追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第42話:揺れる門、精霊たちの選び直し

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 門の揺れは、世界全体へと波紋のように広がっていた。
 風が流れを変え、水はうねりを見せ、大地の鼓動すら不安定になり始めている。

 フェンリース村。
 リリアはその中心に立ち、精霊たちのざわめきを受け止めていた。

「……彼らは迷っています。私と、エルフィア――どちらの“声”に応えるかを」

 ユリウスが横で腕を組む。

「つまり、精霊の中でも“分かれ始めた”ということか」

 リリアはうなずいた。

「精霊は個であり群です。統一された意志ではなく、“選択”を持っています。
 だからこそ、彼らは今、それぞれの考えで――“選び直して”いる」

 セラが眉をひそめる。

「じゃあ……下手すると、“暴走”とか“敵対”とか起こりうるってこと?」

「……ありえます。
 特に、封印の役割を支持していた精霊たちは、エルフィアに傾く可能性が高い」

 そのとき、村の北西から風の使いが飛び込んできた。

「報告! 北の精霊域で、土の精霊が自律暴走状態に入りました!
 現地の防衛陣が機能していません!」

 空気が一変した。

「まさか……もう“行動”に出たのか」
 ユリウスの声に、リリアは静かに頷いた。

「……“言葉”だけでは届かない相手もいる。
 それを受け止める覚悟も……巫女の役目です」

 一方その頃、東の渓谷。

 エルフィアは小高い丘から空を見上げ、目を閉じていた。

「揺れ始めたわね、精霊たち。……選んで。私か、リリアか」

 その背後に現れた、黒い羽根を持つ風の精霊が口を開く。

「我が王よ。我らはあなたに従う。破滅であれ封印であれ、あなたが導くならば」

「ありがとう。でも、破滅は望んでいない。
 ただ、“均衡”を――正しく戻したいだけ」

 その言葉に、他の精霊たちも静かに集まり始める。
 リリアとは異なるやり方で、エルフィアもまた“精霊の信頼”を得始めていた。

 そして、ついに風が告げた。

「選定が始まります。調停と封印、二つの巫女に――世界が答えを返す時です」

 リリアは目を閉じ、深く息を吐いた。

「……来てください。私の声に応えてくれる精霊たち。
 対話の道を、もう一度、選んでほしい」
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