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第36話 「新時代」
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ミリアを倒し、多くのものを失った。
だが、いつまでも感傷に浸っているわけにはいかなかった。
目の前にはあまりにも多くのやるべきことが山積している。
王国各地の結界の再構築はもちろんのこと、魔物の対策に王都の治安回復など、あげればキリがない。
ミリアという首魁を失ったアイアンメイデンはもはや抵抗することなく辺境騎士団連合に投降した。
国王はミリアの術でほとんど回復の見込みがないほどに意志能力を喪失しており、これもまた騎士団の保護下という名目の下、実質的には退位同然の扱いとなった。
事実の流れを示すと実に簡単な顛末に思えてしまうが、実際には困難な道のりだった。
すべては、ミリアが斃れた後のカイルの迅速な行動からはじまった。
事態を遠巻きに見回していた群衆や騎士たちに向かって大音声で宣言したのだ。
「国王陛下やアイアンメイデンは魔女ミリアによって操られていた!しかしここに今、精霊女王エレナ様によって魔女ミリアは倒された!精霊女王エレナ様万歳!」
たちまち辺境騎士団たちが「精霊女王エレナ様万歳!」と唱和するとたちまちその輪はさざなみのように群衆へと広がっていく。
もともと私に同情的だったのもあって、たちまち首都は「精霊女王エレナ様万歳」の声に包まれた。
その熱情が自分に向けられたものだという実感はなかなか湧かなかった。
精霊女王...そんな大層な名前に自分は相応しいのだろうか。
「カイル...私はどうすればいいのかな」
「...勝手に祀りあげてしまったことをお許しいただきたい。しかし貴女の安全を確保するためには、これが一番だと思います。そしてこの国と民を再び統合し、導けるのは貴女しかいないのも事実だと思う」
「ええ...見事な手腕だわ。...でも、私を祀りあげた責任はーきちんと取ってもらいますからね」
そう言って私はカイルの手をしっかりと握った。
武人らしい硬い無骨な手だがー暖かく、大きい。
その手が、無言でしっかりと握り返してくる。
それがーきっとカイルなりの返事なのだろう。
それから先はめまいのするような怒涛の日々がはじまった。
国境を無防備にしておくわけにはいかないので辺境騎士団をある程度返しつつ、レイン隊長の協力を得て王都警備隊を掌握し、王都近辺の治安回復に努めた。
一部の高位な封建貴族たちは私の存在に疑義を示したが、ムーン公が奮闘して古文書を引っ張り出し、かつてこの国が聖霊女王によって治められていた事実と、私自身の力を示すことで表面的には決着がついた。
前王には子供がおらず、王位継承権を持つ者たちも長引く宮廷闘争の中でほとんど姿を消していたのも大きかった。
わずかに生き延びていた者たちは、血みどろの権力闘争に嫌気がさしていたのか、私の即位をむしろ後押しする人たちばかりだった。力を欲する者もいれば、力に倦む者もいるのだ。
もちろんそれで完全に火種がなくなったわけではないが、もともと政治に興味がなく存在感の薄かった前王の治世に不安や不満が溜まっていたことに加えて、例のエルヴェスタ子爵令嬢による政治工作も効果抜群だった。
騒動が沈静化した後、私が真っ先にお礼を言いに行ったのが彼女だった。
エルヴェスタ子爵令嬢は活力に溢れた瞳と鋭い舌鋒を兼ね備え、それでいて見た目はしとやかな美人という、女の私からみてもどうにも羨ましい存在だった。
「エレナ様、ようやく会えましたね!影ながらご心配申し上げておりました」
「ありがとうございます。私が王都警備隊に身柄を預けたあの日のご恩は生涯忘れません」
そういって頭を下げると、エルヴェスタ子爵令嬢は快活に笑った。
「そのお礼にと言ってはなんですけれど、これからも貴女を支える立場でいさせてくださいね」
宮廷や政治に疎い私に取って、その申し出はまたとないものだった。
そうしてエルヴェスタ子爵令嬢は私の侍従長になり、新たに設けられた内閣の首班となったムーン公と二人三脚で私を支えてくれている。どうやら二人の仲もいい感じに進展しているらしいが、どうみてもムーン公が尻に敷かれているのは間違いなかった。
国防や治安はカイルが取り仕切り、内政はムーン公、貴族たちの慰撫や王宮内の取り仕切りはエルヴェスタ子爵令嬢が担うという体制のもと、私たちの国づくりは再始動をはじめていた。
