【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち

文字の大きさ
2 / 31

私、街に来ました!

しおりを挟む
数日後、髪染めをして焦げ茶色の髪をお下げに結ってもらい、侍女を連れて念願の街へ!

お母様が亡くなられてからは街に来たのは初めてで平民街は近寄ったことすら無かったので人の多さに目が回りそうだったのよね。
ちなみにタリアは平民として我が家では不遇の立場だったけれどもここではそれなりに大手のエンドラ商会の3女だったようで屋敷を抜け出してスグに実家の場所を手配していてくれたらしく思った以上にあった距離を歩かずに済んだことには感謝しかないわ。

「リリーお嬢様、そろそろ休憩しませんか?」
奥様って言うとめんどくさいのでリリーという名前で呼び捨てでいいと言ったのだけれどもタリアは頑なに呼んでくれず妥協でお嬢様呼びになったの。
色々なお店があったけれども雑貨屋さんと手芸屋さんでは結構散財してしまったかしら。
管理してくれているタリア曰くこれでも毎月のお手当てが沢山残っているのでこれくらいで散財とは言わないそうよ。

「ねぇ、次はここにしましょうか?」
休憩しようと言われて近くにあったカフェと書いてある素朴な入口のお店に目を惹かれたので入ることにすると、

「いらっしゃいませ。あらあら、可愛らしいお嬢さんがきてくださるなんて久しぶりだわ。ゆっくりしていってね。」
と少し腰の曲がった柔和な笑みを浮かべる老婦人が出迎えてくれたの。
「素敵なお店ね、とっても落ち着く雰囲気が心地いいわ。」
「ええ、派手さがなくホッとするお店ですね。」
タリアもこのお店は初めてだったようだが私と同じように感じていたみたい。

「ふふ、気に入って貰えて嬉しいわ。もうすぐ手放す事になるんだけど、最後にこんなお嬢さんたちに喜んでもらえたことはいい思い出になるわ。」
老婦人は少し寂しそうに言うが、こんな素敵なお店が無くなるなんて!!

「えっ?無くなってしまうの?」
「もう歳だしお客さんもこんな古臭い店には来ないからね。」
「そうなの……あ、私紅茶とスコーンをお願いします。」
「私も同じものをお願いします。」
「かしこまりました。準備しますので少し待っててくださいね。」

「ねぇ、教えて欲しいのだけれども。」
老婦人が厨房に入ったのを確認してから私は侍女に声をかける。

「なんでしょうか?」
「このお店って私のお手当何ヶ月分で買えるのかしら?」
「なっ?!買われるのですか?!」
いつも冷静なタリアも少し動揺をしたようでびっくりする顔なんて初めて見たわ。

「ええ、もし買えるならだけれどもね。」
「土地家屋の相場は詳しくは知らないので金額は多分ということでお話しますが、結論から申し上げると余裕で買えます。」
「あら、ちなみにどこに行けば買えるの?」
「この店の持ち主が売りに出して居なければ持ち主と直接交渉となりますし、売りに出しているのならば商業ギルドに行けば購入はできるとはおもいますが、次の買い手が付いていると少々めんどくさい事にはなるかと思います。」
そうよね、状況によりけりって事ね。
「ちなみに私のお手当てをどれくらい使うのかしら?」
「だいたい2ヶ月ほどかと。」
タリア的には奥様のお手当て代としてはかなり少ない金額なので旦那様の爵位を考えると倍はお手当て出ているはずだしあんな古い別邸に押し込めて侍女は私1人だけって言うのもおかしいとは思っているが、実家で虐げられてきた奥様は物欲がほぼ無いし、ドレスや装飾品に興味が内容でほぼ使っていない。
「ではご婦人が戻ってこられたら買い取りたいことを伝え交渉しましょうね。」
いくらあの老婦人がお人好しだったとしても奥様に交渉を任せるべきでは無いと思ったタリアは自分がと申し出て幸い売りに出す直前だったようで、商業ギルドの査定額にだいぶ色をつけて奥様名義で買い取ったのだった。

老婦人はユリアーナさんと言い、思ったより高値で売れたことに感謝し、翌月引き渡す事に合意し、近隣の村に住む彼女の姉の所に引越しをすると言うので使わない店舗の家具なども追加で買い取りさらに喜んでもらえたのだったが、
それでも奥様のお手当ての3ヶ月分でお釣りが手元に残った。
しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...