園の教師なんかがいい例だ。……シュヴァリエへの扱いを考えると下手に家の一員として認められるよりもこっちのほうが幸せな気もする。
あの使用人……メティって女もその類いなんだろう。だけど彼女みたいなのは王家の教育機関によって愛国心をとことん叩き込まれているから貴族子息の失踪に手を貸すなんてできないはずだけどな。
「私は殿下の友人として父について城に行くこともあったのですが年がそこまで離れていないということで時々案内をしてくれていたのが彼女なんです」
そこで繋がってくるのかよ。まあ頻繁に城に出入りしていたんなら接触の機会もあるか。
「彼女に連れ出されるままに姿をくらまし隙を見て殿下へ報告を行っていたんです。その際に彼女の持っていた本のことも聞きました」
……こいつの本命はこれか。
「それがどうした」
「……その本に挟まっていたという花についても聞いています」
「だからなんだ?」
「……おかしいとは思わなかったんですか? いくら王家主体の高度教育を施されているとはいえこの国にない花のことを知っているなんて。いくらここが花の国と言われているとはいえ他国の花のことを知る機会なんてどのくらいあると思います?」
……。
…………ああ、やっぱりそういうことか。
「…………もともとそんな気はしていたんですよ。貴方は変わりすぎていましたから。ゲームとは全然違う行動に言動、その影響で変わっていくシナリオ。極めつけは異常なまでの花狂い。シュヴァリエ・アクナイトのふりをしていますが貴方は違う。そっくりなんですよ。行動と言動が私の——いや、俺の前世の友人柊紅夏に」
……ああ、そうだよな。俺も前から違和感あったんだよ。お前もリヒトであってリヒトでなかったから。
「なあ、お前柊紅夏だろ?」
「——そうだよ。久しぶりだな。桜風車」
桜風車。俺の友人で何を隠そう高校の時に授業をスマホで撮影していた勇者その人である。ゲーム関連の専門学校に通っていたんだよな——
「……なんでお前死んじゃったんだよこの馬鹿!」
右頬に鈍い痛みが走り地面に手をついた。……やりやがったなこの野郎!
「うっせえ! この世界にいるってことはてめえも死んだんじゃねえか! 人のこと言えねえんだよこのドアホが!」
シュヴァリエなら絶対にしないであろう粗暴な口調と共に俺の拳が今度はリヒト……いや風車の左頬に炸裂した。
「新作ゲームやるって約束破りやがって! な~に一人で逝ってんだこの花狂いが!」
「俺だって好きで死んだんじゃねえよ! 文句なら火ぃ起こしやがった隣のビルの奴に言いやがれ!」
「ああそうだな! あれ放火だって話だからな!」
「ならますます俺巻き添えじゃねえか! そこまで文句言われる筋合いねえわ!」
「死んだ時点で文句しかでねえっつーの!」
「ならなんでてめえは死んでんだよ!」
「姉ちゃんに振られた男が逆恨みで家に乗り込んできたんだよ! 姉ちゃん庇って今ここ!」
「……いや俺より悲惨じゃねえかお前」
お前の姉貴美人だったもんな。性格もさっぱりしたからめっちゃモテてたっけ懐かし~。……さっきまで沸騰していたのにその話聞いたら一気に頭冷えたわ。殴られた後の興奮よ何処……。
急に座りだした俺に風車も冷めたらしく頭をガシガシと搔きながら視線を泳がせた。俺たちの間に気まずい沈黙が流れる。
「……気まず。もう一回殴り合いするか?」
「無理。そんな気失せたし。……で、せっかくお互い転生者だってことが分かったわけだし情報共有しようぜ」
「賛成~」
とりあえずその場に座り込み転生したと気づいたところから共有することに。
「俺はエヴェイユ殿下と初めて会ったときに記憶が蘇った。あの時の衝撃はやばかったな。腐女子だった姉ちゃんが『はなしゅご』押し付けてきて俺もプレイしていたからキャラもストーリーも知っていたから二重に衝撃だったわ」
「お前なんかまだいいじゃねえか。俺なんか悪役だぞ」
「それな……。とりあえず本編はクラルテが編入してきてからだからまだ時間あるし変に行動するとシナリオ変わって動きづらくなっても困るってことでゲームのリヒトそのままの行動を取ってたんだよ」
「俺はクラルテが編入してくる直前に実家に呼ばれたじゃん? あの時にクソ婆……元公爵夫人に毒盛られて生死の境を彷徨ったのをきっかけに思い出した」
「はあ!? 嘘だろ!?」
「マジマジ! イカれてるよな。まあ潰したけど!」
「うっわ~闇深いな! とりあえず生還おめでとう!」
ほんとによ。思い出した直後にご臨終とか絶対嫌だし。今ある命に心から感謝だわ。
「それで、だ。今後はどうする?」
「どうするって……お前『はなしゅご』どこまでクリアしているんだ?」
「ごみ野郎がうちに乗り込んできた日に隠しキャラ解放するはずだった」
「結構進んでんな! 俺なんて全キャラようやく友情エンドで一周したところだぞ」
「……てことは俺たち二人とも隠しキャラが誰かわからないってことだな」
「……ああ、やっぱりお前もそっちの方だと思うよな」
「なんとなくハーレムルートか隠しキャラかなって思ってたけど……知らねえからどっちかわからん」
