制服の少年

東城

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1章 中学2年生

ーーーーーとうかちゃん

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***

朝日の友達が帰ってから、リビングのソファで話しをした。
「クラスの男子に嫌がらせされているの? そういうことは、僕にきちんと言わないとダメだよ」
「よくわからないけど、たしかに一部の男子から嫌われてるみたい」
「なんでクラス委員長に推薦されたの?」
「クラスの男子にHRで勝手に推薦されちゃって。そうしたら鶴見っちが副委員長に立候補して」
「それ違和感感じる。君、どう見てもクラス委員長って感じじゃないし。鶴見君も」
「鶴見っちは、しっかり者だから、クラスの問題は全部解決」
「どうして君の友達は全員タイプがちがうの? 鶴見君と金髪の派手な友達は、なんなの?」大げさに心配な顔をして桐野は聞いた。
「人を見かけで判断しちゃだめ」
「鶴見君とどうやって友達になったの?」
「まこちゃんの友達だったから」
「まこちゃんて女の子も派手だね」
「やさしくて思いやりのある子だよ」
「不良だからやだ」
「鶴見っちもいいやつだろ? かっこいいし」

高橋という真面目な女の子とラーメン屋の兄弟はまだいいとして、金髪の少女と鶴見は不適格だ。
ツインテールの子も問題ありだが、言動と眼帯が変なだけでワルには見えなかった。

突然のインターホン、じりりり、じりりりと連打している。
「もう、誰だよ」桐野は玄関のドアを開けた。

とうかだった。
「忘れ物ーっ」ずうずうしく上がり込んできた。
ソファーの上のトートバッグをつかむと散らかっているテーブルをちらりと見る。
「私も片付け手伝いますよ」お皿やコップをまとめだす。
「いーよいーよ、僕が洗うから」
「うち父子家庭なんでー、私、家事なれてます」
とうかは食器を手際よくまとめるとトレーに載せてキッチンに向かう。

「とうかちゃん、聞きたいんだけど。朝日に嫌がらせしている男子って?」
「あー、佐倉と東横。あいつら、朝日のことが気に食わないみたいですよ」
「理由を知ってるかな?」
「朝日、目立つし、たまに関西弁でしゃべるじゃないですか。それが気に食わないみたいで」

そんな些細なことで陰湿ないじめが始まるのか。公立校っていやなとこだ。
「あいつら基本小心者だから心配することないですよ。あ、皿洗います」
さっきの調子とうって変わって、とうかは真面目に手伝いをしだした。
けっこうこの子、まともかもと桐野は感心した。
「くだらねーなって思ってさ。私、そいつらに言ってやったんですよ。お前らはその顔で何いきがってんの?って」とうかは、しゃべり続けた。
「そしたらさ。佐倉と東横が私のことをグール厨、厨房って呼び始めてさ」
たしかにその眼帯は変だよねと桐野は心の中でつぶやく。
「朝日が、『そういうこと言うなよ』って怒ったら、生意気だって口喧嘩になって」
「それで?」
「鶴見が、『うっせーなあ』って怒鳴ったら、あのバカども静かになってやんの。うける」
「鶴見君はどうしてグレたんだろう?」
「家庭環境じゃないですか。鶴見はヤンキーだけど、悪いやつじゃないです。授業もまじめに聞いてるし」
鶴見には上に不良の兄が三人いて、長男は伝説の総長で地元の有名人だったらしいと、とうかは教えてくれた。
「高橋さんは?」
「私の友達。コアな文学少女です。まー、高橋も色々あるんですけどね。事情があっておばあちゃんと一緒に住んでるみたいですよ」
一緒に洗い物や片づけしながらとうかに質問を続けた。
「まこちゃんって子は?」
「友達じゃないからよく知らないですが団地に住んでいて。あの髪と化粧で分かる通り、色々あるんじゃないですか」
ラーメン屋の兄弟は別として、家庭環境に問題を抱えている子ばかりだ。朝日と同類の事情を抱えた子が集まる。
子供は敏感だから、雰囲気で察して分かるんだろう。
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