25 / 105
第一章 人生って何が起こるかわからない
25
しおりを挟む
午後は、使用人一人一人にクッキーを渡して歩いた。 庭にも出て、自分が育てている薬草畑に足を運んだ。庭の端っこで目立たない場所に、キャスティナが庭師に頼んで植えてもらった薬草。この薬草も摘んで持って行きたいけど、無理だよね·····。やっとここまで育てたんだけどな、残念だわ。キャスティナは、独学でポーションの作り方を学んだ。癒し系魔法が使える自分なら、普通の魔力保持者が作るものよりも質のよいポーションが作れるのではと考えたからだ。キャスティナは、助けたいと思った時に、助けられる自分でありたいと自分の力について色々試したり調べたりした。ポーションもその一つで何年もかかって、完成させた。取り合えず、作り方は覚えたし必要な事が起これば何とかなるか。薬草の花壇から庭の中心に視線を移す。昔は、この庭でお母さまとお茶を飲んだし。ルイスが幼い頃は、お義母さまに隠れて一緒に遊んだりしたのよね。懐かしいな。キャスティナは、しばらく庭を眺めていた。
部屋に戻ると、エーファが部屋にいた。
「お嬢様、ただ今より短い期間ですが侍女に戻ります。よろしくお願いします」
エーファが頭を下げる。涙ぐんでいた。
「エーファ、泣かないで。最後にエーファと過ごせてうれしいわ。久しぶり過ぎて、どうやって過ごしてたか忘れちゃったわね」
「毎日楽しかったです。それだけはしっかり覚えてますよ」
エーファが笑って答えた。
「ふふふ。それは、私も覚えてる。では、エーファ。私、令嬢としての勘を少しでも取り戻したいからよろしく頼むわね。取り合えず、ドレスを着て夕飯食べるわ」
「はい。かしこまりました」
それから、夕飯までの間にお辞儀の練習をした。
夕飯を食べにダイニングに行くと、ルイスが先に座っていた。
「ルイス、ごめんね。待たせちゃったかな?」
「いえ。僕も今来たところなので」
ルイスは、お義母様譲りのピンク色のふわふわの髪に濃い茶色の瞳をしている。幼い頃は、くったくなく笑う可愛い弟だったのに……。いつからだろう。何を考えてるのかわからない、表情のない視線を私に向けるようになったのは。お父様やお義母様と一緒にいるルイスを見ないからわからないけど、普段はどんな子なんだろうか?この屋敷を去る事になって、一番の心配はルイスの事だ。私は、漠然といつかはこの家からいなくなるだろうと思っていたけど、ルイスは跡取り息子だからここから離れる事はないだろう。それがこの子にとって幸せな事だといいけれど……。
「では、頂きましょう」
二人でお祈りをして、食べ始める。二人で向かい合って座っているのに、会話はない。これが私達の当たり前。私が、こんな風にしてしまった。寂しさだけが、胸に残った。食べ終わった後に、ルイスに声をかけた。
「ルイス。明日の夕飯の後に少し時間をもらえない?久しぶりに居間で話したい事があるの」
ルイスは、びっくりした顔をしている。
「僕とお姉さまが、話?でも……」
「お父様とお母様は、今日から三日間は夜会だから大丈夫。帰って来るまでの少しの時間でいいの」
「わかりました。では、僕は部屋に戻ります」
「ありがとう。では、明日ね。おやすみなさい。ルイス」
キャスティナは、優しい姉の顔で言った。
ルイスは、照れたように小さな声で「おやすみ」と言って足早に部屋を出ていった。
ああ。こんな簡単な事で良かったんだ。両親がいない時ぐらい、普通に兄弟の会話をすれば良かった。おはよう。おやすみ。ってもっと言えば良かった。まだ、ルイスは9才なのに……私がもっとお姉ちゃんにならなきゃいけなかったんだ。私は、この家からいなくなってしまうけどルイスとは繋がっていたい。それがわかって良かった。生きてれば、遅いなんて事はきっとないはずだから。
部屋に戻ると、エーファが部屋にいた。
「お嬢様、ただ今より短い期間ですが侍女に戻ります。よろしくお願いします」
エーファが頭を下げる。涙ぐんでいた。
「エーファ、泣かないで。最後にエーファと過ごせてうれしいわ。久しぶり過ぎて、どうやって過ごしてたか忘れちゃったわね」
「毎日楽しかったです。それだけはしっかり覚えてますよ」
エーファが笑って答えた。
「ふふふ。それは、私も覚えてる。では、エーファ。私、令嬢としての勘を少しでも取り戻したいからよろしく頼むわね。取り合えず、ドレスを着て夕飯食べるわ」
「はい。かしこまりました」
それから、夕飯までの間にお辞儀の練習をした。
夕飯を食べにダイニングに行くと、ルイスが先に座っていた。
「ルイス、ごめんね。待たせちゃったかな?」
「いえ。僕も今来たところなので」
ルイスは、お義母様譲りのピンク色のふわふわの髪に濃い茶色の瞳をしている。幼い頃は、くったくなく笑う可愛い弟だったのに……。いつからだろう。何を考えてるのかわからない、表情のない視線を私に向けるようになったのは。お父様やお義母様と一緒にいるルイスを見ないからわからないけど、普段はどんな子なんだろうか?この屋敷を去る事になって、一番の心配はルイスの事だ。私は、漠然といつかはこの家からいなくなるだろうと思っていたけど、ルイスは跡取り息子だからここから離れる事はないだろう。それがこの子にとって幸せな事だといいけれど……。
