秘密の多い令嬢は幸せになりたい

完菜

文字の大きさ
74 / 105
第三章 誰にでも秘密はある

3-14

しおりを挟む
「王族が嫌いか·····デビュタントの時にそれを感じたか·····。キャスティナの凄さを感じるよ」

 アルヴィンが、呟いた。

「そうじゃな。まぁー、キャスティナの場合、色々な経験をしてるからのー。普通の令嬢と比べられんよ。それで、何で姿を消したんじゃ?」

 デズモンドが、キャスティナに尋ねる。

「貴族社会から逃げたくなって。サディアス殿下に対して、怒りが収まらなくて。エヴァン様にも、どこまで説明すればいいかわからなかったし。ただのティナになって考えたかったんです。考えて少し充電したら、ちゃんと戻るつもりでしたよ」

 キャスティナは、三人の顔を気まずそうに見る。

「そうか·····。貴族社会か·····。逃げる先まで用意があって、私やコーンフォレス家が探し出せなかったんだからキャスティナには、負けるよ」

 アルヴィンが、呆れているのか笑っている。

「あの場所は、キャスティナにとって特別な場所じゃからな。迎えに行った時の顔が、スッキリした良い顔じゃったよ」

「はい。ゆっくり考えられましたし。デズモンドお祖父様に会えましたから。皆さんに心配させて申し訳なかったですが·····私としては収まる所に収まりました」

 キャスティナが、にっこり笑顔になる。

「あの、私はもう少し癒し系魔法について聞きたいんだけど、いいかな?」

 ローレンスが尋ねる。

「はい。話せる事なら」

「大怪我を治す程の魔法を、どうやって習得したんだい?流石に、何もせずって訳ではないと思うんだが」

 キャスティナは、神妙な顔つきに変わる。

「ローレンス様のおっしゃる通りです。母を亡くしてから、独学で学んで練習しました」

 キャスティナは、 途切れ途切れ、当時を思い出しながら話し出した。

 母を亡くしてから少しして、もう大切な人を亡くしたくない。守りたいって強く思うようになった。母を亡くした時に、折角癒し系魔法が使えるのに何も役に立てなかった自分にがっかりした。こんなんじゃダメだって思って、この国で一番大きな図書館に行って魔法について調べた。調べるだけでは、実践で使えないから、どこかに練習出来る場所がないか考えた。

 考えた結果、この王都にいくつかある診療所に行く事にした。貴族が使う様な立派な所ではなくて、お金がない人が使う最低限の医療しか受けれないような所を選んで。

 患者が運ばれて来るのを見ると、一人になる隙をついて魔法をかけて練習した。最初の頃は、上手く行かない事だらけだった。重症患者の多くは、助けられなくて命を落として行った。

「私·····、たくさんの人の死に立ち会いました。最初の頃は、今考えると魔力の量が足りてなかったんだと思います。人の死を見送る度に、もう止めようって何回も思ったんだけど、どうしても止められなくて。半年、一年と続けるうちにようやっと成功するようになったんです」

 キャスティナは、当時を思い出して目頭が熱くなっていた。

 話を聞いていた三人は、それぞれ言葉を失っていた。内容があまりに予想外で、当時まだ13歳か14歳だったはずの女の子が今聞いた内容の事をやってのけた事実に驚愕していた。

「私は、大切な誰かを守る為に頑張ったんです。国が戦う為になんか何で使わなきゃいけないのかって、冗談じゃないって。サディアス殿下には、怒りしかないです」

 キャスティナは、目を真っ赤にしてローレンスに向かって厳しい目付きを向けた。

 キャスティナは言わなかったが、この時に記憶を抜き取る魔法も合わせて練習していた。だから、治療した患者は死亡した者以外は、誰もキャスティナの事を覚えていなかった。

「そうか·····。キャスティナ嬢、話してくれてありがとう。君の言い分はよくわかるよ。君は、決して間違ってない」

 ローレンスが優しくキャスティナに語りかける。

「ああ。全くだ。キャスティナは、流石私の妹分だけの事はある。素晴らしいな」

 アルヴィンは、しきりに感心していた。

「キャスティナ、よく君の秘密を話してくれた。君が言う様に、とてつもなく慎重に扱わなくてはいけない内容だ。サディアス殿下の事、と言うより王族の事について、君には話しておいた方がいいと私は思う。四大公爵家には、王族に関する秘密があるんだ。この事は、限られた人間しか知らない事だ」

 デズモンドが、ローレンスとアルヴィンに目配せをする。二人とも了承を示すように頷いた。

「ただ、今日はもう早くコーンフォレス家に帰った方がいい。みんな首を長くして待ってるから。この話は、後日改めてゆっくり話そう。悪いが、どちらか送って行ってくれ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係

ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi
恋愛
 若様がお戻りになる……  イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。  王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。  リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。  次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。  婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。  再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……   * 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました  そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです

処理中です...