追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第17話:魔王の末裔と、将軍の出陣

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 帝国・北部前線拠点。
 夜の闇を裂いて、軍靴の音が響き渡っていた。

「部隊、前進開始。目標:旧フェンリース村、再接触予定72時間以内」

 整然と進むのは、帝国精鋭部隊《黒翼兵団》。
 その先頭を歩くのは、金髪の将軍、ラグナ=ベイル。

「命令は明確だ。対象、ユリウス=グレイは“排除”。生死は問わず。
 村の構造、住人の有無も関係ない。……“火種”は、完全に消せとさ」

 副官が顔を曇らせる。

「ですが、村には非戦闘民も——」

「戦火に巻き込まれる覚悟もない者が、魔王の元に近づくな。
 ……俺たちは、秩序を守る“牙”だ」

 そう言って、ラグナは夜の闇に向けて笑う。
 その目には、理性よりも、獣の本能に近い“興奮”が浮かんでいた。

 一方その頃、フェンリース村。

 ユリウスは、村の中心に新たな結界陣を描いていた。
 それは、外敵の侵入を完全に遮断する“広域多重魔術障壁”。

 その設計は、もはや村という枠を超えた“要塞”そのものだった。

「セラ。監視陣、東と南の両方に設置できたか?」

「うん。森の外れまで魔力糸を伸ばした。動く気配があればすぐわかるよ」

「よし、上出来だ」

 ユリウスは空を見上げた。
 雷雲が広がり、風が変わる。戦の“気配”が、村を包み始めていた。

 村の宿舎では、避難民たちが緊張の面持ちで集まっていた。

「ここも……戦場になるのか?」
「俺たちは、また逃げなきゃいけないのか……?」

 そんな空気の中、リリアが静かに立ち上がる。

「どうか、信じてください。私たちは逃げません。
 ここは“ただの村”ではない。……ユリウス様と、皆で創る“未来の拠点”です」

 その言葉に、誰かが小さく頷いた。
 やがて、その輪が少しずつ広がっていく。

 夜。
 ユリウスは焚き火の前で、剣を研ぎながらフレアに語りかける。

「……ラグナが来る。帝国で最も“戦を楽しむ男”だ。
 しかも、奴の中にも“異質な血”が流れている」

 フレアが唸り、炎が小さく爆ぜた。

「……だが、退くつもりはない。ここはもう、俺だけの場所じゃないからな」

 そのとき、結界の外に微かな“圧”が届いた。
 重く、獣のような気配。帝国軍の先遣隊。

 ユリウスは立ち上がり、静かに呟く。

「始まるぞ」
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