「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ

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第10話

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「魔獣の暴走……どうしてそんなことに……」

「暴走の理由については詳細が分かってないのか、まったく書かれてないけど、とにかくバグマルス王国は酷い有様みたいだ。写真とかは載ってないが、文章を読むだけで、事態の悲惨さが伝わってくるよ」

 私は一度、アンディと顔を見合わせ、それから記事を熟読する。
 内容は、次のようなものだった。

 ……今から三日前のこと、ウルナイトが召喚し、国のあちこちで守備につかせていた魔獣たちが、突然暴走し、人々を襲い始めたらしい。

 魔獣の戦闘能力は、かつてウルナイト自身が自慢げに語った通り、とてつもないものであり、あっという間にバグマルス王国は地獄と化した。町は火の海となり、王宮は崩れ、もはや、かつての栄華は見る影もない……とのことだ。

 私のすぐ背後で記事を見ていたアンディが、小さくため息を吐いて言う。

「やっぱりね。いつだったかの新聞に、『バグマルス王国に、史上初の魔獣の軍隊が完成した』って記事が載ってたけどさ。いつか、こんなことになるんじゃないかって思ってたよ。……だって、魔獣って魔物よりも強いんだろ? そんな危険な連中を、いつまでも自由に操ることなんて、できるはずがないじゃないか」

「そうね……」

 私はもう一度、記事を見る。
 そして、いつか見た魔獣の姿を、思い出していた。

 狼によく似た、どこか神々しさすら感じる、巨大な銀色の獣――

 召喚主であるウルナイトの命令には素直に従っていたが、ひとたびコントロールを失い、あの巨体で大暴れされては、人間の兵隊などいくらいても、太刀打ちすることはできないだろう。

 魔獣の牙で蹂躙される故郷の人々のことを思うと、自然とため息が漏れた。

 ……不思議ね。
 バグマルス王国の連中には恨みしかないのに。

 過去――特に、苦しい時に、『あんな奴ら、全員地獄に落ちればいい』と何度も思ったが、今こうして、実際に彼らが地獄の苦しみを味わっていると思うと、なんとなく複雑な気分だ。きっと、私自身の人生が今は順調であり、幸せだから、あんまり『それ見たことか、ざまあみろ』というような気持ちにはならないのね。

 ……おや?

 記事の最後に、通知欄がある。
 通知欄とは、新聞社にお金を払って、広告や人探しの文章を載せる欄だ。

 そこには、太文字でこう書かれていた。

『バグマルス王家は、半年以上前に国を飛び出してしまった聖女を探している。彼女なら、強力な結界を張り、魔獣を追い出すことができる。聖女の所在を知る者がいたら、すぐに連絡してほしい。もしも、聖女自身がこの通知を読んでいた場合、ただちに帰国すること。すぐに戻れば、行方をくらましていたことについては、不問とする』

 私は、思わず口を半開きにして、固まってしまった。

 呆れかえっているのだ。
 バグマルス王家の物言いに。
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