妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ

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第9話(シャノーラ視点)

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 ……やっぱり、お姉様と私じゃ、ものが違うって言うの?

 そんな。
 そんなの、認めないわ。

 いいわよ、私だって、おやつを食べながら、結界を維持してやるわよ。

 私は顎をしゃくり、侍女に言う。

「わ、わかったわ。口までお菓子を運んでちょうだい。ただし、ゆっくりよ」

「はーい、では、どうぞ。召し上がってください~」

「ちょっ、馬鹿っ! ゆっくりって言ったでしょ! ああっ、もうっ! 唇のまわりが、ベトベトになっちゃったじゃない!」

「えぇ~、だって、シャノーラ様が動くから~、人のせいにしないでくださいよ~」

「私は少しも動いてないわよ! あんたが乱暴に……」

 あっ。
 ああああ。
 しまった……

 くだらないことで言い争いをしているうちに、完全に集中力が切れてしまい、結界が、消えてしまった。一度、ゼロになってしまった結界を、広範囲に張りなおすには、相当の時間がかかる。

 私は涙目になり、いまだにぶつくさと文句を言っている侍女を無視して、血眼で祈りをささげる。しかし、思うようにいかない。これまでの疲れのせいか、スムーズに結界が構築できないのだ。

 しばらく経った頃、神殿の入り口に、衛兵がやって来た。
 衛兵は、息も絶え絶えだ。ここまで、走って来たのだろう。
 彼はずかずかと私の元まで近づき、怒鳴った。

「聖女様! 何をしておられるのですか! 国を包んでいた結界が、消滅してしまいましたよ!」

 うううう。
 あんたに言われなくても、そんなこと、わかってるわよ!

 だから、必死に張りなおそうとしてるんでしょ!?
 集中力が乱れるから、黙っててよ!

 しかし、衛兵は黙らない。
 彼は、私の正面にまで回り込んで、思いっきり叫ぶ。

「間の悪いことに、魔物の大軍が、すぐ近くにまで迫っています! このままでは、この国はおしまいです! ふざけてないで、早く結界を張ってください! ああ、もうっ、今までこんなこと、一度もなかったのにっ!」

 魔物の大軍ですって!?
 ちょっ、それって、本格的に大ピンチじゃない!

 なんという、不運。

 どうして、私が聖女になった途端に、こんなことになるのよ!

 ……いや、たぶん、不運とはちょっと違うわね。
 魔物たちは、ずっと見てたんだ。

 お姉様の完璧な結界が消え、その代わりに、私の作る、不安定な結界が国を包むようになったから、『この様子なら、すぐに侵攻できるチャンスがやってくるかもしれない』と思い、じっと、機会をうかがってたんだわ。

 どうしよう。
 どうしよう。

 今すぐ結界を張らなきゃ、私のせいで、国が亡んじゃう!
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