新緑の少年

東城

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過去の記憶

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「置いてきぼりなんて慣れてるから。ほら、よくさ、僕だけおいて外食行っちゃったとか、親にそういうことされてたから」
朝日、君にはかなしい思い出しかないの?
一人ぼっちで散らかった部屋で膝を抱えている姿が思い浮かんだ。
誕生日も祝ってもらえずに、ひとりぼっち。家族からは邪険にされて、寒いのに裸足で。
『今日、僕の誕生日、なのに誰も祝ってくれない』
膝を抱えて京都の楽しかった思い出を回想する。
気が付くと涙がこぼれていて。
でも誰も手を差し伸べてくれる人もいなくて。
もっと寂しいことや嫌なことたくさんあったんだろうね。
学校でも一人ぼっちだったって、三浦先生言っていたし。
「三浦先生のお願い聞いてあげたら、僕と一万回デートしてくれるかな?」
「やだなあ。何言ってんだよ」恥ずかしそうに笑った。
後ずさりする朝日を抱きしめる。僕はまじめに言ってるんだよ。
もう絶対離さない。二人でもっとたくさん楽しい思い出を作ろう。
ケーキ食べ放題でも、ホテルビュッフェでも、お寿司食べ放題でも、どこでも行きたいとこに連れて行ってあげる。
遊園地も映画も行こう。ドライブも行こう。
春休みは君の生まれ故郷の京都に行こう。
「この先、ずーっとずーっと僕と一緒にいてくれるかな?」
「わかったよう。ちょっと、強くぎゅーぎゅーしすぎ。痛い」
慌てて腕をほどいた。
「じゃあ一度だけ、三浦先生とお出かけしよう。ただ映画みてお茶して帰ってくるだけだからね。一人で留守番、さびしくないかな?」
「もうなに言ってんだよ。大介の家に遊びに行くから大丈夫だよ。心配しすぎだって」
「朝日、聞いていいかな? 三浦先生と僕どっちが好き?」
「栄に決まってるじゃないか」ぶっきらぼうに朝日が答えた。
胸の中が薔薇色になる。
そっか、そっか、僕のほうが好きなんだね。
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