【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。

第9章：使用人の危機

今日はちょっとした騒動があった。

薬草園で働いている使用人のカミーユが急に倒れたのだ。

最初はただの風邪かと思っていたけれど、彼女の顔色がどんどん悪くなっていって、目がうつろになっていくのを見て、これはただ事ではないと感じた。

医師たちが来て診察をしていたけれど、どうしても原因がわからないようで、皆が焦りだした。

そんな時、私は自然と薬草園の棚にある薬草を思い出した。

「この症状…あの薬草を使えば。」

私は心の中でつぶやき、急いで薬草を探し始めた。

私が薬学に興味を持ち始めたのは、私が大病を患ったのがきっかけで、薬草園で働くのもエドアルドが忙しくてなかなか構ってくれなかったから。

だから、こういうときに自分が何か役立てると、ちょっとだけ胸がスカッとする気がする。

心の中で「やっぱり私、少しは役に立てている！」と思いながら、手際よく薬草を調合して、解毒薬を作り上げた。

「これで、カミーユが回復すればいいけど。」

私は小さく祈るように呟きながら、その薬を彼女に与えた。

しばらくして、カミーユの顔に少しずつ色が戻り、呼吸も安定してきた。

よかった…本当に、よかった。

そして、カミーユが無事回復したことが、王城内で噂になり、私もまた少し注目されることになった。

皆が「リリス様、素晴らしい！」って言ってくれるけれど、その中でエドアルドの顔が一番気になった。

普段は冷静であまり表情を変えない彼が、私に気づいたとき、ほんの少しだけ眉をひそめているのを見逃さなかった。

その夜、私が寝室でくつろいでいると、突然ドアが勢いよく開かれた。

「リリス！」

エドアルドが怒鳴るように呼びかけて、私の方に歩み寄ってきた。

「何を考えているんだ！」

「え？」

私は驚いて立ち上がった。

「どうしたの？」

「どうしたのじゃないだろう！」

エドアルドが少し怒りを含んだ声で言った――。