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1章
第19話:戦端、開かれる
しおりを挟む未明。
夜の静けさを破ったのは、帝国軍の軍鼓だった。
森の木々が揺れ、空を覆うように黒い影が迫る。
それは、帝国精鋭部隊《黒翼兵団》。先頭に立つラグナ=ベイルの瞳が、赤く輝いていた。
「全軍、進軍開始。第一波、突撃陣を展開。標的は結界中央、ユリウス=グレイ」
「応!」
大地を揺らして魔導機兵が進み、投槍部隊が一斉に結界へ向けて魔法付きの槍を投げ放った。
フェンリース村、結界内部。
ユリウスは、すでに魔力陣を起動していた。
「起動。反射制御式・七重障壁、展開開始」
槍が空を裂いて降り注ぐ――だがその全てが、結界に触れる寸前、弾かれ、砕け、爆風とともに消えていく。
自動迎撃結界。帝国の最新兵器ですら通用しない“防御魔術の極致”。
「……初撃で探ってきたか。では、こちらも答えてやる」
ユリウスが指を弾くと、村の外周に設置された【重力転化陣】が起動。
突撃していた前衛の兵士たちが、急激な重力の変化に膝を折った。
「足元をすくわれることの、恐ろしさを教えてやろう」
村の上空では、フレアが炎を纏いながら旋回していた。
彼の背には、セラが乗っている。
「よし、フレア! 援護砲撃!」
フレアが大きく口を開き、空中から爆炎を放つ。
その火球は地上に落下し、敵陣の一角を一瞬で焼き払った。
「た、竜だ! こっちを見てるぞ!」
「隊を分けろ! 魔導槍を空に向け——ぐあッ!!」
敵兵たちが混乱する中、セラは空から地形を観察し、敵の死角と弱点をユリウスへ伝える。
「三時方向、魔導機の後方が手薄! あそこ狙える!」
「了解。精度補正、通す」
ユリウスが地面を掌で打つと、地脈を這う魔力が爆ぜ、地面から噴き出す光の刃が敵の機兵を切り裂いた。
それでも、敵は止まらない。
帝国軍将軍・ラグナが一歩、前に出た。
その体から漏れ出す魔力は、兵士たちとは比にならない。
「なるほど……結界も罠も強力だ。
だが――“力”が全てを塗り潰すこともあるんだよ、魔王の末裔」
彼の手に収束する、漆黒の雷。
それは、魔族の血を引く者にしか使えない“禁呪”だった。
「喰らえ。魔滅雷《クラウ・ド・ラグナ》」
雷が空を裂き、村の結界に直撃する。
激しい音と光。結界が一瞬だけ軋み、魔力が暴走しかける。
「……これが、“将軍”の力……!」
セラが息を呑む。フレアが不安げに翼をすぼめる。
ユリウスはすぐに結界を再構築しながら、目を細める。
「まだだ……これは、ただの“挨拶”だ」
開戦は、まだ始まりにすぎない。
次に来るのは、ラグナの本格侵攻――そして、“魔王”への挑戦。
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