だが、いつまでも感傷に浸っているわけにはいかなかった。
目の前にはあまりにも多くのやるべきことが山積している。
王国各地の結界の再構築はもちろんのこと、魔物の対策に王都の治安回復など、あげればキリがない。
ミリアという首魁を失ったアイアンメイデンはもはや抵抗することなく辺境騎士団連合に投降した。
国王はミリアの術でほとんど回復の見込みがないほどに意志能力を喪失しており、これもまた騎士団の保護下という名目の下、実質的には退位同然の扱いとなった。
事実の流れを示すと実に簡単な顛末に思えてしまうが、実際には困難な道のりだった。
すべては、ミリアが斃れた後のカイルの迅速な行動からはじまった。
事態を遠巻きに見回していた群衆や騎士たちに向かって大音声で宣言したのだ。
「国王陛下やアイアンメイデンは魔女ミリアによって操られていた!しかしここに今、精霊女王エレナ様によって魔女ミリアは倒された!精霊女王エレナ様万歳!」
たちまち辺境騎士団たちが「精霊女王エレナ様万歳!」と唱和するとたちまちその輪はさざなみのように群衆へと広がっていく。
もともと私に同情的だったのもあって、たちまち首都は「精霊女王エレナ様万歳」の声に包まれた。
その熱情が自分に向けられたものだという実感はなかなか湧かなかった。
精霊女王...そんな大層な名前に自分は相応しいのだろうか。
「カイル...私はどうすればいいのかな」
「...勝手に祀りあげてしまったことをお許しいただきたい。しかし貴女の安全を確保するためには、これが一番だと思います。そしてこの国と民を再び統合し、導けるのは貴女しかいないのも事実だと思う」
「ええ...見事な手腕だわ。...でも、私を祀りあげた責任はーきちんと取ってもらいますからね」
そう言って私はカイルの手をしっかりと握った。
武人らしい硬い無骨な手だがー暖かく、大きい。
その手が、無言でしっかりと握り返してくる。
それがーきっとカイルなりの返事なのだろう。
それから先はめまいのするような怒涛の日々がはじまった。
国境を無防備にしておくわけにはいかないので辺境騎士団をある程度返しつつ、レイン隊長の協力を得て王都警備隊を掌握し、王都近辺の治安回復に努めた。
一部の高位な封建貴族たちは私の存在に疑義を示したが、ムーン公が奮闘して古文書を引っ張り出し、かつてこの国が聖霊女王によって治められていた事実と、私自身の力を示すことで表面的には決着がついた。
前王には子供がおらず、王位継承権を持つ者たちも長引く宮廷闘争の中でほとんど姿を消していたのも大きかった。
わずかに生き延びていた者たちは、血みどろの権力闘争に嫌気がさしていたのか、私の即位をむしろ後押しする人たちばかりだった。力を欲する者もいれば、力に倦む者もいるのだ。
もちろんそれで完全に火種がなくなったわけではないが、もともと政治に興味がなく存在感の薄かった前王の治世に不安や不満が溜まっていたことに加えて、例のエルヴェスタ子爵令嬢による政治工作も効果抜群だった。
騒動が沈静化した後、私が真っ先にお礼を言いに行ったのが彼女だった。
エルヴェスタ子爵令嬢は活力に溢れた瞳と鋭い舌鋒を兼ね備え、それでいて見た目はしとやかな美人という、女の私からみてもどうにも羨ましい存在だった。
「エレナ様、ようやく会えましたね!影ながらご心配申し上げておりました」
「ありがとうございます。私が王都警備隊に身柄を預けたあの日のご恩は生涯忘れません」
そういって頭を下げると、エルヴェスタ子爵令嬢は快活に笑った。
「そのお礼にと言ってはなんですけれど、これからも貴女を支える立場でいさせてくださいね」
宮廷や政治に疎い私に取って、その申し出はまたとないものだった。
そうしてエルヴェスタ子爵令嬢は私の侍従長になり、新たに設けられた内閣の首班となったムーン公と二人三脚で私を支えてくれている。どうやら二人の仲もいい感じに進展しているらしいが、どうみてもムーン公が尻に敷かれているのは間違いなかった。
国防や治安はカイルが取り仕切り、内政はムーン公、貴族たちの慰撫や王宮内の取り仕切りはエルヴェスタ子爵令嬢が担うという体制のもと、私たちの国づくりは再始動をはじめていた。
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