どうやら風車のほうもどっちかで悩んでいたらしい。うん、気持ちわかるわ。だけどこの世界を知っている転生者がいるってわかっただけでも大きいな。
「ひとまず仲間がいるってわかったならこれからもこまめに情報共有していったほうがいいな」
「ああ。だけどリヒトとシュヴァリエが仲良くってのはいろいろアレだから表立っては無理だろ」
「……それは事件だぞ。エヴェイユとクラルテは特に騒ぐと思う」
「だよなぁ……表向きはこれまで通りの関係でいいんじゃねえの?」
「それが一番安全だな」
ここでふと気になったことを聞いてみた。
「そういやお前なんでクラルテに付き添ってんの?」
「ゲーム内で一番絡みが多いからだよ。あいつ隠れ蓑にちょうどいいんだよな」
「……うん、相変わらずでよかったよ」
これ以上突っ込むのはやめよう。ある意味ゲームのリヒトよりも宰相に相応しいかもしれない。
「じゃあ密談場所決めようぜ。学園でも人の来ない場所がいいよな」
「…………それならあそこがいいんじゃねえの? ほら学園の森の中にある使ってない倉庫」
「確かゲームのファンブックに載っていた学園の地図にさらっと載っていたやつだよな」
「そうそう! あそこなら密談にちょうどいいんじゃねえの?」
「……それもそうだな。人は寄り付かない、どころか知っている生徒も少ないだろうし密談場所としては便利か。ないかありそうな雰囲気に目を瞑れば」
「げっ……怖いこと言うなよ!」
そんなこんなで密談場所が確定し今後も変わらずいくという結論になった。転生仲間ゲットだぜい!
「ところでクラルテはいいとして、俺と会ったりしたらアウルが飛んできそうだけど大丈夫か?」
…………知らんがな。
……さて、こんなところに呼び出した張本人は——
「ようやく来たんですね。待ちくたびれましたよ」
「攫われたくらいでは君の性根は変わらなかったようだな——リヒト・クレマチス」
振り向いた先にはいつもの腹立つしかめ面でリヒトが立っていた。攻略対象なだけあって顔と声はいい。余計にムカつくわ~。
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「君に言われたくはない。それよりも……こんな無駄話をするために呼び出したわけではないだろう?」
「……どうせ気づいているくせに」
わざとらしくため息をつきがらりと表情を変えたリヒトは話し始めた。
「詳しい話は殿下からあるでしょうから今ここでは割愛させていただきます。あの女性……メティさんの身分は平民ですがもとは貴族の隠し子なんですよ」
ああ、なんか納得。隠し子といえば聞こえはいいが実際は夫婦以外の間に生まれた子どものことだ。そういう子たちは実の子として育てられる場合もあるがほとんどは見捨てられてしまう。とはいえ貴族の血が流れていることに変わりはない。このツヴィトーク王国では王家主体でそういう子どもたちを集め愛国心と高度教育を施し国を守るための人材として活用しているんだよ。城や国でも重要な土地を守護している高位貴族の使用人、騎士、学園の教師なんかがいい例だ。……シュヴァリエへの扱いを考えると下手に家の一員として認められるよりもこっちのほうが幸せな気もする。
あの使用人……メティって女もその類いなんだろう。だけど彼女みたいなのは王家の教育機関によって愛国心をとことん叩き込まれているから貴族子息の失踪に手を貸すなんてできないはずだけどな。
「私は殿下の友人として父について城に行くこともあったのですが年がそこまで離れていないということで時々案内をしてくれていたのが彼女なんです」
そこで繋がってくるのかよ。まあ頻繁に城に出入りしていたんなら接触の機会もあるか。
「彼女に連れ出されるままに姿をくらまし隙を見て殿下へ報告を行っていたんです。その際に彼女の持っていた本のことも聞きました」
……こいつの本命はこれか。
「それがどうした」
「……その本に挟まっていたという花についても聞いています」
「だからなんだ?」
「……おかしいとは思わなかったんですか? いくら王家主体の高度教育を施されているとはいえこの国にない花のことを知っているなんて。いくらここが花の国と言われているとはいえ他国の花のことを知る機会なんてどのくらいあると思います?」
……。
…………ああ、やっぱりそういうことか。
「…………もともとそんな気はしていたんですよ。貴方は変わりすぎていましたから。ゲームとは全然違う行動に言動、その影響で変わっていくシナリオ。極めつけは異常なまでの花狂い。シュヴァリエ・アクナイトのふりをしていますが貴方は違う。そっくりなんですよ。行動と言動が私の——いや、俺の前世の友人柊紅夏に」
……ああ、そうだよな。俺も前から違和感あったんだよ。お前もリヒトであってリヒトでなかったから。
「なあ、お前柊紅夏だろ?」
「——そうだよ。久しぶりだな。桜風車」
桜風車。俺の友人で何を隠そう高校の時に授業をスマホで撮影していた勇者その人である。ゲーム関連の専門学校に通っていたんだよな——
「……なんでお前死んじゃったんだよこの馬鹿!」
右頬に鈍い痛みが走り地面に手をついた。……やりやがったなこの野郎!
