夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ

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第33話

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 私は少しだけ赤くなったが、コホンと咳払いをして話の流れを変える。

「山賊なんて、どこにもいないわよ。この村の名士にまで話を聞いたんだから、間違いないわ。たちの悪いイタズラね。ギルドに報告して、イタズラの犯人をとっちめてもらわなきゃ」

 だが、それに対するヘザーの言葉は、予想外のものだった。

「イタズラじゃないよ」

「えっ?」

「証拠を掴んだわけじゃないが、間違いない。この村の連中は、そろって何かを隠している。山賊にきつく言いつけられてるのかもね。旅人が来たら、平和な村を装えってさ」

「なんでそんなことがわかるの?」

「知りたいか?」

「ええ」

「勘だよ」

「えぇ……」

「と言っても、ただの当てずっぽうの勘じゃない。経験からくる勘だ。これでも色々と旅して回ってるんでね。多くの村を知ってる。この村はね、どうにも嘘くさいんだよ」

「嘘くさい?」

 そこでヘザーは軽く振り返り、村を一望するようにして言う。

「あんたたちも違和感を覚えなかったか? この村は確かにのどかで平和だ。だがその平和、なんだか作り物臭く感じなかったか? 村人たちの親切さも、変に波風を立てないようにして、あたしらにとっとと帰ってもらおうとしてるみたいに感じなかったか?」

 顎に包帯だらけの手をやって、少しだけ考える私。

「……まあ、ちょっと変だとは思ったかな。これだけ村人がいれば、一人か二人は、よそ者を毛嫌いしてる人がいそうなものなのに、皆が皆、ニコニコ親切だったからね」

「その通り。あんたたちみたいに愛想のいい二人ならともかく、あたしがジロッと睨んでもニコニコしてるんだぜ。この村はクロだよ。しかも、徹底的にしつけられていて、簡単にボロを出さない。ちょいと痛めつければ吐くだろうが、罪のない村人にそんなことはできない。参ったよ」

「良かった」

「何が?」

「あなたが罪のない村人を平然と痛めつけるような人じゃなくて。ほら、あなたって言動がちょっと荒っぽいじゃない? だから、いざとなったら手段を選ばない性格かもって、ちょっと思ってたのよね」

「前にも言ったろ。あたしは善人のつもりだって。悪党には容赦しないが、そうでない人を傷つける気はないよ。とはいえ、このままじゃ八方ふさがりだ。どうしようかね」

 ヘザーは腕を組んで瞳を閉じ、しばし思案する。
 それから、何かを思いついたというように、パッと目を開いた。

「そうだ。あんたたち、この村の名士に話を聞いたって言ってたね」

「ええ、ちょっとご縁があって、手厚くもてなしてもらったわ」

「話の通じそうな人だったか?」

 その問いには、シエルが答える。

「とても温和で、気さくな人でしたよ。この町には年配の村長さんがいないようですから、きっとあの人が村の皆さんを取りまとめているんでしょうね」
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