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15章 宮前治のアカウント
ーーーーーダイレクトメール
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十一月初旬、桐野も自分のツイッターアカウントを作った。プロフ名はキリコ。
ミヤジのアカウントをフォローして、いいねも沢山した。でもミヤジからは、いいねもフォローのお返しも全くない。
ミヤジの食いつきそうな映画のツイートもした。全然フォローしてくれない。
プロフ名が女みたいだから? 桐子じゃなくて、ドクター・キリコのキリコなのに。
「やっぱり画像上げたり。いいこと言わないとフォローしてくれないのかな」
スマホの画像フォルダーを見ても、朝日のしかない。
もうこれでいいやと、勝手に画像をツイッターにアップした。
# ハロウィーンの仮装
朝日が黒天使の恰好をして床に座り、上目遣いでにっこり微笑んでいる。目の周りは黒のアイシャドウでミーアキャットみたい。グロス入りのピンクの口紅。髪はところどころ金色のラメが入っている。背中に天使の羽を背を負って。体の線ぴったりの化繊のタンクトップ。黒い半ズボンで裸足。
次の日、自分のアカウントをチェックすると通知が来ていた。
【ミヤジさんがあなたのツイートにいいねしました。】
日本は朝七時、ドイツは夜の十二時。
時差はあるが地球のどこかでつながっていることに感動する。
調子に乗って別の画像もアップする。
# ハロウィーンの画像
こんどは朝日が両手でハートマークを作ってる画像、ちょっと笑いが引きつってるけど、可愛いからいい!! きっと気に入ってくれるに違いない。
お昼休みに、別の通知が届いていた。
【ミヤジさんがあなたのツイートをリツイートしました】
「クロウって映画思い出した。ハロウィーンの仮装かわいい」
もっと画像をアップしよう。
# 記念日のお祝い。わーい
朝日がはにかんでイチゴのケーキの前でピースしている画像。
「これ可愛いからアップ」
加工もせずに本人の承諾も得ず勝手にネットに上げている。
ツイート後に思い出した。
(これ、夏休みに精通したお祝いの記念写真だ。)
もちろん桐野が朝日の精通をしてあげた。
下半身裸の朝日がちょこんと膝の上に座って、手で施してあげたこと。
朝日のはじめての男になれてすごく嬉しかった。その時のこと思い出して頬が火照ってきた。
ケーキと御馳走で盛大にお祝いした思い出の画像。
(朝日、すごく怒るだろうな。でも黙っていれば分からないからいいや)
***
ある日、朝日が言った。
「大介のお店で食べるのやめる」
「どうして?」
「なんか中華料理とかラーメン飽きちゃったし。会いたくないお客さんがいて」
「お客さん?」
「僕にやたら話しかけてくる人で、うざい」
「そうだね。そういう不審な人がいるなら、もう行かないほうがいいかもね」
「塾の日は学校帰りにスーパーでお弁当か何か買って家で食べる」
「それがいいね。その不審な人って中年のおじさんかな?」
「中年じゃないけど大人だよ」
── やっぱりそういう人って、身近にいるんだ。
先月、少年好きな変なおじさんには気をつけるように教えておいて正解だった。
こういう喚起も保護者の務めだから【みんなのお約束】をもっと指導しておかなければと強く感じた桐野であった。
「高橋なんだけど、昨日、おばあさんが亡くなって」
「高橋さんの?」
「とうかが言ってたけど、高橋、もしかして転校するかもって。ちょっと寂しいね」
「お通夜に行かなくていいの?」
「家族葬というか直葬にするからお通夜とかないみたいだって、とうかが言ってた」
朝日は、じゃあもう寝るからと自分の部屋に行ってしまった。
***
次の日、七時きっかりに仕事が終わり、急いでコートを着て駐車場に向かう。
エレベーターの中でツイッターをチェックしたいが、周りに病院のスタッフや先輩がいるのでやめておいた。
外はすっかり暗い。この一年いろいろあったなと朝日の顔を思い浮かべる。今日は火曜だから今頃、塾で勉強しているだろう。
車はいつも同じところに停めてある。外車や高級車には興味がない桐野の車は国産メーカーの普通のファミリー・カーだった。
自分の車の横で、ツイアカをチェックする。
【ミヤジさんにフォローされました。】
三週間の努力がやっと報われた。
「やっと宮前と繋がった! ネット上だけど!」桐野は、スマホを握りしめて、感動のあまり大きな声で独り言を言う。
幸い、周囲には誰もいなかった。
その日から調子に乗って、毎日何回もツイートする。映画の話はやめた。季節のことや東京で流行っていることなど連続ツイートした。
十二月に入ってからというものミヤジのツイアカはまったく更新されない。
もう、そろそろいいかと思ってダイレクトメールを送ってみた。
■ 宮前へ
突然、ごめんね。
桐野栄之助だよ。覚えてるかな?中高の時分、友達だった桐野。ツイッターのアカウントは同級生の本田君から教えてもらったよ。
返信希望!
次の日、昼休みチェックを入れると返信が来ていた。
■ 栄へ
ひさびさ。
キリコは栄だったんだー。(^▽^)/
てっきり写真の子だと思ってたよ。
大量いいねとRTで、うわーっ(◎_◎;)しつこい人だなって(;´Д`)
最初は警戒していたけど、(||゚Д゚)ヒィィィ!
写真見たら十代の子なんだと思ってフォローしちゃったよ。
また後でメールするね!(^^)!
── 桐野は速攻で返信する。
■ 宮前へ
フォローしてもらいたくて迷惑かけてしまってごめんね。
海外赴任はどう?
── 二分後に返事が返ってきた。
■ 栄へ
後でラインで話そう。
東京、昼の十二時半。ベルリンは朝の五時半。
「海外と日本間でラインで話せるんだ。すごい。でも時差があるから、時間を調整しないと」また独り言を言っていた。
病棟の廊下で突っ立ってブツブツ呟いて、ニコニコしている桐野に若い看護師が振り返って言った。
「今日はご機嫌ですね。何か素敵なことでもあったんですか?」
「海外の親友からメールが来たので、嬉しくて」
「その方もドクターですか?」
「エリート商社マン」
***
指定された日の朝六時、ベッドで寝っ転がりながら待っていると、ラインで宮前が通話してきた。
「やあ、栄」
記憶の中の懐かしい声はまだ残っていた。中学、高校三年と六年間もいつも聞いていたあの明るい声。一九歳の時の声と同じ声だった。向こうはどう思っているのだろうか。
「そっちは深夜だよね」どきどきしながら聞いた。
「そうだよ、十一時」
「日本は朝の六時だよ。おはよう」
「八年ぶりなのに、こうやって話せるのが不思議だね」
「あの時はごめん。医大で色々あって、忙しかったし、精神的に疲れてたのかも」
「いいよ。別に気にしてないし。たぶん勉強が大変なんだろうと思ってた」
まるで以前のように普通に会話しているのが奇跡だ。
宮前の声も話し方も全く変わっていない。
でも心なしか元気がない。きっと仕事で疲れ切っているのだろう。
「仕事はどう?」
「今日もすごく疲れた。ずっと体調も悪いし。ドイツの気候と食べ物、合わないんだ。もうこっちすごく寒くてさ。雪が降ってるよ」
「どうしたのかな?」
「腹痛いし、夜もよく眠れない。朝の三時に目が覚めるんだ」
「医者に診てもらったの?」
「うん」
「寝る前に通話して欲しいなんて無理なお願いしてごめん」
「日本語で話したかったし別にいいよ」
「今夜はよく眠れるといいね。じゃあ、おやすみ。明日もこの時間に通話してきてもいいからね。待ってるから」
「うん。頑張って寝れるように努力してみる。それじゃ」
がちゃ。
すごい、すごい。ドイツにいる宮前とラインした。前と全然変ってない。これからまた友達として付き合える、嬉しくて心が弾む。
ご機嫌で朝ごはんを作る。ごはんは土鍋で炊こう。そのほうが速いし美味しい。
卵焼きはお砂糖を投入して甘くして、後はホウレンソウのお味噌汁。
ご飯が炊き終わり、ちょうどいいタイミングで朝日があくびしながらパジャマ姿でやってきた。
「あれ、今日はご飯とお味噌汁なんだ。いつもはパンなのに卵焼きもある」
「うん。ちょっと嬉しいことがあってね。和食の朝ごはんもいいかなって思って」
席に着いて「いただきます」と朝日は食べだした。
「どんどんおかわりしてね」
「なんか、ご機嫌だね」不思議そうな顔して朝日は尋ねる。
「さっき親友とラインで話してた」
「随分早起きな人なんだね」
「ドイツにいるんだよ」