「うっせえ! この世界にいるってことはてめえも死んだんじゃねえか! 人のこと言えねえんだよこのドアホが!」
シュヴァリエなら絶対にしないであろう粗暴な口調と共に俺の拳が今度はリヒト……いや風車の左頬に炸裂した。
「新作ゲームやるって約束破りやがって! な~に一人で逝ってんだこの花狂いが!」
「俺だって好きで死んだんじゃねえよ! 文句なら火ぃ起こしやがった隣のビルの奴に言いやがれ!」
「ああそうだな! あれ放火だって話だからな!」
「ならますます俺巻き添えじゃねえか! そこまで文句言われる筋合いねえわ!」
「死んだ時点で文句しかでねえっつーの!」
「ならなんでてめえは死んでんだよ!」
「姉ちゃんに振られた男が逆恨みで家に乗り込んできたんだよ! 姉ちゃん庇って今ここ!」
「……いや俺より悲惨じゃねえかお前」
お前の姉貴美人だったもんな。性格もさっぱりしたからめっちゃモテてたっけ懐かし~。……さっきまで沸騰していたのにその話聞いたら一気に頭冷えたわ。殴られた後の興奮よ何処……。
急に座りだした俺に風車も冷めたらしく頭をガシガシと搔きながら視線を泳がせた。俺たちの間に気まずい沈黙が流れる。
「……気まず。もう一回殴り合いするか?」
「無理。そんな気失せたし。……で、せっかくお互い転生者だってことが分かったわけだし情報共有しようぜ」
「賛成~」
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「俺はエヴェイユ殿下と初めて会ったときに記憶が蘇った。あの時の衝撃はやばかったな。腐女子だった姉ちゃんが『はなしゅご』押し付けてきて俺もプレイしていたからキャラもストーリーも知っていたから二重に衝撃だったわ」
「お前なんかまだいいじゃねえか。俺なんか悪役だぞ」
「それな……。とりあえず本編はクラルテが編入してきてからだからまだ時間あるし変に行動するとシナリオ変わって動きづらくなっても困るってことでゲームのリヒトそのままの行動を取ってたんだよ」
「俺はクラルテが編入してくる直前に実家に呼ばれたじゃん? あの時にクソ婆……元公爵夫人に毒盛られて生死の境を彷徨ったのをきっかけに思い出した」
「はあ!? 嘘だろ!?」
「マジマジ! イカれてるよな。まあ潰したけど!」
「うっわ~闇深いな! とりあえず生還おめでとう!」
ほんとによ。思い出した直後にご臨終とか絶対嫌だし。今ある命に心から感謝だわ。
「それで、だ。今後はどうする?」
「どうするって……お前『はなしゅご』どこまでクリアしているんだ?」
「ごみ野郎がうちに乗り込んできた日に隠しキャラ解放するはずだった」
「結構進んでんな! 俺なんて全キャラようやく友情エンドで一周したところだぞ」
「……てことは俺たち二人とも隠しキャラが誰かわからないってことだな」
「……ああ、やっぱりお前もそっちの方だと思うよな」
「なんとなくハーレムルートか隠しキャラかなって思ってたけど……知らねえからどっちかわからん」
どうやら風車のほうもどっちかで悩んでいたらしい。うん、気持ちわかるわ。だけどこの世界を知っている転生者がいるってわかっただけでも大きいな。
「ひとまず仲間がいるってわかったならこれからもこまめに情報共有していったほうがいいな」
「ああ。だけどリヒトとシュヴァリエが仲良くってのはいろいろアレだから表立っては無理だろ」
「……それは事件だぞ。エヴェイユとクラルテは特に騒ぐと思う」
「だよなぁ……表向きはこれまで通りの関係でいいんじゃねえの?」
「それが一番安全だな」
ここでふと気になったことを聞いてみた。
「そういやお前なんでクラルテに付き添ってんの?」
「ゲーム内で一番絡みが多いからだよ。あいつ隠れ蓑にちょうどいいんだよな」
「……うん、相変わらずでよかったよ」
これ以上突っ込むのはやめよう。ある意味ゲームのリヒトよりも宰相に相応しいかもしれない。
「じゃあ密談場所決めようぜ。学園でも人の来ない場所がいいよな」
「…………それならあそこがいいんじゃねえの? ほら学園の森の中にある使ってない倉庫」
「確かゲームのファンブックに載っていた学園の地図にさらっと載っていたやつだよな」
「そうそう! あそこなら密談にちょうどいいんじゃねえの?」
「……それもそうだな。人は寄り付かない、どころか知っている生徒も少ないだろうし密談場所としては便利か。ないかありそうな雰囲気に目を瞑れば」
「げっ……怖いこと言うなよ!」
そんなこんなで密談場所が確定し今後も変わらずいくという結論になった。転生仲間ゲットだぜい!
「ところでクラルテはいいとして、俺と会ったりしたらアウルが飛んできそうだけど大丈夫か?」
…………知らんがな。
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