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第5話
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そんな、ある夜のこと。
一日の仕事をすべて終え、自室に戻ろうと思っていると、急に声をかけられた。
「ラスティーナさん、今日、もう上がりでしょ? たまには一杯どうだい?」
私は、気だるげに振り返る。
背の高い若い男が、屈託のない笑みを浮かべて、こちらを見ていた。……彼の名前は、アンディ。この宿の主人の息子で、三ヶ月前に、ふらりと旅先から戻ってくると、精力的に宿の仕事を手伝うようになり、私にもよく話しかけてくる。
ハッキリ言って私は、アンディのことが苦手だった。
彼のことが嫌い……というわけではない。どちらかと言えば、愛想の悪い私に、いつもニコニコと話しかけてくれるアンディに対しては、好感を持っている。
しかし私は、長らく続いた人間不信のせいで、仕事の事務的な会話ならともかく、日常的な気安い会話というやつが、できなくなっていた。だから、アンディに話しかけられても、冷たい返答しかすることができず、そのたびに、なんだか辛い気持ちになるので、彼のことが苦手なのだ。
……私だって、普通の女の子みたいに、同年代の男の人と、楽しくおしゃべりしたい。でも、どうしても、自分の殻を打ち破ることができない。私は今日も、アンディに対し、いつも通りの冷たい言葉を返した。
「遠慮しておきます。忙しいので」
もちろん実際は、忙しくなどない。今日の仕事は終わりだし、後は部屋の中で、眠たくなるまでぼぉっとしているだけだ。何のいろどりもない、退屈な夜。……アンディの誘いを受け、一緒にお酒でも飲めたら、どんなに気が晴れるだろう。
私は、孤独だ。
しかも、それを分かっていながら、自分を変えることが、どうしてもできない。
寂しさと惨めさで、喉の奥から、自然とため息が溢れた。
そんな私に、アンディはなおも語り掛けた。
「忙しいって……何か、仕事が残ってるのかい? 手伝おうか?」
それは、めずらしいことだった。
アンディはしつこい方ではないので、いつもなら、私が一度断ったら、すぐに『それじゃ、また今度』と言い、退散するのだが、今日は逆に、さらに一歩距離を詰めてきた。思ってもいなかった彼の反応に、私は焦り、しどろもどろになって、思わず正直に話してしまう。
「えっ、いや、その……本当は、別に、忙しくなんかない……です……」
アンディはニッコリ笑って、言う。
「だよね、今日はお客もほとんどいないし。……こんなふうに、夜、ゆっくりできることって、めずらしいでしょ? だから、飲みに行こうよ。ほら、俺たち、もう三ヶ月も一緒に働いてるのにさ、お互いのこと、全然知らないじゃない。俺、一度ラスティーナさんと、ちゃんと話がしてみたいって思ってたんだ」
一日の仕事をすべて終え、自室に戻ろうと思っていると、急に声をかけられた。
「ラスティーナさん、今日、もう上がりでしょ? たまには一杯どうだい?」
私は、気だるげに振り返る。
背の高い若い男が、屈託のない笑みを浮かべて、こちらを見ていた。……彼の名前は、アンディ。この宿の主人の息子で、三ヶ月前に、ふらりと旅先から戻ってくると、精力的に宿の仕事を手伝うようになり、私にもよく話しかけてくる。
ハッキリ言って私は、アンディのことが苦手だった。
彼のことが嫌い……というわけではない。どちらかと言えば、愛想の悪い私に、いつもニコニコと話しかけてくれるアンディに対しては、好感を持っている。
しかし私は、長らく続いた人間不信のせいで、仕事の事務的な会話ならともかく、日常的な気安い会話というやつが、できなくなっていた。だから、アンディに話しかけられても、冷たい返答しかすることができず、そのたびに、なんだか辛い気持ちになるので、彼のことが苦手なのだ。
……私だって、普通の女の子みたいに、同年代の男の人と、楽しくおしゃべりしたい。でも、どうしても、自分の殻を打ち破ることができない。私は今日も、アンディに対し、いつも通りの冷たい言葉を返した。
「遠慮しておきます。忙しいので」
もちろん実際は、忙しくなどない。今日の仕事は終わりだし、後は部屋の中で、眠たくなるまでぼぉっとしているだけだ。何のいろどりもない、退屈な夜。……アンディの誘いを受け、一緒にお酒でも飲めたら、どんなに気が晴れるだろう。
私は、孤独だ。
しかも、それを分かっていながら、自分を変えることが、どうしてもできない。
寂しさと惨めさで、喉の奥から、自然とため息が溢れた。
そんな私に、アンディはなおも語り掛けた。
「忙しいって……何か、仕事が残ってるのかい? 手伝おうか?」
それは、めずらしいことだった。
アンディはしつこい方ではないので、いつもなら、私が一度断ったら、すぐに『それじゃ、また今度』と言い、退散するのだが、今日は逆に、さらに一歩距離を詰めてきた。思ってもいなかった彼の反応に、私は焦り、しどろもどろになって、思わず正直に話してしまう。
「えっ、いや、その……本当は、別に、忙しくなんかない……です……」
アンディはニッコリ笑って、言う。
「だよね、今日はお客もほとんどいないし。……こんなふうに、夜、ゆっくりできることって、めずらしいでしょ? だから、飲みに行こうよ。ほら、俺たち、もう三ヶ月も一緒に働いてるのにさ、お互いのこと、全然知らないじゃない。俺、一度ラスティーナさんと、ちゃんと話がしてみたいって思ってたんだ」
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