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八頁 愛国のナスタチウム
107話 またもやイベント崩壊が……
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「代表生徒の皆さんお集まりいただいてありがとうございます」
目の前では麗しの殿下が後光を背負いながら挨拶を行っている。そのすぐ横にはクオーレとリヒトが。一瞬リヒトと視線が絡み目で合図を出し合う。来て直後だけど帰りたい。
「今年は私を含めここにいる計十名が参加します。短い期間ですがよろしくお願いしますね。それでは早速説明を始めたいと思います」
出発は一週間後、そこから馬車に乗って二週間で聖アーダ教国内に入りそこからさらに二日半で教都・ミステルのミステリア教園に行くそうだ。教園というのは教会にある学園のこと。俺たちはそこの交換留学生として一週間滞在する。その間教会のほうの掃除や教会を訪れる者たちの案内や行事のお手伝いをするそうだ。
「また奉仕期間中に月に一度の聖祈祷が行われますのでそちらの手伝いもしていただくことになります」
聖祈祷は聖女と呼ばれる少女が姿を見せる日でもある。無属性の中でも癒しの力を持った存在をそう呼ぶのだがほんとうに少ない上に大抵は教会に囲われてしまう子だ。姿を見せると言ってもベールで顔を覆っているからお世話係と神官長以外には顔を見せられないんだけどね。
日程は一日目は設備の案内と翌日からの活動内容の説明と交流会。翌日から早速奉仕活動開始になり六日目に聖祈祷が行われ最終日にまた交流会が行われて全日程が終了になるそうだ。起床時間は日の出と同時で就寝は夜の九時。これは厳守らしい。……はい、夜更かし常連はどうすればいいでしょうか! ……夜更かしすんな、ですよね。すみませんでした。
「午前中は授業に参加し実際の奉仕活動は午後からとなります。衣服など必要なものはすべてあちらからの支給になりますので荷物は特に必要ありません。説明は以上です。何か質問のある方はいますか?」
必要なもの全部支給とか気前いいな。まあ下手な物を持ち込ませないようにするためにもその方がいいか。
「ないようですのでこれにて解散となります。最後に各ご家庭にはすでに通達済みですが出発までにご家族の方からこちらの書類にサインをもらってきてください。ご実家が遠い方は学園指定の即達(※誤字にあらず)郵便器をお使いください。説明は以上となります。それでは解散してください」
や~っと終わった……とりあえず今日は帰って寝よ——
「ああ、アウル公子とシュヴァリエ公子は残っていただけますか?」
……てめえ俺になんか恨みある、のは知っているが嫌がらせが過ぎませんかねぇ? 自分でも目が冷え冷えになっているのがわかる。
「シュヴァリエ様、殿下のお誘いに何かご不満でも?」
「まさか。最近お誘いを受ける機会が多くてとても光栄に思っている。君のほうこそそんなに私と話すのが不服ならば案山子の真似をしてみたらどうだ?」
「シュヴァリエ様……それほどお疲れだったのですね。それならば夜更かしはせずお眠りになっては如何ですか? 朝に浴びる冷水はとても気持ち良いですよ?」
「ほう? それはよいことを聞いた。今度君自身で実践してみてもよいだろうか?」
お互い中身を知っても外ではこれまでのリヒトとシュヴァリエで、と決めたからこういうやり取りは継続しているけど前よりもずっと楽しんでいる。だって相手が風車だし。今俺とリヒトの心の声はひとつだ。めっちゃくちゃ楽しい!!!
……なお、俺たちのやり取りを聞いている周囲は攻略対象の二人以外真っ青な顔で物音ひとつ立てないよう静か~に退室していく。……ごめんね巻き込んで。そして俺たち以外の人間が完全にいなくなったタイミングで。
「「その辺にしておいてください/その辺にしておけ」」
お二人から制止が入った。同時にぴたりと言い合いをやめる、いい子の俺たち。……いい子は最初から言い合いしないってどこからか突っ込みが聞こえた気がするがただの気のせいだろう。最近幻聴が多いなぁ。
「本当に毎度毎度よく飽きずにやるものだ」
「まったくです。リヒトあなたもいい加減慣れなさい。これからシュヴァリエ公子との交流は増えることになるのですから」
おい、勝手に決めんなよ。なにそのホラー展開冗談じゃありません! 一瞬リヒト、というか風車の目に憐憫が浮かんだような気がする。やめてぇ~……。
「そうは言われましても私は許しておりませんから。聖アーダでもなにをやらかすやら」
「大丈夫でしょう、私も同行するのですから」
ハイ、シュヴァリエハイイコ二シテマス。
相変わらずのやり取りにため息をつくアウル。お前もいい加減慣れろや。……そんなことよりも。
「殿下、なぜわざわざアウルと私を呼び止めたのですか?」
「ああ、そうでしたね。ではここからは生徒会室で話しましょう」
♦♦♦♦♦♦♦
俺は殿下との話し合いを終えた後すぐに寮へ戻り翌日王都にあるアクナイト邸へ向かった。晩秋から春先までは領地にいるがそれまでは王都にいるのだ。所謂社交シーズンというやつである。この国は気候が他と比べて穏やかだから社交シーズンも長い。
「お帰りなさいませ。お待ちしていましたシュヴァリエ様」
俺を出迎えたのはサリクスだった。顔を見るのは本当に久しぶりである。元気そうで安心した。
「ただいまサリクス」
「ご到着されたばかりですが旦那様がお会いしたいとのことです」
まあそうだわな。つーか俺もさっさとやること終わらせたい。あいつと長々顔を合わせにゃならん理由もないし。
「わかった、すぐに行く」
そうして案内された公爵の執務室。ノックもそこそこに入室すれば、相変わらずな公爵がいた。……もうちょっと萎れててくれてもいいんだけどな。親の元気な姿を見てもなんとも思わないこの薄情さが俺からこの男への評価なんだろう。
「ただいま戻りました公爵」
「……う、うむ。話は聞いている。奉仕活動の代表生徒に選ばれたそうだな」
「はい。ですので公爵にこちらの書類へサインをいただきたいのですが」
「構わない。明日渡す故今日はゆっくり休みなさい」
「はい。それでは失礼いたします」
「待て、話はまだ終わっていない」
「……これ以上何かありますか?」
淡々と話す俺にちょっと引き気味の公爵をじーっと見つめてやればなぜかおろおろし始めた。さっさと話さんかい。おっさんがもじもじしても可愛くねえぞ。
「……その、学園では変わりないか?」
「はあ?」
「……い、いや、その、だな……父親としてお前の学園生活の様子を知りたいのだ」
「……父親として、ですか」
すっと目を細めれば俺よりもはるかに鍛えられていると分かる体がびくついた。……しゃきっとしろや。
「……………………夕食の席にでもお話します。それでよろしいですか?」
「! あ、ああ。その時でいい。それまでゆっくりしていろ」
「そうさせていただきます。それでは私はこれで」
話もそこそこにさっさと執務室をあとにして自室へ戻るとそこではサリクスがすでにお茶を入れて待っていた。
「お疲れさまでしたシュヴァリエ様。お元気そうで何よりです」
「お前も変わっていないようで安心した」
「嬉しいです。それにしても急にお戻りになるなんて何かあったんですか?」
「ああ。学園で毎年行われる聖アーダ教国での奉仕活動は知っているよな?」
「ええ……ってもしかしてシュヴァリエ様選ばれたんですか!?」
「そのまさかだ」
「おめでとうございます!」
ほんとに嬉しそうに前のめりで目を輝かせるサリクス。無言で頭を撫でてやれば恥ずかしそうにしながら顔を逸らしわざとらしくコホンと息をはく。
「では今回は公爵様に許可証のサインを戴きに来たのですね」
「ああ。よく許可証のことを知っているな」
「まあこれでも情報を仕入れていますからね! シュヴァリエ様のために!」
「……頼もしいな」
「ありがとうございます! でもそれだとすぐに学園に戻っちゃうんですよね?」
「ああ、明日には戻る」
「……寂しくなりますね」
「何言っている、すぐ近くだろう」
「でも……」
「大丈夫だよ」
「そうですか。……出発はいつになるんですか?」
「一週間後だ。長時間の馬車は疲れるからあまり乗りたくないんだが」
「けっこうすぐですね。頑張ってくださいね!」
やっぱりサリクスはいい奴だな。
その日の夜、学園での様子を公爵に渋々報告しながらの夕食を終えて早朝学園行きの馬車に乗り込む。帰ってきたとき同様サリクスが見送りに来た。
「お気をつけて」
「ありがとう。サリクスも体には気を付けろ」
「はい。……それではシュヴァリエ様、いってらっしゃいませ」
満面の笑顔で見送りをするサリクスに見送られながら学園へ戻る。……なんかあいつにお土産でも買ってくるかな。
目の前では麗しの殿下が後光を背負いながら挨拶を行っている。そのすぐ横にはクオーレとリヒトが。一瞬リヒトと視線が絡み目で合図を出し合う。来て直後だけど帰りたい。
「今年は私を含めここにいる計十名が参加します。短い期間ですがよろしくお願いしますね。それでは早速説明を始めたいと思います」
出発は一週間後、そこから馬車に乗って二週間で聖アーダ教国内に入りそこからさらに二日半で教都・ミステルのミステリア教園に行くそうだ。教園というのは教会にある学園のこと。俺たちはそこの交換留学生として一週間滞在する。その間教会のほうの掃除や教会を訪れる者たちの案内や行事のお手伝いをするそうだ。
「また奉仕期間中に月に一度の聖祈祷が行われますのでそちらの手伝いもしていただくことになります」
聖祈祷は聖女と呼ばれる少女が姿を見せる日でもある。無属性の中でも癒しの力を持った存在をそう呼ぶのだがほんとうに少ない上に大抵は教会に囲われてしまう子だ。姿を見せると言ってもベールで顔を覆っているからお世話係と神官長以外には顔を見せられないんだけどね。
日程は一日目は設備の案内と翌日からの活動内容の説明と交流会。翌日から早速奉仕活動開始になり六日目に聖祈祷が行われ最終日にまた交流会が行われて全日程が終了になるそうだ。起床時間は日の出と同時で就寝は夜の九時。これは厳守らしい。……はい、夜更かし常連はどうすればいいでしょうか! ……夜更かしすんな、ですよね。すみませんでした。
「午前中は授業に参加し実際の奉仕活動は午後からとなります。衣服など必要なものはすべてあちらからの支給になりますので荷物は特に必要ありません。説明は以上です。何か質問のある方はいますか?」
必要なもの全部支給とか気前いいな。まあ下手な物を持ち込ませないようにするためにもその方がいいか。
「ないようですのでこれにて解散となります。最後に各ご家庭にはすでに通達済みですが出発までにご家族の方からこちらの書類にサインをもらってきてください。ご実家が遠い方は学園指定の即達(※誤字にあらず)郵便器をお使いください。説明は以上となります。それでは解散してください」
や~っと終わった……とりあえず今日は帰って寝よ——
「ああ、アウル公子とシュヴァリエ公子は残っていただけますか?」
……てめえ俺になんか恨みある、のは知っているが嫌がらせが過ぎませんかねぇ? 自分でも目が冷え冷えになっているのがわかる。
「シュヴァリエ様、殿下のお誘いに何かご不満でも?」
「まさか。最近お誘いを受ける機会が多くてとても光栄に思っている。君のほうこそそんなに私と話すのが不服ならば案山子の真似をしてみたらどうだ?」
「シュヴァリエ様……それほどお疲れだったのですね。それならば夜更かしはせずお眠りになっては如何ですか? 朝に浴びる冷水はとても気持ち良いですよ?」
「ほう? それはよいことを聞いた。今度君自身で実践してみてもよいだろうか?」
お互い中身を知っても外ではこれまでのリヒトとシュヴァリエで、と決めたからこういうやり取りは継続しているけど前よりもずっと楽しんでいる。だって相手が風車だし。今俺とリヒトの心の声はひとつだ。めっちゃくちゃ楽しい!!!
……なお、俺たちのやり取りを聞いている周囲は攻略対象の二人以外真っ青な顔で物音ひとつ立てないよう静か~に退室していく。……ごめんね巻き込んで。そして俺たち以外の人間が完全にいなくなったタイミングで。
「「その辺にしておいてください/その辺にしておけ」」
お二人から制止が入った。同時にぴたりと言い合いをやめる、いい子の俺たち。……いい子は最初から言い合いしないってどこからか突っ込みが聞こえた気がするがただの気のせいだろう。最近幻聴が多いなぁ。
「本当に毎度毎度よく飽きずにやるものだ」
「まったくです。リヒトあなたもいい加減慣れなさい。これからシュヴァリエ公子との交流は増えることになるのですから」
おい、勝手に決めんなよ。なにそのホラー展開冗談じゃありません! 一瞬リヒト、というか風車の目に憐憫が浮かんだような気がする。やめてぇ~……。
「そうは言われましても私は許しておりませんから。聖アーダでもなにをやらかすやら」
「大丈夫でしょう、私も同行するのですから」
ハイ、シュヴァリエハイイコ二シテマス。
相変わらずのやり取りにため息をつくアウル。お前もいい加減慣れろや。……そんなことよりも。
「殿下、なぜわざわざアウルと私を呼び止めたのですか?」
「ああ、そうでしたね。ではここからは生徒会室で話しましょう」
♦♦♦♦♦♦♦
俺は殿下との話し合いを終えた後すぐに寮へ戻り翌日王都にあるアクナイト邸へ向かった。晩秋から春先までは領地にいるがそれまでは王都にいるのだ。所謂社交シーズンというやつである。この国は気候が他と比べて穏やかだから社交シーズンも長い。
「お帰りなさいませ。お待ちしていましたシュヴァリエ様」
俺を出迎えたのはサリクスだった。顔を見るのは本当に久しぶりである。元気そうで安心した。
「ただいまサリクス」
「ご到着されたばかりですが旦那様がお会いしたいとのことです」
まあそうだわな。つーか俺もさっさとやること終わらせたい。あいつと長々顔を合わせにゃならん理由もないし。
「わかった、すぐに行く」
そうして案内された公爵の執務室。ノックもそこそこに入室すれば、相変わらずな公爵がいた。……もうちょっと萎れててくれてもいいんだけどな。親の元気な姿を見てもなんとも思わないこの薄情さが俺からこの男への評価なんだろう。
「ただいま戻りました公爵」
「……う、うむ。話は聞いている。奉仕活動の代表生徒に選ばれたそうだな」
「はい。ですので公爵にこちらの書類へサインをいただきたいのですが」
「構わない。明日渡す故今日はゆっくり休みなさい」
「はい。それでは失礼いたします」
「待て、話はまだ終わっていない」
「……これ以上何かありますか?」
淡々と話す俺にちょっと引き気味の公爵をじーっと見つめてやればなぜかおろおろし始めた。さっさと話さんかい。おっさんがもじもじしても可愛くねえぞ。
「……その、学園では変わりないか?」
「はあ?」
「……い、いや、その、だな……父親としてお前の学園生活の様子を知りたいのだ」
「……父親として、ですか」
すっと目を細めれば俺よりもはるかに鍛えられていると分かる体がびくついた。……しゃきっとしろや。
「……………………夕食の席にでもお話します。それでよろしいですか?」
「! あ、ああ。その時でいい。それまでゆっくりしていろ」
「そうさせていただきます。それでは私はこれで」
話もそこそこにさっさと執務室をあとにして自室へ戻るとそこではサリクスがすでにお茶を入れて待っていた。
「お疲れさまでしたシュヴァリエ様。お元気そうで何よりです」
「お前も変わっていないようで安心した」
「嬉しいです。それにしても急にお戻りになるなんて何かあったんですか?」
「ああ。学園で毎年行われる聖アーダ教国での奉仕活動は知っているよな?」
「ええ……ってもしかしてシュヴァリエ様選ばれたんですか!?」
「そのまさかだ」
「おめでとうございます!」
ほんとに嬉しそうに前のめりで目を輝かせるサリクス。無言で頭を撫でてやれば恥ずかしそうにしながら顔を逸らしわざとらしくコホンと息をはく。
「では今回は公爵様に許可証のサインを戴きに来たのですね」
「ああ。よく許可証のことを知っているな」
「まあこれでも情報を仕入れていますからね! シュヴァリエ様のために!」
「……頼もしいな」
「ありがとうございます! でもそれだとすぐに学園に戻っちゃうんですよね?」
「ああ、明日には戻る」
「……寂しくなりますね」
「何言っている、すぐ近くだろう」
「でも……」
「大丈夫だよ」
「そうですか。……出発はいつになるんですか?」
「一週間後だ。長時間の馬車は疲れるからあまり乗りたくないんだが」
「けっこうすぐですね。頑張ってくださいね!」
やっぱりサリクスはいい奴だな。
その日の夜、学園での様子を公爵に渋々報告しながらの夕食を終えて早朝学園行きの馬車に乗り込む。帰ってきたとき同様サリクスが見送りに来た。
「お気をつけて」
「ありがとう。サリクスも体には気を付けろ」
「はい。……それではシュヴァリエ様、いってらっしゃいませ」
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批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
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