7 / 16
第7話(シャノーラ視点)
しおりを挟む
その時、神殿の中に、私の世話をする役目の侍女が入って来た。
侍女はふわふわの髪の毛を揺らして、緊張感の欠片もない顔で挨拶する。
「どうも~、シャノーラ様~、今日も、退屈なお役目頑張ってますか~? ご苦労様です~」
ちっ。なんなのよ、いったい。
昼下がりのこの時間帯は、少しぼおっとして集中力が乱れやすいから、誰も入るなって言ってあるのに。
はぁ……私、この侍女、嫌いなのよね。
天然で、何考えてるか分かんないところが、どことなくお姉様に似てるから。
だいたい、言動がおかしいのよ。
一応、聖女の世話をする役目を与えられるくらいだから、高等な教育を受けた人材でしょうに、どういう脳みそしてたら、『退屈なお役目頑張ってますか~?』なんて言葉が出てくるのよ。
私は不快感を隠しもせず、横目で侍女を睨み、言う。
「ちょっと、今は特に集中したい時間だから、神殿に入って来るなって、あらかじめ言っておいたでしょ」
「はい~、承知しています~、お役目、ご苦労様です~」
「『承知しています~』じゃないわよ! 承知してるなら、なんで入って来たの! だいたいねぇ、私は聖女よ? あんたより、目上の存在なのよ? そういう相手には、『ご苦労様』じゃなくて、普通、『お疲れ様』って言うのよ!」
「はあ、そうですか~、それじゃ、シャノーラ様、お疲れ様」
「『です』をつけなさい! もっと失礼な感じになったでしょうが! 『お疲れ様です』までで、1セットなのよ!」
「ええ~、面倒だなあ~」
「『です』つけるくらい、別に面倒じゃないでしょ!? あんた、敬語を何だと思ってるの!?」
「は~い……シャノーラ様、お疲れ様……です。はぁ、めんどくさ」
ああああ!
イライラする!!
こいつと話してると、頭に血が上って、集中力が乱れるわ!!!
落ち着きなさい、私。
こういう時は、深呼吸よ。
吸って……
吐いて……
吸って……
吐いて……
よし、落ち着いたわ。さすが私。優秀な女。
平静に戻った私は、軽く息を吐き、言う。
「で、何の用なの? 手短に言いなさい」
「えぇ~、手短って言われても~、何事も説明するには手順というものがありますし~」
あああああああ!
この間延びした喋り方!!
お姉様を思い出して、イラつくううううううう!!!
せっかく落ち着いた心が、またしても乱れてしまい、その事実が、余計に私を苛立たせた。駄目よ私、このままじゃ駄目駄目……波ひとつない水面のように、心を静めるのよ……静かな気持ちで、とっとと用件を聞いて、こんな奴、追い出してしまいましょう。
侍女はふわふわの髪の毛を揺らして、緊張感の欠片もない顔で挨拶する。
「どうも~、シャノーラ様~、今日も、退屈なお役目頑張ってますか~? ご苦労様です~」
ちっ。なんなのよ、いったい。
昼下がりのこの時間帯は、少しぼおっとして集中力が乱れやすいから、誰も入るなって言ってあるのに。
はぁ……私、この侍女、嫌いなのよね。
天然で、何考えてるか分かんないところが、どことなくお姉様に似てるから。
だいたい、言動がおかしいのよ。
一応、聖女の世話をする役目を与えられるくらいだから、高等な教育を受けた人材でしょうに、どういう脳みそしてたら、『退屈なお役目頑張ってますか~?』なんて言葉が出てくるのよ。
私は不快感を隠しもせず、横目で侍女を睨み、言う。
「ちょっと、今は特に集中したい時間だから、神殿に入って来るなって、あらかじめ言っておいたでしょ」
「はい~、承知しています~、お役目、ご苦労様です~」
「『承知しています~』じゃないわよ! 承知してるなら、なんで入って来たの! だいたいねぇ、私は聖女よ? あんたより、目上の存在なのよ? そういう相手には、『ご苦労様』じゃなくて、普通、『お疲れ様』って言うのよ!」
「はあ、そうですか~、それじゃ、シャノーラ様、お疲れ様」
「『です』をつけなさい! もっと失礼な感じになったでしょうが! 『お疲れ様です』までで、1セットなのよ!」
「ええ~、面倒だなあ~」
「『です』つけるくらい、別に面倒じゃないでしょ!? あんた、敬語を何だと思ってるの!?」
「は~い……シャノーラ様、お疲れ様……です。はぁ、めんどくさ」
ああああ!
イライラする!!
こいつと話してると、頭に血が上って、集中力が乱れるわ!!!
落ち着きなさい、私。
こういう時は、深呼吸よ。
吸って……
吐いて……
吸って……
吐いて……
よし、落ち着いたわ。さすが私。優秀な女。
平静に戻った私は、軽く息を吐き、言う。
「で、何の用なの? 手短に言いなさい」
「えぇ~、手短って言われても~、何事も説明するには手順というものがありますし~」
あああああああ!
この間延びした喋り方!!
お姉様を思い出して、イラつくううううううう!!!
せっかく落ち着いた心が、またしても乱れてしまい、その事実が、余計に私を苛立たせた。駄目よ私、このままじゃ駄目駄目……波ひとつない水面のように、心を静めるのよ……静かな気持ちで、とっとと用件を聞いて、こんな奴、追い出してしまいましょう。
534
あなたにおすすめの小説
〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。
藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。
バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。
五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。
バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。
だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
〖完結〗醜い聖女は婚約破棄され妹に婚約者を奪われました。美しさを取り戻してもいいですか?
藍川みいな
恋愛
聖女の力が強い家系、ミラー伯爵家長女として生まれたセリーナ。
セリーナは幼少の頃に魔女によって、容姿が醜くなる呪いをかけられていた。
あまりの醜さに婚約者はセリーナとの婚約を破棄し、妹ケイトリンと婚約するという…。
呪い…解いてもいいよね?
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日
佐藤 美奈
恋愛
「好きな人ができたから別れたいんだ」
「相手はフローラお姉様ですよね?」
「その通りだ」
「わかりました。今までありがとう」
公爵令嬢アメリア・ヴァレンシュタインは婚約者のクロフォード・シュヴァインシュタイガー王子に呼び出されて婚約破棄を言い渡された。アメリアは全く感情が乱されることなく婚約破棄を受け入れた。
アメリアは婚約破棄されることを分かっていた。なので動揺することはなかったが心に悔しさだけが残る。
三姉妹の次女として生まれ内気でおとなしい性格のアメリアは、気が強く図々しい性格の聖女である姉のフローラと妹のエリザベスに婚約者と幼馴染をとられてしまう。
信頼していた婚約者と幼馴染は性格に問題のある姉と妹と肉体関係を持って、アメリアに冷たい態度をとるようになる。アメリアだけが恋愛できず仲間外れにされる辛い毎日を過ごすことになった――
閲覧注意
幸せな人生を送りたいなんて贅沢は言いませんわ。ただゆっくりお昼寝くらいは自由にしたいわね
りりん
恋愛
皇帝陛下に婚約破棄された侯爵令嬢ユーリアは、その後形ばかりの側妃として召し上げられた。公務の出来ない皇妃の代わりに公務を行うだけの為に。
皇帝に愛される事もなく、話す事すらなく、寝る時間も削ってただ公務だけを熟す日々。
そしてユーリアは、たった一人執務室の中で儚くなった。
もし生まれ変われるなら、お昼寝くらいは自由に出来るものに生まれ変わりたい。そう願いながら
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる