妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ

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第7話(シャノーラ視点)

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 その時、神殿の中に、私の世話をする役目の侍女が入って来た。
 侍女はふわふわの髪の毛を揺らして、緊張感の欠片もない顔で挨拶する。

「どうも~、シャノーラ様~、今日も、退屈なお役目頑張ってますか~? ご苦労様です~」

 ちっ。なんなのよ、いったい。
 昼下がりのこの時間帯は、少しぼおっとして集中力が乱れやすいから、誰も入るなって言ってあるのに。

 はぁ……私、この侍女、嫌いなのよね。
 天然で、何考えてるか分かんないところが、どことなくお姉様に似てるから。

 だいたい、言動がおかしいのよ。

 一応、聖女の世話をする役目を与えられるくらいだから、高等な教育を受けた人材でしょうに、どういう脳みそしてたら、『退屈なお役目頑張ってますか~?』なんて言葉が出てくるのよ。

 私は不快感を隠しもせず、横目で侍女を睨み、言う。

「ちょっと、今は特に集中したい時間だから、神殿に入って来るなって、あらかじめ言っておいたでしょ」

「はい~、承知しています~、お役目、ご苦労様です~」

「『承知しています~』じゃないわよ! 承知してるなら、なんで入って来たの! だいたいねぇ、私は聖女よ? あんたより、目上の存在なのよ? そういう相手には、『ご苦労様』じゃなくて、普通、『お疲れ様』って言うのよ!」

「はあ、そうですか~、それじゃ、シャノーラ様、お疲れ様」

「『です』をつけなさい! もっと失礼な感じになったでしょうが! 『お疲れ様です』までで、1セットなのよ!」

「ええ~、面倒だなあ~」

「『です』つけるくらい、別に面倒じゃないでしょ!? あんた、敬語を何だと思ってるの!?」

「は~い……シャノーラ様、お疲れ様……です。はぁ、めんどくさ」

 ああああ!
 イライラする!!
 こいつと話してると、頭に血が上って、集中力が乱れるわ!!!

 落ち着きなさい、私。
 こういう時は、深呼吸よ。

 吸って……
 吐いて……

 吸って……
 吐いて……

 よし、落ち着いたわ。さすが私。優秀な女。

 平静に戻った私は、軽く息を吐き、言う。

「で、何の用なの? 手短に言いなさい」

「えぇ~、手短って言われても~、何事も説明するには手順というものがありますし~」

 あああああああ!
 この間延びした喋り方!!
 お姉様を思い出して、イラつくううううううう!!!

 せっかく落ち着いた心が、またしても乱れてしまい、その事実が、余計に私を苛立たせた。駄目よ私、このままじゃ駄目駄目……波ひとつない水面のように、心を静めるのよ……静かな気持ちで、とっとと用件を聞いて、こんな奴、追い出してしまいましょう。
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