妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ

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第8話(シャノーラ視点)

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「はぁ……それで結局、何の用なの? あんたの言う『手順』ってやつを踏んでいいから、早く用件を言いなさい。まったく……私が必死に結界の維持をしてるのが、わからないわけでもないでしょうに……」

「えっ? でも、結界の維持って、多少は疲れるけど、別に必死にならなきゃできないほどのことじゃないんですよね? 前の聖女様は、そう言ってましたよ~?」

 ぐっ……
 この女……
 人がムッとすることを、平然と言ってくれるわね。

 そりゃ、姉さんにとっては、『必死にならなきゃできないほどのことじゃない』でしょうよ。でも、私にとっては大変なことなのよ、この汗だくの顔を見れば、それくらい分かるでしょ? 私、こういう無神経で図々しい奴、大っ嫌い!

 あっ。
 しまった。

 さっきから心が荒れ気味ではあったが、今の怒りが最後の一押しとなり、大きく集中力が乱れ、結界が弱まってしまった……

 一度弱くなった結界を再び強固にするには、倍の集中力がいる。

 急いで、集中しないと。

 私は侍女を無視し、真剣に祈りを捧げ始めた。

 そんな私の気持ちなど知らずに、侍女はペラペラと話し続ける。

「えっと、シャノーラ様~。用件なんですけど、前の聖女様に頼まれてためずらしいお菓子が、今日、やっと手に入ったんですよ~。でも、ほら、前の聖女様、国を出ちゃったじゃないですか~。それで、このお菓子、どうすればいいかなと思って、聞きに来たんですよ~」

 やかましいわね!
 こっちは真剣に集中してるのよ!
 くだらない質問してんじゃないわよ!

 私は『どっかに行け!』と言うように侍女を睨み、祈祷を続ける。しかし、鈍い侍女には私の気持ちが伝わらず、それどころか、侍女は、ゴソゴソとお菓子の包みを開け始めた。

 そして、露になったお菓子を、ゆっくりと私の口元に差し出してくる。

 私は、叫んだ。

「い、いらないわよ、そんなもん! あんた、馬鹿じゃないの!? 祈祷中にお菓子なんて、食べられるわけないでしょ!?」

「えぇ~、でも、前の聖女様は、適当にお祈りしながら、ムシャムシャおやつを食べてましたよ~。だから、シャノーラ様も、おやつを食べたがっているのかと思って、サービスしたんですけど~……」

 おやつを食べながら、適当にお祈りしてたですって!?

 嘘でしょ!? 

 食事をすると、ぼおっとして、どうしても集中力が低下するから、私なんて、この二日間、ほんのちょっとの精進料理と水しか口にしてないのに。だいたい、おやつを貪りながらお祈りするって、聖女のふるまいとしてどうなのよ……

 い、いや、この際、『聖女のふるまい』については、どうでもいい。重要なのは、そんなふざけたお祈りの仕方で、高度な結界を維持し続けていた、お姉様の凄まじい才能だ。
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