「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ

文字の大きさ
11 / 19

第11話

しおりを挟む
 ……『半年以上前に国を飛び出してしまった』って、まるで、私が自分の意思で、ふらりと出奔したみたいじゃない。あなたたちが追い出したんでしょ? もう『用済み』だって言って。

 それに、『聖女自身がこの通知を読んでいた場合、ただちに帰国すること』って、何様のつもりよ。『行方をくらましていた』ですって? 誰も、行方をくらましてなんかいないわよ。魔獣が暴走して、国が大変なことになるまでは、私の行方なんて何の興味もなかったでしょうに、今更になって何を言ってるのよ。

 追い出すときも勝手なら、助けを乞う時も、勝手すぎる。
 この人たちには、私の人格に対する配慮なんて、ひとかけらもない。

 いや、恐らく、この人たちは、最初から私を人間だなんて思ってないんだ。ただの便利な『結界発生装置』としか、思ってないんだ。だから、平然と追放したり、呼び戻そうとしたり、私を『モノあつかい』するのね。

 昔、聖女の力でバグマルス王国を守っていた頃。ただの一人でも、私を『モノあつかい』せず、真摯に接してくれた人がいただろうか?

 ……一人だけ、いた。
 衛兵隊の指揮をしていた、ハーディンという老齢の隊長だ。

 彼だけは、私に親身になってくれたし、王族たちに対し、面と向かって、私の待遇を良くするように直訴もしてくれたっけ。……でも、何かと諫言をしてくるハーディンを不快に思った王族たちは、彼を国外に追放してしまったのよね。

 そして私は一人ぼっちになり、周囲には、誰も味方がいなくなった。

 ……私は一応、善良な人間のつもりである。だから、どれだけ軽んじられても、一人ぼっちだとしても、国のため、皆のためと、十年間、バグマルス王国に結界を張り続けてきた。

 その、守り続けてきた国が、致命的な危機に瀕しているという記事を見て、少しも心が痛まないわけではない。……正直、この通知欄を見るまでは、バグマルス王国を救うために、国に戻るべきかもしれない――そう思っていた。

 しかし、その気持ちが今、スゥーっと冷めていくのを感じる。

 私と同じく、通知欄を見たであろうアンディが、硬い声で問いかけてくる。

「ラスティーナ、どうするんだ? この通知欄を読む限り、きみなら、バグマルス王国を救えるみたいだけど……」

 私は、ちらりと振り返り、アンディを見た。
 そして、口を開く。

「私……私は……」

 かすかに、声が震えている。

 ……それも当然だろう。私の意思は、もう八割方決まっているが、それは、とても大きな決断であり、一度口に出してしまえば、もう後戻りはできないのだから。

 アンディは、決して急かしたりせず、固唾を飲んで、私の言葉を待っていた。
 張り詰めた沈黙が、室内の空気を硬いものにしていく。

 一秒……
 二秒……
 三秒……
 四秒……

 そして、五秒たって、私はやっと、自分の意思を言葉にした。

「私は、バグマルス王国には戻らないわ。もう二度と」
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした

きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。 顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。 しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——

義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください

Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象 ・我儘 ・自己中心 ・人のものを盗る ・楽観的 ・・・・だったはず。 気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。 義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。 *大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。 この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。 4/22 完結予定 〜attention〜 *誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい *話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。

キョウキョウ
恋愛
ヴァーレンティア子爵家の令嬢エリアナは、一般人の半分以下という致命的な魔力不足に悩んでいた。伯爵家の跡取りである婚約者ヴィクターからは日々厳しく責められ、自分の価値を見出せずにいた。 そんな彼女が、厳しい指導を乗り越えて伝説の「古代魔法」の習得に成功した。100年以上前から使い手が現れていない、全ての魔法の根源とされる究極の力。喜び勇んで婚約者に報告しようとしたその瞬間―― 「君との婚約を破棄することが決まった」 皮肉にも、人生最高の瞬間が人生最悪の瞬間と重なってしまう。さらに実家からは除籍処分を言い渡され、身一つで屋敷から追い出される。すべてを失ったエリアナ。 だけど、彼女には頼れる師匠がいた。世界最高峰の魔法使いソリウスと共に旅立つことにしたエリアナは、古代魔法の力で次々と困難を解決し、やがて大きな名声を獲得していく。 一方、エリアナを捨てた元婚約者ヴィクターと実家は、不運が重なる厳しい現実に直面する。エリアナの大活躍を知った時には、すべてが手遅れだった。 真の実力と愛を手に入れたエリアナは、もう振り返る理由はない。 これは、自分の価値を理解してくれない者たちを結果的に見返し、厳しい時期に寄り添ってくれた人と幸せを掴む物語。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

処理中です...