【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち

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私、街に行きたいです。

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「はぁぁ」
特にやる事もなく、読みかけの本を膝の上で開いたまま窓越しに青空を眺めため息をついてしまう。
「奥様……」
私を奥様と呼ぶ彼女はタリア。
たった1人だけ付けて貰えた侍女は優秀でありながらも平民出身でわたくしの専属侍女になりたがらないもの達に追いやられるように決まったそう。
「ふふ、実家にいた時は寝る時間がもっと欲しいと思っていたけれども今は寝るのにも飽きてしまうほどだなんて半年前までは考えられなかったわ。」
「だからといって奥様がこの別邸の掃除をされるのはいかがと。」
タリアには私が実家でどういう扱いだったかは話してありそれを聞いた彼女は、『まるで小説のような冷遇をされる家が本当に存在するのですね……』と言っていたわね。

私はリディア・マールブルク(旧姓)18歳、マールブルク伯爵家の長女として産まれたのだけれども政略結婚だった両親の仲は最悪で母が私が10歳の時に風邪を拗らせ亡くなった後は後妻に来た義母との折り合いが良くない。

タリアにオススメしてもらった女性向けの小説には不遇な立場からの逆転劇で身分の尊い方からの寵愛を受け不遇に追いやった人物への『ざまぁ』をしているのだけれども、わたくしが一緒なのは不遇な境遇だけで『ざまぁ』というのは出来ないと思われるわね。

確かに婚姻相手は高位の爵位である侯爵家の嫡男ではあるのだけれども、疎まれている上に顔も見たくないと別邸に追いやられてはいるのよね。
唯一の救いは侍女のタリアや通いの使用人がいて快適な生活を送れているという事かしら。
妻としてどうしても一緒に行かなければ行けない夜会や式典の時のみ出席すればあとはこの別邸で好きにしていろと言い捨て寝室に1人置き去りにされた初夜、翌朝家令に別邸に連れてこられて以来旦那様のお顔は1度も見ていないのだけれども結婚前も数回しかお会いしていない人に愛情など湧くわけも無いので心底どうでも良いとはわたくしも思っているからお互いさまかしらね。

「ふふ、でも顔も見たくない妻にこんなに良くして貰えるとは思わなかったわ。」
実家では義母と妹(義母の娘でわたくしとは腹違い)に使用人扱いされていたのだから世間知らずでもあるのは自覚しているのよ?
お母様が亡くなられる前までに令嬢としてのマナーはほとんど学び終えていたのは幸いだったけれども、元々あまり人付き合いは得意ではなく特に手紙などをやり取りする友人もいた訳では無いので社交界に年に数回出れば良いそうだが、今のところ実家に居たとに義母の作った病弱設定をそのまま流用しているらしく本来出なければならない夜会ですら欠席扱いに旦那様は勝手にしているらしいので私は知らなかった事にしている。
まぁ女嫌いで結婚するつもりがなかったのに周りがうるさくて仕方が無しに結婚した女という立ち位置なので大人しくしているのですが、そろそろ暇ですわ!

「そうだわ!」
「奥様??」
いい事を思いついたわ。
「ねえ、街に行きましょうよ!」
「えっ?」
「家の中に閉じこもっていろとは言われて居ないし、わざわざわ私がいるかどうかなんて確認とっていないんだもの。」
「ですが、護衛も無しに奥様が街になど……」
あ、貴族の奥様だと街に護衛連れていかなければならな言って忘れていたわ。
「私には護衛は元々居ないし、平民として街に行くつもりだから問題無いわ。」
世間知らずなのは自覚しているしその辺を気をつければ私みたいに旦那様にも相手にされないような女は街でも目立たないハズ!(と思ってるのは本人だけでタリアはこの家に来てから栄養もバランスよく取りガリガリだったスタイルもスレンダーになり、ボサボサバリバリの灰色の髪は本来のプラチナブロンドのサラサラヘアーで儚げ美人だから誘拐されそうで心配になっている)

「ね!いいでしょ?でも出来れば街には詳しくないから貴女に案内をお願いしたいの。」
私が世間知らずなのは自覚しているし、彼女に手助けして貰えたら安心よね。

結局タリアが髪の毛の色を変えて変装するのなら街に一緒に来てくれると言ってくれたので彼女が染色粉を用意してくれるのを楽しみに待つ事にしたのだった。
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