「では、頂きましょう」
二人でお祈りをして、食べ始める。二人で向かい合って座っているのに、会話はない。これが私達の当たり前。私が、こんな風にしてしまった。寂しさだけが、胸に残った。食べ終わった後に、ルイスに声をかけた。
「ルイス。明日の夕飯の後に少し時間をもらえない?久しぶりに居間で話したい事があるの」
ルイスは、びっくりした顔をしている。
「僕とお姉さまが、話?でも……」
「お父様とお母様は、今日から三日間は夜会だから大丈夫。帰って来るまでの少しの時間でいいの」
「わかりました。では、僕は部屋に戻ります」
「ありがとう。では、明日ね。おやすみなさい。ルイス」
キャスティナは、優しい姉の顔で言った。
ルイスは、照れたように小さな声で「おやすみ」と言って足早に部屋を出ていった。
ああ。こんな簡単な事で良かったんだ。両親がいない時ぐらい、普通に兄弟の会話をすれば良かった。おはよう。おやすみ。ってもっと言えば良かった。まだ、ルイスは9才なのに……私がもっとお姉ちゃんにならなきゃいけなかったんだ。私は、この家からいなくなってしまうけどルイスとは繋がっていたい。それがわかって良かった。生きてれば、遅いなんて事はきっとないはずだから。
100
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。
涙を流して見せた彼女だったが──
内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。
実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。
エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。
そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。
彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、
**「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。
「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」
利害一致の契約婚が始まった……はずが、
有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、
気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。
――白い結婚、どこへ?
「君が笑ってくれるなら、それでいい」
不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。
一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。
婚約破棄ざまぁから始まる、
天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー!
---
婚約破棄されたら、辺境伯とお試し結婚することになりました
ミズメ
恋愛
婚約者を妹に奪われ、悪女として断罪された公爵令嬢フィオレッタ・グラシェルは、王都を追われ、身分を隠して辺境の町で静かに暮らしていた。ある日、迷子の少女ティナと出会い、川辺で花を摘み笑い合うひとときを過ごす。そこに現れたのは、ティナを捜していた辺境の若き領主ヴェルフリート・エルグランドだった。
ティナに懐かれたフィオレッタは子育てのために契約結婚をすることに。ティナの子守りをしながら、辺境で自らの才覚を発揮していくフィオレッタに、ヴェルフリートや領地の人々も惹かれていく。
「俺は、君を幸せにしたい」
いずれ幸せになる、追放令嬢のお話。
・感想いただけると元気もりもりになります!!
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
二度目の人生は離脱を目指します
橋本彩里(Ayari)
恋愛
エレナは一度死に戻り、二度目の人生を生きることになった。
一度目は親友のマリアンヌにあらゆるものを奪われ、はめられた人生。
今回は関わらずにいこうと、マリアンヌとの初めての顔合わせで倒れたのを機に病弱と偽り王都から身を遠ざけることにする。
人生二度目だから自身が快適に過ごすために、マリアンヌと距離を取りながらあちこちに顔を出していたら、なぜかマリアンヌの取り巻き男性、死に戻り前は髪色で呼んでいた五人、特に黒いのがしつこっ、……男たちが懐いてきて。
一度目の人生は何が起っていたのか。
今度こそ平穏にいきたいエレナだがいつの間にか渦中に巻き込まれ――。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる