【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

（26）

　翌日──

　セーリーヌのもとにアドニス侯爵が訪ねてきた。

　彼は申し訳無さそうな表情をしている。

「すまない……昨日は強引だった。君が欲しくて無理をさせてしまった……」

　申し訳なさそうに謝る彼に対し、セーリーヌは首を横に振って答えた。

「いいえ……とても幸せでしたわ……だから謝らないでください……」

　そう答えた後、ニッコリと微笑む──

　その笑顔を見た彼は安心したような表情を浮かべた後で、言うのだった。

「実は、殿下から近衛騎士団長の任を解かれて、辺境の防備を任されることになった。当分は王都には戻れないだろう……」

　わたしが殿下を拒絶したせいで、左遷させられたのだわ、とセーリーヌは直感した。

「そんな……では、もう二度とお会いできないのですか……？」

　セーリーヌがショックを受けていると、アドニス侯爵は言った。

「いや、できれば、君もいっしょにきてもらえないだろうか…できればで構わないんだ……」

「え……？」

　セーリーヌは戸惑った──

　まさかそのような提案をされるとは思わなかったからだ。

　だが、彼女はすぐに決断した。

　愛する人と共に過ごせるのであれば何処へだって行く覚悟があったからである……。

「わたくしもお供させていただきます」

　そう答えると、彼は嬉しそうに微笑んだ。

　その笑顔が眩しく見えてドキドキしてしまう……。