追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第43話:精霊の審判と、選ばれる願い

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 空が鳴った。
 風がうねり、水が逆巻き、大地が脈を速める。
 それは精霊たちが“意志”を持ち始めた合図だった。

 フェンリース村の空に、五つの光の柱が立ち上る。

 それは各属性を司る上位精霊たちが現世へ顕現し、
 「二人の巫女、どちらを支持するか」を宣言する儀式――精霊の審判の始まりだった。

 リリアは中央に立ち、背後にはユリウス、セラ、カレン、そして村の精霊たちが静かに見守っている。

 五柱の精霊が、順に名を告げた。

「風の精霊王、サリア。――我は、リリアに従う」
 柔らかく、それでいて鋭い声。

「水の精霊王、ネルトゥ。――我もまた、調停の巫女を選ぶ」
 静かな水面のような声。

 リリアの中で、そっと胸が温かくなる。

「……ありがとう」

 だが続く声は、冷たかった。

「火の精霊王、ゼル=イグナス。――我は、エルフィアを支持する」
「土の精霊王、ドルヴァ。――同じく、門の封印こそ均衡と見る」
「雷の精霊王、アリスタ。――未定。判断を保留する」

 空気がぴんと張りつめる。

「三対二……いや、“一保留”という形ね」
 カレンが呟いた。

「つまり、雷の精霊が決断すれば、この場で均衡が崩れる可能性がある」

 その時、空間がひずんだ。

 “雷の精霊アリスタ”が、人の姿を取って舞い降りる。
 真っ白な髪と、黄金の瞳を持つ少年の姿。

「巫女、リリア=フェンリース」
「……はい」

「問おう。“調停”とは何か。“開かれた門”が争いを招いたとき、あなたはそれをどうする?」

 リリアは答える。

「調停とは、閉じることでも、従わせることでもありません。
 対話し、受け止め、必要ならば――一緒に痛みを背負うことです」

 その言葉に、風が静かに流れる。
 雷の精霊アリスタは、ほんのわずかに目を細めた。

「……よかろう。では、我が力も“そなた”に預けよう」

 その瞬間、三対二。リリア側に軍配が上がる。

 けれどそれは勝敗ではなかった。

 ――**選ばれた“責任”**だった。

「リリア=フェンリース。あなたに“精霊調和の鍵”を託す」
 五柱が一斉に、彼女の前で膝を折るように頭を垂れる。

 彼女の背に、新たな紋章が浮かび上がる。
 それは巫女としての証を超えた、**精霊の守護者(アーク・シェルター)**の印。

 その光を遠くの空で見ていた、エルフィアがぽつりと呟く。

「……選ばれたのね。
 でも私は、まだ信じられない。開かれた門が、“本当に未来へ続く”なんて」

 次に会うとき、彼女は敵か、同志か。

 リリアの選択は、まだ終わっていなかった。
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