黒獅子の愛でる花

なこ

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第七章

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「とてもお似合いです、ルイ王子。」

正装したルイの佇まいは、やはりライの血を引くためか、幼さの中にも風格が感じられる。

きりりとした表情をふわりと緩めたルイに、サフィアも笑みを返す。

この数ヶ月は怒涛の日々だった。

ライに言いつけられた通り、一度通訳として務めると、その後も何度かそういった場に呼ばれるようになった。

ルイは不服そうだったが、理由を伝えると渋々ながらも送り出してくれた。

訪れてくる各国独特の言い回しや、文化、慣習を何度も浚い、この国との政治的な繋がりについても改めて勉強し直した。

ルイには王族特有のしきたりに関する教育が施されるようになり、サフィアも傍でそれを学んだ。

並行して、ライの生母の祖国である東国に関する知識も少しずつルイに学ばせた。

目まぐるしい日々ではあったが、余計なことを考える暇もないぐらい、サフィアにとっては充実した毎日だった。

「サフィアも似合ってます。」

ルイにそう言われ、サフィアは改めて自分の姿を見回す。

今日は、ルイのための祝祭だ。

ルイの側で通訳兼従者としてお仕えする。

完璧に手筈は整えてきたはずなのに、サフィアは当日何を着るべきか、その点だけを失念していた。

慌ててエリクに相談すると、それがライの耳にも入り、ルイの仕立てと同時にサフィアの正装まで仕立て上げてくれた。

側から見れば全く派手さはないものの、それはこれまでサフィアが身に纏って来たものの中では、一番華やかなものだった。

「…派手ではないでしょうか?従者がこのような…」

「全然派手ではないですよ。王子の祝祭なのですから、少しは華やかさも必要です。」

様子を見に来ていたエリクからそう言われ、そう言えば仕立て屋も同じようなことを言っていたとサフィアは思い当たった。

どんな時でも、目立たないことだけを求められてきたサフィアは、さわさわとして落ち着かない気持ちがした。

「…まあ、サフィア様なら何をお召しになっても目立つでしょうがね。」

エリクの小さな呟きは、サフィアの耳には届いていない。

余計なことを考えずに今日まできたが、向かい合うべきことは、今日向こうからやって来る。

王妃と、家族と、リヒトと…

この王城に、今日は全員が集うのだ。

「…サフィア。」

見上げるルイの、小さな手を取る。

ほんのりと温かいその手を握った時、この小さな手に助けられているのはむしろ自分の方だと、サフィアは実感した。




祝祭は盛大に執り行われた。

王宮はどこもかしこも華やかに飾り付けられ、着飾った人々で溢れ返っている。

心地よい音楽が奏でられ、テーブルを彩る料理は次から次へと運ばれる。

床も壁も、食器もテーブルも何もかもが艶やかに磨き上げられ、一点の曇りも見当たらない。

その中心にいるのは、ライと王妃と、そしてルイだ。

賓客が次から次へと、祝詞を述べに三人の元を訪れる。

ルイは落ち着いて対応している。

ここに来るまでは緊張した様子だったが、そんな素振りは一切垣間見えない。

そんなルイの様子にサフィアは目を細めた。

王妃は賓客たちに、にこやかに応えている。

可憐なその姿からは、を送って来た人物が王妃だったとは想像がつかない。

やはり、何かの間違いだったのかもしれない。

ライは今日も悠々とした佇まいで、この場にいる誰よりも目を引いている。

外交の場で、ライは驚くほど流暢に異国の言葉を話し、各国の状況を把握していた。

黒獅子などと呼ばれ、武人と言う印象が先行しがちだが、サフィアはライと過ごす度に、その知識量の深さに感銘を受けるようになっていた。

すっとライがこちらを向いたような気がして、慌てて目を逸らす。

ライに見つめられると、サフィアは何故かそわそわと落ち着かない気持ちがするのだ。

もう一度顔を上げて、ルイの様子を窺おうとしたところで、サフィアはおもわず息を呑んだ。

二人が共に来ることは、分かっていたことだ。

分かっていても、少しばかり動揺する自分の気持ちを落ち着けるように、数回深呼吸をする。

慣れた様子で隣りの奥方をエスコートするのは、まぎれもなく、リヒトだ。

二人が時折視線を交わし合う姿はとても自然で、お互いに慈しみ合っている雰囲気が漂っている。

以前のリヒトなら、この場で誰よりも真っ先にサフィアの元へ駆けつけて、そして…

あんな風に、笑いかけてくれただろうに。




















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