9 / 16
第9話(シャノーラ視点)
しおりを挟む
……やっぱり、お姉様と私じゃ、ものが違うって言うの?
そんな。
そんなの、認めないわ。
いいわよ、私だって、おやつを食べながら、結界を維持してやるわよ。
私は顎をしゃくり、侍女に言う。
「わ、わかったわ。口までお菓子を運んでちょうだい。ただし、ゆっくりよ」
「はーい、では、どうぞ。召し上がってください~」
「ちょっ、馬鹿っ! ゆっくりって言ったでしょ! ああっ、もうっ! 唇のまわりが、ベトベトになっちゃったじゃない!」
「えぇ~、だって、シャノーラ様が動くから~、人のせいにしないでくださいよ~」
「私は少しも動いてないわよ! あんたが乱暴に……」
あっ。
ああああ。
しまった……
くだらないことで言い争いをしているうちに、完全に集中力が切れてしまい、結界が、消えてしまった。一度、ゼロになってしまった結界を、広範囲に張りなおすには、相当の時間がかかる。
私は涙目になり、いまだにぶつくさと文句を言っている侍女を無視して、血眼で祈りをささげる。しかし、思うようにいかない。これまでの疲れのせいか、スムーズに結界が構築できないのだ。
しばらく経った頃、神殿の入り口に、衛兵がやって来た。
衛兵は、息も絶え絶えだ。ここまで、走って来たのだろう。
彼はずかずかと私の元まで近づき、怒鳴った。
「聖女様! 何をしておられるのですか! 国を包んでいた結界が、消滅してしまいましたよ!」
うううう。
あんたに言われなくても、そんなこと、わかってるわよ!
だから、必死に張りなおそうとしてるんでしょ!?
集中力が乱れるから、黙っててよ!
しかし、衛兵は黙らない。
彼は、私の正面にまで回り込んで、思いっきり叫ぶ。
「間の悪いことに、魔物の大軍が、すぐ近くにまで迫っています! このままでは、この国はおしまいです! ふざけてないで、早く結界を張ってください! ああ、もうっ、今までこんなこと、一度もなかったのにっ!」
魔物の大軍ですって!?
ちょっ、それって、本格的に大ピンチじゃない!
なんという、不運。
どうして、私が聖女になった途端に、こんなことになるのよ!
……いや、たぶん、不運とはちょっと違うわね。
魔物たちは、ずっと見てたんだ。
お姉様の完璧な結界が消え、その代わりに、私の作る、不安定な結界が国を包むようになったから、『この様子なら、すぐに侵攻できるチャンスがやってくるかもしれない』と思い、じっと、機会をうかがってたんだわ。
どうしよう。
どうしよう。
今すぐ結界を張らなきゃ、私のせいで、国が亡んじゃう!
そんな。
そんなの、認めないわ。
いいわよ、私だって、おやつを食べながら、結界を維持してやるわよ。
私は顎をしゃくり、侍女に言う。
「わ、わかったわ。口までお菓子を運んでちょうだい。ただし、ゆっくりよ」
「はーい、では、どうぞ。召し上がってください~」
「ちょっ、馬鹿っ! ゆっくりって言ったでしょ! ああっ、もうっ! 唇のまわりが、ベトベトになっちゃったじゃない!」
「えぇ~、だって、シャノーラ様が動くから~、人のせいにしないでくださいよ~」
「私は少しも動いてないわよ! あんたが乱暴に……」
あっ。
ああああ。
しまった……
くだらないことで言い争いをしているうちに、完全に集中力が切れてしまい、結界が、消えてしまった。一度、ゼロになってしまった結界を、広範囲に張りなおすには、相当の時間がかかる。
私は涙目になり、いまだにぶつくさと文句を言っている侍女を無視して、血眼で祈りをささげる。しかし、思うようにいかない。これまでの疲れのせいか、スムーズに結界が構築できないのだ。
しばらく経った頃、神殿の入り口に、衛兵がやって来た。
衛兵は、息も絶え絶えだ。ここまで、走って来たのだろう。
彼はずかずかと私の元まで近づき、怒鳴った。
「聖女様! 何をしておられるのですか! 国を包んでいた結界が、消滅してしまいましたよ!」
うううう。
あんたに言われなくても、そんなこと、わかってるわよ!
だから、必死に張りなおそうとしてるんでしょ!?
集中力が乱れるから、黙っててよ!
しかし、衛兵は黙らない。
彼は、私の正面にまで回り込んで、思いっきり叫ぶ。
「間の悪いことに、魔物の大軍が、すぐ近くにまで迫っています! このままでは、この国はおしまいです! ふざけてないで、早く結界を張ってください! ああ、もうっ、今までこんなこと、一度もなかったのにっ!」
魔物の大軍ですって!?
ちょっ、それって、本格的に大ピンチじゃない!
なんという、不運。
どうして、私が聖女になった途端に、こんなことになるのよ!
……いや、たぶん、不運とはちょっと違うわね。
魔物たちは、ずっと見てたんだ。
お姉様の完璧な結界が消え、その代わりに、私の作る、不安定な結界が国を包むようになったから、『この様子なら、すぐに侵攻できるチャンスがやってくるかもしれない』と思い、じっと、機会をうかがってたんだわ。
どうしよう。
どうしよう。
今すぐ結界を張らなきゃ、私のせいで、国が亡んじゃう!
471
あなたにおすすめの小説
〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。
藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。
バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。
五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。
バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。
だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日
佐藤 美奈
恋愛
「好きな人ができたから別れたいんだ」
「相手はフローラお姉様ですよね?」
「その通りだ」
「わかりました。今までありがとう」
公爵令嬢アメリア・ヴァレンシュタインは婚約者のクロフォード・シュヴァインシュタイガー王子に呼び出されて婚約破棄を言い渡された。アメリアは全く感情が乱されることなく婚約破棄を受け入れた。
アメリアは婚約破棄されることを分かっていた。なので動揺することはなかったが心に悔しさだけが残る。
三姉妹の次女として生まれ内気でおとなしい性格のアメリアは、気が強く図々しい性格の聖女である姉のフローラと妹のエリザベスに婚約者と幼馴染をとられてしまう。
信頼していた婚約者と幼馴染は性格に問題のある姉と妹と肉体関係を持って、アメリアに冷たい態度をとるようになる。アメリアだけが恋愛できず仲間外れにされる辛い毎日を過ごすことになった――
閲覧注意
〖完結〗醜い聖女は婚約破棄され妹に婚約者を奪われました。美しさを取り戻してもいいですか?
藍川みいな
恋愛
聖女の力が強い家系、ミラー伯爵家長女として生まれたセリーナ。
セリーナは幼少の頃に魔女によって、容姿が醜くなる呪いをかけられていた。
あまりの醜さに婚約者はセリーナとの婚約を破棄し、妹ケイトリンと婚約するという…。
呪い…解いてもいいよね?
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
幸せな人生を送りたいなんて贅沢は言いませんわ。ただゆっくりお昼寝くらいは自由にしたいわね
りりん
恋愛
皇帝陛下に婚約破棄された侯爵令嬢ユーリアは、その後形ばかりの側妃として召し上げられた。公務の出来ない皇妃の代わりに公務を行うだけの為に。
皇帝に愛される事もなく、話す事すらなく、寝る時間も削ってただ公務だけを熟す日々。
そしてユーリアは、たった一人執務室の中で儚くなった。
もし生まれ変われるなら、お昼寝くらいは自由に出来るものに生まれ変わりたい。そう願いながら
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる