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私、街に来ました!
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数日後、髪染めをして焦げ茶色の髪をお下げに結ってもらい、侍女を連れて念願の街へ!
お母様が亡くなられてからは街に来たのは初めてで平民街は近寄ったことすら無かったので人の多さに目が回りそうだったのよね。
ちなみにタリアは平民として我が家では不遇の立場だったけれどもここではそれなりに大手のエンドラ商会の3女だったようで屋敷を抜け出してスグに実家の場所を手配していてくれたらしく思った以上にあった距離を歩かずに済んだことには感謝しかないわ。
「リリーお嬢様、そろそろ休憩しませんか?」
奥様って言うとめんどくさいのでリリーという名前で呼び捨てでいいと言ったのだけれどもタリアは頑なに呼んでくれず妥協でお嬢様呼びになったの。
色々なお店があったけれども雑貨屋さんと手芸屋さんでは結構散財してしまったかしら。
管理してくれているタリア曰くこれでも毎月のお手当てが沢山残っているのでこれくらいで散財とは言わないそうよ。
「ねぇ、次はここにしましょうか?」
休憩しようと言われて近くにあったカフェと書いてある素朴な入口のお店に目を惹かれたので入ることにすると、
「いらっしゃいませ。あらあら、可愛らしいお嬢さんがきてくださるなんて久しぶりだわ。ゆっくりしていってね。」
と少し腰の曲がった柔和な笑みを浮かべる老婦人が出迎えてくれたの。
「素敵なお店ね、とっても落ち着く雰囲気が心地いいわ。」
「ええ、派手さがなくホッとするお店ですね。」
タリアもこのお店は初めてだったようだが私と同じように感じていたみたい。
「ふふ、気に入って貰えて嬉しいわ。もうすぐ手放す事になるんだけど、最後にこんなお嬢さんたちに喜んでもらえたことはいい思い出になるわ。」
老婦人は少し寂しそうに言うが、こんな素敵なお店が無くなるなんて!!
「えっ?無くなってしまうの?」
「もう歳だしお客さんもこんな古臭い店には来ないからね。」
「そうなの……あ、私紅茶とスコーンをお願いします。」
「私も同じものをお願いします。」
「かしこまりました。準備しますので少し待っててくださいね。」
「ねぇ、教えて欲しいのだけれども。」
老婦人が厨房に入ったのを確認してから私は侍女に声をかける。
「なんでしょうか?」
「このお店って私のお手当何ヶ月分で買えるのかしら?」
「なっ?!買われるのですか?!」
いつも冷静なタリアも少し動揺をしたようでびっくりする顔なんて初めて見たわ。
「ええ、もし買えるならだけれどもね。」
「土地家屋の相場は詳しくは知らないので金額は多分ということでお話しますが、結論から申し上げると余裕で買えます。」
「あら、ちなみにどこに行けば買えるの?」
「この店の持ち主が売りに出して居なければ持ち主と直接交渉となりますし、売りに出しているのならば商業ギルドに行けば購入はできるとはおもいますが、次の買い手が付いていると少々めんどくさい事にはなるかと思います。」
そうよね、状況によりけりって事ね。
「ちなみに私のお手当てをどれくらい使うのかしら?」
「だいたい2ヶ月ほどかと。」
タリア的には奥様のお手当て代としてはかなり少ない金額なので旦那様の爵位を考えると倍はお手当て出ているはずだしあんな古い別邸に押し込めて侍女は私1人だけって言うのもおかしいとは思っているが、実家で虐げられてきた奥様は物欲がほぼ無いし、ドレスや装飾品に興味が内容でほぼ使っていない。
「ではご婦人が戻ってこられたら買い取りたいことを伝え交渉しましょうね。」
いくらあの老婦人がお人好しだったとしても奥様に交渉を任せるべきでは無いと思ったタリアは自分がと申し出て幸い売りに出す直前だったようで、商業ギルドの査定額にだいぶ色をつけて奥様名義で買い取ったのだった。
