追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

文字の大きさ
19 / 70
1章

第19話:戦端、開かれる

しおりを挟む

 未明。
 夜の静けさを破ったのは、帝国軍の軍鼓だった。

 森の木々が揺れ、空を覆うように黒い影が迫る。
 それは、帝国精鋭部隊《黒翼兵団》。先頭に立つラグナ=ベイルの瞳が、赤く輝いていた。

「全軍、進軍開始。第一波、突撃陣を展開。標的は結界中央、ユリウス=グレイ」

「応!」

 大地を揺らして魔導機兵が進み、投槍部隊が一斉に結界へ向けて魔法付きの槍を投げ放った。

 フェンリース村、結界内部。
 ユリウスは、すでに魔力陣を起動していた。

「起動。反射制御式・七重障壁、展開開始」

 槍が空を裂いて降り注ぐ――だがその全てが、結界に触れる寸前、弾かれ、砕け、爆風とともに消えていく。

 自動迎撃結界。帝国の最新兵器ですら通用しない“防御魔術の極致”。

「……初撃で探ってきたか。では、こちらも答えてやる」

 ユリウスが指を弾くと、村の外周に設置された【重力転化陣】が起動。
 突撃していた前衛の兵士たちが、急激な重力の変化に膝を折った。

「足元をすくわれることの、恐ろしさを教えてやろう」

 村の上空では、フレアが炎を纏いながら旋回していた。
 彼の背には、セラが乗っている。

「よし、フレア! 援護砲撃!」

 フレアが大きく口を開き、空中から爆炎を放つ。
 その火球は地上に落下し、敵陣の一角を一瞬で焼き払った。

「た、竜だ! こっちを見てるぞ!」

「隊を分けろ! 魔導槍を空に向け——ぐあッ!!」

 敵兵たちが混乱する中、セラは空から地形を観察し、敵の死角と弱点をユリウスへ伝える。

「三時方向、魔導機の後方が手薄! あそこ狙える!」

「了解。精度補正、通す」

 ユリウスが地面を掌で打つと、地脈を這う魔力が爆ぜ、地面から噴き出す光の刃が敵の機兵を切り裂いた。

 それでも、敵は止まらない。

 帝国軍将軍・ラグナが一歩、前に出た。
 その体から漏れ出す魔力は、兵士たちとは比にならない。

「なるほど……結界も罠も強力だ。
 だが――“力”が全てを塗り潰すこともあるんだよ、魔王の末裔」

 彼の手に収束する、漆黒の雷。
 それは、魔族の血を引く者にしか使えない“禁呪”だった。

「喰らえ。魔滅雷《クラウ・ド・ラグナ》」

 雷が空を裂き、村の結界に直撃する。

 激しい音と光。結界が一瞬だけ軋み、魔力が暴走しかける。

「……これが、“将軍”の力……!」

 セラが息を呑む。フレアが不安げに翼をすぼめる。

 ユリウスはすぐに結界を再構築しながら、目を細める。

「まだだ……これは、ただの“挨拶”だ」

 開戦は、まだ始まりにすぎない。
 次に来るのは、ラグナの本格侵攻――そして、“魔王”への挑戦。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...