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七頁 クレマチスの願い
異世界でも変わらない奴(sideリヒト)
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俺には前世の記憶がある。いきなり何言ってんのかって? 俺も思うわ。まあテンプレだと思ってここはスルーな。きっかけはエヴェイユたちと初めて会ったとき。姉ちゃんが腐女子だった影響でやってたゲームの攻略対象になるとかどうすりゃいいんだって頭抱えたね。だけどなっちゃったもんはしょうがないよね、ってことでこれからどうするかを考えた。ゲームに登場する悪役シュヴァリエ・アクナイトはほんとにゲーム通りのことをエヴェイユにやらかした。お前そんなんだから断罪されるんだぞと何度思ったことやら。俺にも毎回突っかかってくるしほんとに何がしたいんだこいつ。
だけどゲームとはちょっと違う部分もある。一番はリヒト・クレマチスが魔法を使えるってことだ。これっていったいどういうことなんだろうな。……けど何度考えてもこれって答えは浮かんでこなかった。一応ある可能性は浮かんでるけど確証はない。これは本編始まってみないと駄目かもな。
話変わるけど貴族の坊ちゃんって思っている以上に忙しいんだわ。ずっと勉強三昧だし社交活動もある。まあ自由な時間がないわけじゃないけどきっついのなんのって!
そんな中、よく父さん、あ、ちゃんと父上って呼んでいるからな? に連れられて城に行ってたんだ。だから城の使用人たちとも交流があったんだけどその中で特に仲良くなったのがメティだった。俺より年上でぶっちゃけ姉ちゃんみたいだなって思ってたんだよな。なんつーの? 俺への態度とかが。だから結構話しやすかったんだ。
……で、そんな生活を送っているうちに早数年。ついにゲーム本編が始まってしまった! 主人公であるクラルテが早速シュヴァリエ・アクナイトに絡まれてる! なんて思ってたんだけど、なんか違うのよシュヴァリエの行動が。いや言動もだけどさ。お前いったいどうしたって何度叫びそうになったことか。
そしたらまさかの同類だったっていうね!? し・か・も! 前世の悪友とも呼べる友人の柊紅夏だったよ! なんつー確率! あの時の俺の戦慄がわかる!? 意味不明だよな! つーか書店で火事に巻き込まれたって……まあ俺も人のこと言えねえ死に方しているけどな。それなのに俺たちが同じゲームの世界に転生するとは思わなかったって。
……それにしても紅夏、いやシュヴァリエの奴……イベントクラッシャーすぎでしょ。ゲームの本編イベントが本来であれば悪役の立場のシュヴァリエ中心に動いているってどういう状況だよ。しかも原動力・押し花っていうさぁ……変人って異世界行っても変わらないんだな。
「……ほんと、あいつは悪役向かねえよ。なあメティ」
俺はメティの墓に花を添えながら呟いた。まさかお前が俺を好いていたとはな。気づかなかったよ。昔から淡白とか恋愛サイボーグとか言われてたけど……たしかにこりゃ言われても仕方ねえよな。前世では……いや今世もか。恋愛結婚とかそういうのは性欲に都合のいい名前つけただけって思ってたから。それを前世で馬鹿正直に言ったら柊以下友人たちに思いっきりドン引きされたっけ。
「仇を取るとは言わないけどさ、お前を殺した奴らが国に害なすと分かった以上は徹底的に潰すから」
さて……これ以上は居てもどうしようもないな。涙も止まったしシュヴァリエのところにいくか。
「また来るよ」
そう言って俺はメティの墓に背を向けシュヴァリエを探して歩き出した。
「あいつどこ行ったんだ?」
しばらく探して歩いているとどこからか唄が聞こえてきた。なんだろう……雰囲気は童歌かな。というかこの声は……
「シュヴァリエ、だよな……?」
あいつは前世から唄上手かったし今世では前世よりもはるかに声が綺麗だ。歌を追っていくと開けた場所に出てその光景に思わず目を奪われた。雲一つない満月の空の下、静かに揺れる水面がきらきらと光る中で色素の薄いシュヴァリエが楽園の情景のように見えたから。……歌い終えたシュヴァリエに見惚れた悔しさを隠しながら声をかける。
シュヴァリエと普段だったら絶対言わねえような会話をしながら俺はこっそりと横顔を盗み見る。ゲームではあまり触れられていなかったシュヴァリエ・アクナイトの話。聞いていれば闇落ちしたのはある意味では必然だったのかもと思った。だけど……今は柊紅夏の記憶がある。俺たちの輪に平然と入り一緒に馬鹿騒ぎできるような奴なんだ。きっとこのシュヴァリエが闇落ちすることはないだろうな。
——それに、こいつの傍にはもう、一途に愛でてくれる存在がいるみたいだしな。
とっととくっついちまえよ。そしたら……盛大にからかい倒してやるからな。
・・・・・・・・・・・
次回から『八頁 愛国のナスタチウム』が始まります。お楽しみに♪
だけどゲームとはちょっと違う部分もある。一番はリヒト・クレマチスが魔法を使えるってことだ。これっていったいどういうことなんだろうな。……けど何度考えてもこれって答えは浮かんでこなかった。一応ある可能性は浮かんでるけど確証はない。これは本編始まってみないと駄目かもな。
話変わるけど貴族の坊ちゃんって思っている以上に忙しいんだわ。ずっと勉強三昧だし社交活動もある。まあ自由な時間がないわけじゃないけどきっついのなんのって!
