生まれる前から好きでした。

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26.火花

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 頭上には、青い空が広がっている。爽やかで気持ちがいい朝だ。と、恐らく大勢の人達が感じているだろう。そんな朝だ。
 だが確実に一人、全く爽やかとは縁遠い男がいた。
 その男とは、三峰汐音だ。
 ここ数日浮かない顔をしていたが、今日は特に酷い。まるでこの世の終わりを言い渡されたような表情を浮かべている。理由は分かっていた。
 それは、今日から和真が三泊四日の林間学校に行くからだ。

「何て顔してるんだよ」

 和真は隣を歩く汐音に声を掛けた。汐音は和真と一緒に登校するため、いつもより早く家を出る和真にわざわざ合わせて迎えに来ていた。

「……6日です。6日も会えないんですよ! 何の拷問ですか?」

 苛立ちを滲ませた口調で汐音が心の中を吐き出す。

「辛すぎます……」

 最後は萎れた花のように項垂れてしまった。

「おいおい、6日って何? 3泊だぞ?」

 立ち止まってしまった汐音に、やや慌てながら和真は声をかける。

「研修は3泊かもしれませんが、火曜日から日曜日までまともに会えないんですよ? 私は6日間もどうすればいいのですか?!」
「大袈裟だな」

 呆れたように言う和真を、汐音は恨めしそうにみつめてくる。

「和真さんは林間学校に行きたかったのですか?」
「……あのな、行きたいわけないだろう? 出来る事なら、いつも通り授業を受けて、昼は汐音が作ってくれるおにぎりを食べながらのんびりしていたいんだよ!」

 本心なので感情を込めて言えば、汐音の顔がパッと輝く。

「本当ですか?!」
「もちろん。嘘をつく理由がない」
「では! 林間学校では絶対に隙を見せないでくださいね!」
「隙って何だよ」
「今のような可愛い姿を見せないようにしてください! という意味です」
「……」

 冗談を言っているのかと汐音の顔をまじまじと見つめてみたが、目が真剣だった。和真は僅かにムッとした表情で口を開いた。

「……可愛い姿って何だよ。一度眼医者に行ってこい」
「はぁ~、本当に自覚が無いのですね。一層恨めしいですよ」

 いつもなら和真が嫌がればすぐに謝罪を口にするのに、今日の汐音は悩ましげに溜息を一つ吐き、額に指先を当て軽く頭を振っている。

「ついでに頭の中も見てもらえ」

 理解不能な言動にムッとした和真は、汐音を放置したまま校門の中へと入って行く。

「あ! 待ってください!! 和真さん!!!」

 慌てて汐音が駆け寄って来る。

「おまえはもう教室へ行け!」

 振り向きざま指先を校舎へ向け、和真は汐音に命じる。

「そうそう、一年生は大人しく教室でお勉強してなさ~い」

 突然、背後から覆いかぶされた。そのまま逞しい腕に拘束される。和真は振り返った。背後にいたのは、不敵な笑みを浮かべた福井奏だった。

「今日からずっと一緒だな、和真」

 優越感に満ちた顔で、奏は汐音を見据える。汐音のまとう空気か一気に冷えていく。和真を挟み、汐音と奏の視線が激しく火花を散らしていた。
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