「へー、ラインってすごいね。海外通話も無料なんだ。親友ってどんな人?」
桐野は、のろけだした。
中高一緒だった友達で、明るくて、スポーツ万能で、面倒見が良くて、クラスの人気者。父親が大企業の社長で、スーパーお坊ちゃまなのに全然気取ってなくて、気さくで、顔も良くて、性格も良くて、サッカー部の副部長でみんなに慕われて。
話聞きながら、朝日はごはんを食べている。
「宮前が帰国したら、会いに行こうよ」
「会ってどうするの?」
「一緒に食事でもしよう」
「僕のことどう紹介するの?」
「僕がお世話している子」
「それでもいいけど」
朝日は食べ終わると元気なく「ごちそうさま」と箸をおく。
しゅんとして、目をぱちぱちして泣きそうな朝日に気が付いて、桐野は「どうしたの?」と尋ねる。
「その人、僕とまるで正反対だ。生まれたときから運命って決まってるのかなってちょっと悲しくなっちゃって」
「そんなことないよ」
「その人、勝ち組で、僕、負け組」
「自己肯定感が低すぎだよ」
桐野はテーブルの上のスマホをとると、カメラの用意をし聞いた。
「写真撮っていい?」
「パジャマ着てるし、寝ぐせついてるし」
「可愛いから別にいい」
「うー、なんか恥ずかし」
「ピースしてにっこり笑って」
パシャリと、朝日の写真を撮る。
朝日は学校の準備があるからとお茶碗の片付けもせずにそそくさと自分の部屋に戻ってしまった。
自分のアカウントに『おはよう、話せて楽しかったね。また待ってる』さっきの朝日の画像をアップする。
すぐに宮前からハートマークの通知が届いた。
【ミヤジさんがあなたのツイートにいいねしました。】
ミヤジのアカウントをフォローして、いいねも沢山した。でもミヤジからは、いいねもフォローのお返しも全くない。
ミヤジの食いつきそうな映画のツイートもした。全然フォローしてくれない。
プロフ名が女みたいだから? 桐子じゃなくて、ドクター・キリコのキリコなのに。
「やっぱり画像上げたり。いいこと言わないとフォローしてくれないのかな」
スマホの画像フォルダーを見ても、朝日のしかない。
もうこれでいいやと、勝手に画像をツイッターにアップした。
# ハロウィーンの仮装
朝日が黒天使の恰好をして床に座り、上目遣いでにっこり微笑んでいる。目の周りは黒のアイシャドウでミーアキャットみたい。グロス入りのピンクの口紅。髪はところどころ金色のラメが入っている。背中に天使の羽を背を負って。体の線ぴったりの化繊のタンクトップ。黒い半ズボンで裸足。
次の日、自分のアカウントをチェックすると通知が来ていた。
【ミヤジさんがあなたのツイートにいいねしました。】
日本は朝七時、ドイツは夜の十二時。
時差はあるが地球のどこかでつながっていることに感動する。
調子に乗って別の画像もアップする。
# ハロウィーンの画像
こんどは朝日が両手でハートマークを作ってる画像、ちょっと笑いが引きつってるけど、可愛いからいい!! きっと気に入ってくれるに違いない。
お昼休みに、別の通知が届いていた。
【ミヤジさんがあなたのツイートをリツイートしました】
「クロウって映画思い出した。ハロウィーンの仮装かわいい」
もっと画像をアップしよう。
# 記念日のお祝い。わーい
朝日がはにかんでイチゴのケーキの前でピースしている画像。
「これ可愛いからアップ」
加工もせずに本人の承諾も得ず勝手にネットに上げている。
ツイート後に思い出した。
(これ、夏休みに精通したお祝いの記念写真だ。)
もちろん桐野が朝日の精通をしてあげた。
下半身裸の朝日がちょこんと膝の上に座って、手で施してあげたこと。
朝日のはじめての男になれてすごく嬉しかった。その時のこと思い出して頬が火照ってきた。
ケーキと御馳走で盛大にお祝いした思い出の画像。
(朝日、すごく怒るだろうな。でも黙っていれば分からないからいいや)
***
ある日、朝日が言った。
「大介のお店で食べるのやめる」
「どうして?」
「なんか中華料理とかラーメン飽きちゃったし。会いたくないお客さんがいて」
「お客さん?」
「僕にやたら話しかけてくる人で、うざい」
「そうだね。そういう不審な人がいるなら、もう行かないほうがいいかもね」
「塾の日は学校帰りにスーパーでお弁当か何か買って家で食べる」
「それがいいね。その不審な人って中年のおじさんかな?」
「中年じゃないけど大人だよ」
── やっぱりそういう人って、身近にいるんだ。
先月、少年好きな変なおじさんには気をつけるように教えておいて正解だった。
こういう喚起も保護者の務めだから【みんなのお約束】をもっと指導しておかなければと強く感じた桐野であった。
「高橋なんだけど、昨日、おばあさんが亡くなって」
「高橋さんの?」
「とうかが言ってたけど、高橋、もしかして転校するかもって。ちょっと寂しいね」
「お通夜に行かなくていいの?」
「家族葬というか直葬にするからお通夜とかないみたいだって、とうかが言ってた」
朝日は、じゃあもう寝るからと自分の部屋に行ってしまった。
***
次の日、七時きっかりに仕事が終わり、急いでコートを着て駐車場に向かう。
エレベーターの中でツイッターをチェックしたいが、周りに病院のスタッフや先輩がいるのでやめておいた。
外はすっかり暗い。この一年いろいろあったなと朝日の顔を思い浮かべる。今日は火曜だから今頃、塾で勉強しているだろう。
車はいつも同じところに停めてある。外車や高級車には興味がない桐野の車は国産メーカーの普通のファミリー・カーだった。
自分の車の横で、ツイアカをチェックする。
【ミヤジさんにフォローされました。】
三週間の努力がやっと報われた。
「やっと宮前と繋がった! ネット上だけど!」桐野は、スマホを握りしめて、感動のあまり大きな声で独り言を言う。
幸い、周囲には誰もいなかった。
その日から調子に乗って、毎日何回もツイートする。映画の話はやめた。季節のことや東京で流行っていることなど連続ツイートした。
十二月に入ってからというものミヤジのツイアカはまったく更新されない。
もう、そろそろいいかと思ってダイレクトメールを送ってみた。
■ 宮前へ
突然、ごめんね。
桐野栄之助だよ。覚えてるかな?中高の時分、友達だった桐野。ツイッターのアカウントは同級生の本田君から教えてもらったよ。
返信希望!
次の日、昼休みチェックを入れると返信が来ていた。
■ 栄へ
ひさびさ。
キリコは栄だったんだー。(^▽^)/
てっきり写真の子だと思ってたよ。
大量いいねとRTで、うわーっ(◎_◎;)しつこい人だなって(;´Д`)
最初は警戒していたけど、(||゚Д゚)ヒィィィ!
写真見たら十代の子なんだと思ってフォローしちゃったよ。
また後でメールするね!(^^)!
── 桐野は速攻で返信する。
■ 宮前へ
フォローしてもらいたくて迷惑かけてしまってごめんね。
海外赴任はどう?
