夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ

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第34話

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「そりゃいい。今から、あたしをその名士のところに連れていってくれ。たぶん、その名士は村人たちを守るために、泣く泣く山賊の言いなりになっているんだろう。だから、あたしが直接話をつけてやる。山賊どもは皆殺しにするから、もう何の心配もいらないってね」

 私はヘザーを真似るように腕を組み、言葉を返す。

「あなたの実力を侮るわけじゃないけどさ。見知らぬ若い女性にそう言われても、簡単には納得してもらえない気がするけどね」

「いや、恐らくすんなり話は通ると思うよ。あたしはこれでも、そこそこ有名な賞金稼ぎなんだよ。冒険者ギルドのマスターや、あんたたちには名を知られていなかったから、こう言っても説得力がないかもしれないが」

「へぇ。まあ、初めて会った時からただ者じゃないとは思ってたわ」

「ひとつの村を取りまとめるほどの名士は見聞が広い。名のある賞金稼ぎのことも多少は知っているはずだ。だから、あたしが名前を出せば信頼してくれるだろう」

 その意見に、シエルが賛同する。

「そうですね。もしかしたら、山賊退治の依頼も、あの人がコッソリと出したものなのかもしれません。僕とソフィア様だけでは、山賊たちを倒すことは不可能だと判断し、先程は『この村には山賊なんていない』と言ったのでしょう。ソフィア様の強さは、見た目ではわかりませんから」

「しかも、今は怪我人だものね。でも、メイラさんの治療のおかげでほとんど痛みもなくなったかな。手首以外の包帯は、そろそろ取っちゃおうかしら。このままじゃ剣も握れないからね」

 かくして私たちは、ついさっき出てきたばかりのカールのお父さんの豪邸に逆戻りする。お手伝いさんにもう一度話がある旨を伝えると、カールのお父さんは面倒くさそうな顔ひとつせず、相変わらずの快活さで玄関まで出てきてくれた。

「やあ、どうなさいました? 何か忘れものでも?」

 その時、背筋にぞわりと緊張が走る。
 隣にいたヘザーの雰囲気が、一瞬で変わったからだ。

 少し口調は荒っぽいが、基本的には親しみやすいヘザー。その親しみやすさが消え去り、氷のように冷たい瞳でカールのお父さんを見ている。口には、冷笑が浮かんでいた。

 ヘザーの異様な雰囲気を、カールのお父さんも察知し、朗らかだった顔を引き締め、ヘザーではなく私に問いかけてくる。

「あの、失礼ですがそちらの方は……?」

 私が答える前に、ヘザーが口を開いた。

「毒蛇。ずいぶんとお行儀のいい口をきくじゃないか。のんびりした村暮らしで、毒が抜けたのかい?」

 カールのお父さんの顔色が、目に見えて青くなる。不安そうなお手伝いさんに「大丈夫だから、きみは下がっていなさい」と言いつけ、改めてヘザーと対峙する。

「お前、何者だ」
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