「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ

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第11話

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 ……『半年以上前に国を飛び出してしまった』って、まるで、私が自分の意思で、ふらりと出奔したみたいじゃない。あなたたちが追い出したんでしょ? もう『用済み』だって言って。

 それに、『聖女自身がこの通知を読んでいた場合、ただちに帰国すること』って、何様のつもりよ。『行方をくらましていた』ですって? 誰も、行方をくらましてなんかいないわよ。魔獣が暴走して、国が大変なことになるまでは、私の行方なんて何の興味もなかったでしょうに、今更になって何を言ってるのよ。

 追い出すときも勝手なら、助けを乞う時も、勝手すぎる。
 この人たちには、私の人格に対する配慮なんて、ひとかけらもない。

 いや、恐らく、この人たちは、最初から私を人間だなんて思ってないんだ。ただの便利な『結界発生装置』としか、思ってないんだ。だから、平然と追放したり、呼び戻そうとしたり、私を『モノあつかい』するのね。

 昔、聖女の力でバグマルス王国を守っていた頃。ただの一人でも、私を『モノあつかい』せず、真摯に接してくれた人がいただろうか?

 ……一人だけ、いた。
 衛兵隊の指揮をしていた、ハーディンという老齢の隊長だ。

 彼だけは、私に親身になってくれたし、王族たちに対し、面と向かって、私の待遇を良くするように直訴もしてくれたっけ。……でも、何かと諫言をしてくるハーディンを不快に思った王族たちは、彼を国外に追放してしまったのよね。

 そして私は一人ぼっちになり、周囲には、誰も味方がいなくなった。

 ……私は一応、善良な人間のつもりである。だから、どれだけ軽んじられても、一人ぼっちだとしても、国のため、皆のためと、十年間、バグマルス王国に結界を張り続けてきた。

 その、守り続けてきた国が、致命的な危機に瀕しているという記事を見て、少しも心が痛まないわけではない。……正直、この通知欄を見るまでは、バグマルス王国を救うために、国に戻るべきかもしれない――そう思っていた。

 しかし、その気持ちが今、スゥーっと冷めていくのを感じる。

 私と同じく、通知欄を見たであろうアンディが、硬い声で問いかけてくる。

「ラスティーナ、どうするんだ? この通知欄を読む限り、きみなら、バグマルス王国を救えるみたいだけど……」

 私は、ちらりと振り返り、アンディを見た。
 そして、口を開く。

「私……私は……」

 かすかに、声が震えている。

 ……それも当然だろう。私の意思は、もう八割方決まっているが、それは、とても大きな決断であり、一度口に出してしまえば、もう後戻りはできないのだから。

 アンディは、決して急かしたりせず、固唾を飲んで、私の言葉を待っていた。
 張り詰めた沈黙が、室内の空気を硬いものにしていく。

 一秒……
 二秒……
 三秒……
 四秒……

 そして、五秒たって、私はやっと、自分の意思を言葉にした。

「私は、バグマルス王国には戻らないわ。もう二度と」
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