老婦人はユリアーナさんと言い、思ったより高値で売れたことに感謝し、翌月引き渡す事に合意し、近隣の村に住む彼女の姉の所に引越しをすると言うので使わない店舗の家具なども追加で買い取りさらに喜んでもらえたのだったが、
それでも奥様のお手当ての3ヶ月分でお釣りが手元に残った。
お母様が亡くなられてからは街に来たのは初めてで平民街は近寄ったことすら無かったので人の多さに目が回りそうだったのよね。
ちなみにタリアは平民として我が家では不遇の立場だったけれどもここではそれなりに大手のエンドラ商会の3女だったようで屋敷を抜け出してスグに実家の場所を手配していてくれたらしく思った以上にあった距離を歩かずに済んだことには感謝しかないわ。
「リリーお嬢様、そろそろ休憩しませんか?」
奥様って言うとめんどくさいのでリリーという名前で呼び捨てでいいと言ったのだけれどもタリアは頑なに呼んでくれず妥協でお嬢様呼びになったの。
色々なお店があったけれども雑貨屋さんと手芸屋さんでは結構散財してしまったかしら。
管理してくれているタリア曰くこれでも毎月のお手当てが沢山残っているのでこれくらいで散財とは言わないそうよ。
「ねぇ、次はここにしましょうか?」
休憩しようと言われて近くにあったカフェと書いてある素朴な入口のお店に目を惹かれたので入ることにすると、
「いらっしゃいませ。あらあら、可愛らしいお嬢さんがきてくださるなんて久しぶりだわ。ゆっくりしていってね。」
と少し腰の曲がった柔和な笑みを浮かべる老婦人が出迎えてくれたの。
「素敵なお店ね、とっても落ち着く雰囲気が心地いいわ。」
「ええ、派手さがなくホッとするお店ですね。」
タリアもこのお店は初めてだったようだが私と同じように感じていたみたい。
「ふふ、気に入って貰えて嬉しいわ。もうすぐ手放す事になるんだけど、最後にこんなお嬢さんたちに喜んでもらえたことはいい思い出になるわ。」
老婦人は少し寂しそうに言うが、こんな素敵なお店が無くなるなんて!!
「えっ?無くなってしまうの?」
「もう歳だしお客さんもこんな古臭い店には来ないからね。」
「そうなの……あ、私紅茶とスコーンをお願いします。」
「私も同じものをお願いします。」
「かしこまりました。準備しますので少し待っててくださいね。」
「ねぇ、教えて欲しいのだけれども。」
老婦人が厨房に入ったのを確認してから私は侍女に声をかける。
「なんでしょうか?」
「このお店って私のお手当何ヶ月分で買えるのかしら?」
「なっ?!買われるのですか?!」
いつも冷静なタリアも少し動揺をしたようでびっくりする顔なんて初めて見たわ。
「ええ、もし買えるならだけれどもね。」
「土地家屋の相場は詳しくは知らないので金額は多分ということでお話しますが、結論から申し上げると余裕で買えます。」
「あら、ちなみにどこに行けば買えるの?」
「この店の持ち主が売りに出して居なければ持ち主と直接交渉となりますし、売りに出しているのならば商業ギルドに行けば購入はできるとはおもいますが、次の買い手が付いていると少々めんどくさい事にはなるかと思います。」
そうよね、状況によりけりって事ね。
「ちなみに私のお手当てをどれくらい使うのかしら?」
「だいたい2ヶ月ほどかと。」
タリア的には奥様のお手当て代としてはかなり少ない金額なので旦那様の爵位を考えると倍はお手当て出ているはずだしあんな古い別邸に押し込めて侍女は私1人だけって言うのもおかしいとは思っているが、実家で虐げられてきた奥様は物欲がほぼ無いし、ドレスや装飾品に興味が内容でほぼ使っていない。
「ではご婦人が戻ってこられたら買い取りたいことを伝え交渉しましょうね。」
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それでも奥様のお手当ての3ヶ月分でお釣りが手元に残った。
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