そんな中、よく父さん、あ、ちゃんと父上って呼んでいるからな? に連れられて城に行ってたんだ。だから城の使用人たちとも交流があったんだけどその中で特に仲良くなったのがメティだった。俺より年上でぶっちゃけ姉ちゃんみたいだなって思ってたんだよな。なんつーの? 俺への態度とかが。だから結構話しやすかったんだ。
……で、そんな生活を送っているうちに早数年。ついにゲーム本編が始まってしまった! 主人公であるクラルテが早速シュヴァリエ・アクナイトに絡まれてる! なんて思ってたんだけど、なんか違うのよシュヴァリエの行動が。いや言動もだけどさ。お前いったいどうしたって何度叫びそうになったことか。
そしたらまさかの同類だったっていうね!? し・か・も! 前世の悪友とも呼べる友人の柊紅夏だったよ! なんつー確率! あの時の俺の戦慄がわかる!? 意味不明だよな! つーか書店で火事に巻き込まれたって……まあ俺も人のこと言えねえ死に方しているけどな。それなのに俺たちが同じゲームの世界に転生するとは思わなかったって。
……それにしても紅夏、いやシュヴァリエの奴……イベントクラッシャーすぎでしょ。ゲームの本編イベントが本来であれば悪役の立場のシュヴァリエ中心に動いているってどういう状況だよ。しかも原動力・押し花っていうさぁ……変人って異世界行っても変わらないんだな。
「……ほんと、あいつは悪役向かねえよ。なあメティ」
俺はメティの墓に花を添えながら呟いた。まさかお前が俺を好いていたとはな。気づかなかったよ。昔から淡白とか恋愛サイボーグとか言われてたけど……たしかにこりゃ言われても仕方ねえよな。前世では……いや今世もか。恋愛結婚とかそういうのは性欲に都合のいい名前つけただけって思ってたから。それを前世で馬鹿正直に言ったら柊以下友人たちに思いっきりドン引きされたっけ。
「仇を取るとは言わないけどさ、お前を殺した奴らが国に害なすと分かった以上は徹底的に潰すから」
さて……これ以上は居てもどうしようもないな。涙も止まったしシュヴァリエのところにいくか。
「また来るよ」
そう言って俺はメティの墓に背を向けシュヴァリエを探して歩き出した。
「あいつどこ行ったんだ?」
しばらく探して歩いているとどこからか唄が聞こえてきた。なんだろう……雰囲気は童歌かな。というかこの声は……
「シュヴァリエ、だよな……?」
あいつは前世から唄上手かったし今世では前世よりもはるかに声が綺麗だ。歌を追っていくと開けた場所に出てその光景に思わず目を奪われた。雲一つない満月の空の下、静かに揺れる水面がきらきらと光る中で色素の薄いシュヴァリエが楽園の情景のように見えたから。……歌い終えたシュヴァリエに見惚れた悔しさを隠しながら声をかける。
シュヴァリエと普段だったら絶対言わねえような会話をしながら俺はこっそりと横顔を盗み見る。ゲームではあまり触れられていなかったシュヴァリエ・アクナイトの話。聞いていれば闇落ちしたのはある意味では必然だったのかもと思った。だけど……今は柊紅夏の記憶がある。俺たちの輪に平然と入り一緒に馬鹿騒ぎできるような奴なんだ。きっとこのシュヴァリエが闇落ちすることはないだろうな。
——それに、こいつの傍にはもう、一途に愛でてくれる存在がいるみたいだしな。
とっととくっついちまえよ。そしたら……盛大にからかい倒してやるからな。
・・・・・・・・・・・
次回から『八頁 愛国のナスタチウム』が始まります。お楽しみに♪
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