── 二分後に返事が返ってきた。
■ 栄へ
後でラインで話そう。
東京、昼の十二時半。ベルリンは朝の五時半。
「海外と日本間でラインで話せるんだ。すごい。でも時差があるから、時間を調整しないと」また独り言を言っていた。
病棟の廊下で突っ立ってブツブツ呟いて、ニコニコしている桐野に若い看護師が振り返って言った。
「今日はご機嫌ですね。何か素敵なことでもあったんですか?」
「海外の親友からメールが来たので、嬉しくて」
「その方もドクターですか?」
「エリート商社マン」
***
指定された日の朝六時、ベッドで寝っ転がりながら待っていると、ラインで宮前が通話してきた。
「やあ、栄」
記憶の中の懐かしい声はまだ残っていた。中学、高校三年と六年間もいつも聞いていたあの明るい声。一九歳の時の声と同じ声だった。向こうはどう思っているのだろうか。
「そっちは深夜だよね」どきどきしながら聞いた。
「そうだよ、十一時」
「日本は朝の六時だよ。おはよう」
「八年ぶりなのに、こうやって話せるのが不思議だね」
「あの時はごめん。医大で色々あって、忙しかったし、精神的に疲れてたのかも」
「いいよ。別に気にしてないし。たぶん勉強が大変なんだろうと思ってた」
まるで以前のように普通に会話しているのが奇跡だ。
宮前の声も話し方も全く変わっていない。
でも心なしか元気がない。きっと仕事で疲れ切っているのだろう。
「仕事はどう?」
「今日もすごく疲れた。ずっと体調も悪いし。ドイツの気候と食べ物、合わないんだ。もうこっちすごく寒くてさ。雪が降ってるよ」
「どうしたのかな?」
「腹痛いし、夜もよく眠れない。朝の三時に目が覚めるんだ」
「医者に診てもらったの?」
「うん」
「寝る前に通話して欲しいなんて無理なお願いしてごめん」
「日本語で話したかったし別にいいよ」
「今夜はよく眠れるといいね。じゃあ、おやすみ。明日もこの時間に通話してきてもいいからね。待ってるから」
「うん。頑張って寝れるように努力してみる。それじゃ」
がちゃ。
すごい、すごい。ドイツにいる宮前とラインした。前と全然変ってない。これからまた友達として付き合える、嬉しくて心が弾む。
ご機嫌で朝ごはんを作る。ごはんは土鍋で炊こう。そのほうが速いし美味しい。
卵焼きはお砂糖を投入して甘くして、後はホウレンソウのお味噌汁。
ご飯が炊き終わり、ちょうどいいタイミングで朝日があくびしながらパジャマ姿でやってきた。
「あれ、今日はご飯とお味噌汁なんだ。いつもはパンなのに卵焼きもある」
「うん。ちょっと嬉しいことがあってね。和食の朝ごはんもいいかなって思って」
席に着いて「いただきます」と朝日は食べだした。
「どんどんおかわりしてね」
「なんか、ご機嫌だね」不思議そうな顔して朝日は尋ねる。
「さっき親友とラインで話してた」
「随分早起きな人なんだね」
「ドイツにいるんだよ」
「へー、ラインってすごいね。海外通話も無料なんだ。親友ってどんな人?」
桐野は、のろけだした。
中高一緒だった友達で、明るくて、スポーツ万能で、面倒見が良くて、クラスの人気者。父親が大企業の社長で、スーパーお坊ちゃまなのに全然気取ってなくて、気さくで、顔も良くて、性格も良くて、サッカー部の副部長でみんなに慕われて。
話聞きながら、朝日はごはんを食べている。
「宮前が帰国したら、会いに行こうよ」
「会ってどうするの?」
「一緒に食事でもしよう」
「僕のことどう紹介するの?」
「僕がお世話している子」
「それでもいいけど」
朝日は食べ終わると元気なく「ごちそうさま」と箸をおく。
しゅんとして、目をぱちぱちして泣きそうな朝日に気が付いて、桐野は「どうしたの?」と尋ねる。
「その人、僕とまるで正反対だ。生まれたときから運命って決まってるのかなってちょっと悲しくなっちゃって」
「そんなことないよ」
「その人、勝ち組で、僕、負け組」
「自己肯定感が低すぎだよ」
桐野はテーブルの上のスマホをとると、カメラの用意をし聞いた。
「写真撮っていい?」
「パジャマ着てるし、寝ぐせついてるし」
「可愛いから別にいい」
「うー、なんか恥ずかし」
「ピースしてにっこり笑って」
パシャリと、朝日の写真を撮る。
朝日は学校の準備があるからとお茶碗の片付けもせずにそそくさと自分の部屋に戻ってしまった。
自分のアカウントに『おはよう、話せて楽しかったね。また待ってる』さっきの朝日の画像をアップする。
すぐに宮前からハートマークの通知が届いた。
【ミヤジさんがあなたのツイートにいいねしました。】
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