制服の少年

東城

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2章 自宅謹慎

+++++ 保護司

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朝日と鶴見は授業は出なくていい、生徒指導室で保護者が来るまで待ってろと担任に言われた。
二人は生徒指導室で、指導の先生に厳しく怒られた。
鶴見は全然聞いていない。怒られてもそんなの慣れっこで「それが、なによ?」という態度だった。
たまに朝日の肩に手を回して小声で「気にすんなよ」と慰め、二ハハハと笑う。

朝日は膝の上の自分の両手を見る。少し震えている。
(保護者呼んだって。やばいな)
学校で殴り合いの喧嘩してクラスメートに怪我させた。栄に知られたらどうなるのか。
自分がやってしまったことだけど、栄に迷惑かけるとは思わなかった。
五時限目の終わるチャイムが聞こえた。外が騒がしい。下校する一年生や、休み時間の三年生の話し声がガヤガヤ聞こえる。

六時間目が始まって五分ぐらいしただろうか、担任と背広姿の栄が来た。
(顔見れないよ。すごく怒ってるかも)朝日はぎゅっと両手を握りしめた。

栄に理由を聞かれ、朝日はブツブツと言い訳をする。
鶴見が口をはさんできた。
「俺がいるから朝日が悪いことするって言うけどさ、朝日、不良ですよね?」
「だから朝日は、君みたいな不良じゃないんだよ」
「髪伸ばしてるし、ヤンキーですよ」
「君みたいな底辺と違うんだよ」
栄が人にこんな冷たいことを言うのは初めてだった。普段、いやなこと全然言わない人なのに……朝日は悲しくなる。
「栄! 鶴見っちにひどくね?」朝日が鶴見をかばう。
栄は金持ちの家の息子で、確かに底辺層とは明らかに違う。でも、底辺とか嫌な言葉で人を差別することが朝日は許せなかった。スクールカーストとか、くだらない言葉も大っ嫌いだった。

「朝日、去年、傷害事件で逮捕されたんでしょ? 親刺したって本人から聞きました。立派な不良じゃないですか」鶴見が根性座った目で見据えて、中学生なのに大人みたいな口調で栄に言い返す。
鶴見は去年のことは朝日から聞いていた。
「あれはね、正当防衛でやったことで。朝日のほうが被害者だったんだよ」涼しい顔で栄は言う。
「片親、傷害事件、家出、警察、不良の定番じゃないですか!?」
鶴見がへへんと笑って、朝日の髪をぐちゃぐちゃっとヨイ子ヨイ子と撫ぜる。
「ちょっと、やめてよ。鶴見っち」
「中一で傷害事件、すごくね? 今日の飛び蹴りもガチでかっこよかった。これからもよろしくな」

生徒指導の中年の教師が呆れた顔をして栄に言う。
「羽間君はキレると限度ってものがわからなくなるみたいですね。傷害事件のこともあることですし一回、精神鑑定とか病院で診てもらったほうが」

朝日のメンタルがぐらっと縦揺れの地震の様に揺らいだ。
(精神鑑定って。それって僕の頭、おかしいってこと?)
「そんな診断する必要ありません」栄がきっぱりと断ったのが救いだった。
「これ以上、問題行動がエスカレートすると学校側としても」
「つきあう友達が問題なんじゃないですか?」鶴見をいちべつして言った。
ヤンキー特有のひねた目で鶴見は栄を見て、へらへら笑った。
「朝日は俺のダチって決めたんだから、保護司のアンタにとやかく言われる筋合いないよ」
二人ともまったく反省していない、そして三回目の問題行動ということで朝日と鶴見は一週間の謹慎処分になった。
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